さらば現実世界
ある程度プレイすると、恒例のおふざけモードに入る。
「おっ、おっやんのか?」
がっちくんのキャラクターが右手に閃光弾を持ち、矢藤のキャラ目がけて投擲する。
そして緩やかに弧を描いて地面に落ちた瞬間、閃光弾が眩い光を放ち矢藤のキャラに直撃する。
「うわ閃光弾はヤバイんご。」
「まだやんのか?やんのか?」
再びがっちくんが閃光弾を矢藤に投げ、矢藤の画面が白く光る。
「ちょおま、2発はダメだろ!」
現在は1対1のタイマンを他4人が同じフィールドで観戦している状態で、今行っているのは最下位決定戦だ。
「うわっ、ひでーわ。。。」
「矢藤...最下位おめでとう!」
まあ予想通り矢藤が最下位か、安定だな。
3位寛人、4位山塚、5位がっちくん、6位矢藤。
さて...。
「じゃー決勝やるかー。」
「武器どーする?」
「アサルトライフルの"閃光弾有り"で。」
「おけ。」
ルールは先に相手を5回倒した方の勝ち。
てことは5-2か5-3くらいで負けるな...。
「みんな閃光弾持ってこーぜ!」
「お?祝砲あげちゃう?」
「いいねー!」
「ありがとう雑魚共。」
「おっ聞いたか?、みんな涼介に閃光弾投げていいぞ。」
「は?ふざけんな!」
「ハンデくれハンデ。」
「マッキー相手にハンデはやべーだろ。」
「はいスタート。」
「お前ら投げんなよ、絶対投げんなよ!」
こうして俺と涼介のタイマンが始まった。
序盤はみんな大人しく観戦していたが、4-2と涼介がマッチポイントになった時俺は叫んだ。
「やっぱつえー、キツいか。」
「マッキー諦めんなまだ行けるぞ。」
「よし、みんな!...俺に力を貸してくれ!」
「任せろ、よし閃光弾隊行くぞみんな!」
「行くか!」
「お前ら卑怯だぞ!」
「涼介どこや。」
「赤屋根の裏!」
「よし閃光弾投げろみんな!」
俺はそう言うと赤い屋根の家の横に閃光弾を投げる、そして周りの4人が一斉に閃光弾を涼介に向けて投げる。
「ふざけんな!」
赤い屋根の家から山なりに俺の方へ閃光弾が飛んでくるのがチラッと確認できた、飛んできた方向から察するにおそらく涼介が投げた物で着地と同時に俺のキャラに当たり画面がホワイトアウトする。
「うわ、すまん!」
矢藤が投げた閃光弾は壁で跳ね返り4人の足元で光を放つ。
「下手くそか!」
そして矢藤以外の4人が投げた閃光弾は流石の涼介も回避する事はできず、赤い屋根の建物一体を光が包み込む。
「まぶいまぶい.....ん?」
「あれ止まった?」
「マジ?」
俺の画面は閃光弾によって真っ白になった状態で止まっている、おそらく他の5人も同じだろう。
「エラー落ちか?」
「閃光弾ゲーム壊したか?」
「まじかよヤバすぎ。」
「まあ、流石に今日はここまでかな。」
「もう3時前か。」
「俺明日仕事だしなー。」
「土日仕事は辛いな。」
山塚は最近、土日に仕事に入る事が多いらしい。
「はーマジ"現実逃避したい"」
「俺も"2次元の女の子とイチャイチャしたいんご"」
「"3次元より2次元だよな"」
「俺は"RPGの世界入りてえ"」
「おっ"魔法とか使ってみたいな"」
5人はそんな事を言いながら楽しく会話をしている。
まあ、1番現実逃避したいのは俺なんだけどな。
仕事もしてないし彼女もいない、ただ毎日部屋でゲームをするだけで生きてる意味ないしな。
「マッキーはいいよな金あるし。」
「いやー仕事してた方がいいよ、まじ毎日暇だし。」
「ウラヤマ。」
「うぜー!」
「やる事ないし"旅にでも出るか"......ん?」
その時は軽い気持ちで話していた、本当は旅に出るつもりなどない。
ただ周りを和ませようと吐いた一言、俺がその一言を吐かなければ俺達はずっとゲームをしながら笑いあって生きて行けたかもしれない。
そう......この時、俺達6人は画面から放たれた光によって現実世界から姿を消した。