職業
モニカが右手の指を鳴らすと、空間に光のモニターのような物が現れる。
「それでは、このフリーダムクエストについて説明します。この世界は"7人の神"によって守られている、とても神秘的で沢山の命に恵まれた世界です......。」
モニターには透き通った綺麗な湖や動物達の様子、大自然や栄えた城下町などが表示されている。
「この世界に生きる者達...大輔にわかりやすく伝えるならNPCと呼ばれる彼らは、実際に心を宿し現実世界の人間と同じ様に喜怒哀楽の感情を持ちます...また言葉によってコミュニケーションを交わしながら生活をしています。」
「俺がモニカと話している様に、NPCとも会話ができるのか。」
「はい。」
今まで俺がやってきたRPGゲームのNPCは台詞が決められていて、同じ文章をただひたすら読み上げるだけの存在だった。
現実世界の人間と同じ様に感情を持つという事は、状況によっては争ったり場合によっては"NPCと恋に落ちる"なんて事もあるかもしれない。
「このゲームをクリアするにはNPC達から情報を得て、この広大な世界を旅する必要があります......その為に、まずは自分自身の職業を知る必要があります。」
「職業って言うと、勇者とか魔法使いとか?」
「一般的にはそうですね、ただこのゲームの職業は少し違ってプレイヤー自身の性格や身体能力、知能などからコンピュータが自動的に職業を割り当てます。」
つまり、自分が好きな職業になれる訳ではなくプレイヤーによって1番最適な職業が選ばれるのか。
魔法使いや空を飛べる職業になりたかったけど......仕方ないか。
「今から大輔がこの世界で生きていく為の職業を覚醒させます、心の準備はよろしいですか?」
「なんか緊張するな。」
「すぐ終わりますよ...。」
そう言うとモニカは俺の元へ歩いてきて、俺の額に掌を乗せる。
「7神が1人モニカが告げる...心と身体、全てを解き放ち今ここに誓いの契約を。」
俺はただモニカの言葉を聞き、何を考えるでもなくゆっくりと目を閉じその時を待った。
「......これは。」
「どうかした?」
「大輔...。」
モニカは俺の顔を見て一筋の涙を流していた。
「えっと、大丈夫?」
「ええ...決まりましたよ、大輔の職業が。」
モニカが涙を拭うと、真剣な表情で俺の顔を再び見る。
「貴方の職業は"龍王"...最強クラスの職業です。」
「...はっ?...え、龍王!?」
龍王って、そのままの意味だと龍の王...だよな。
もしかして龍に変身できるとかそういう感じか?
「はい、私も驚いています...。」
「えっと...それで龍王ってのはどういう職業なの?」
「龍王は基本属性の光闇炎風雷土水のスキルを扱える他、パーティーを組んでいる仲間と同じ職業に3分間だけ変身する事が可能です。」
うわー強そう...。
てか他の奴らと合流した時に、龍王って言わないといけないのか俺...。
あと属性の言い方、もっと他にあったのでは......。
「ちなみに今、その能力は使える様になったの?」
「はい、試してみますか?」
「是非。」
するとモニカが俺の元に近寄り抱きつく、そして俺達は先程の何もない空間へ一瞬でワープする。
「ここならどれだけスキルを発動しても問題ありません。」
「あ...ああ、ありがとう...それでどうやってスキルを使ったら良い?」
ドキっとした、モニカって普通に可愛いし...胸の感触が...。
「感覚で問題ありません、目の前に敵がいると想像して攻撃してみてください。」
感覚って...じゃあとりあえず右手を上に上げてそのまま振り下ろしてみるか。
そしたら火の玉でも出るだろうか...。
俺は右手を上に上げて振り下ろしながら呟いた。
「ファイヤー...」
すると右手から激しい燃焼音がボオッと鳴り、炎の玉が打ち出された。
「まじか...出た。」
「素晴らしいです、もっと強力なスキルをイメージすればより強い技が出ますよ。」
もっと強くか...。
なら火の玉の次は、雷の矢でも出してみるか。
「先程みたいにスキルは名前を付けて叫ぶと、よりイメージに近い物が発動されます。」
「あー、さっきのファイヤー...みたいな?」
「はいそうです。」
つまり強そうなスキル名を色々考えないといけない訳か...まあ中々楽しめそうだ。
うーん......よし決めた。
「スパークアロー∞(インフィニティ)!」
そう叫んで右手を突き出した瞬間、まるで流星の如く無数の矢が甲高い音をバチバチと響かせながら前方に向かって発射される。
「やばっ!?...えてかこれ止まんないんだけど、どうやって止めるの?」
「例えばポーズを解除して決め台詞なんてどうでしょうか?」
「え、それやらなきゃだめ?」
「例えばの話です。」
んー、あっ...なら最後に追撃でフィニッシュにしよう。
そう言いながら俺は弓を引く動作を真似して身体を動かす、すると俺の右手には雷の矢が現れ左手には弓が現れた。
「ライトニングシュート!」
そう言いながら矢を放つと、とてつもない光と雷鳴を響かせながら俺が放った矢は回転しながら遥か遠くに消えて行った。
「......強すぎない?」
「はい...その気になれば隕石だって落とせますよ。」
「うん、チェンジで。」
「...はい?」
モニカは俺のその言葉を聞いて、首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
いやだってこれただのチートじゃん。