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DA:-SEIN ~御伽奇譚~ 「魔石」  作者: 藤乃宮 雅之
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~BL疑惑~


 午後9時前。店内の後片付けと清掃を終えた頼光が鳥居前公園まで戻って来た。

 菖蒲祭の時に突っ込んで来た車が薙ぎ倒した樹々の跡が、生々しく街灯に浮かび上がっている。

 しばらくその前に足を止めて、ふうとため息をひとつつくと、頼光は再び歩みを始めた。

 神社の大鳥居にさしかかる時に携帯電話から着信音が響いた。

「ん? 香澄からか?」

 学生カバンから携帯電話を引っ張り出すと、ぱかっとそれを開いた。

「もしもし?」

『もしもし、ライコウ。もう家?』

「やあ、香澄。今、大鳥居のトコ。そうそう、今日はお店に美幸ちゃん来てくれたんだ。彼女の後輩の紗彩ちゃんと一緒に。」

『そうなんだ。楽しかった?』

「喜んでくれてたみたいだったよ。香澄は紗彩ちゃんにはまだ会った事無かったよな。」

『うん。どんな子?』

「碧山中3年生で、ツインテールで、ちょっと、いや、だいぶ天然な子。おしゃべり好きで、美幸ちゃんと涼子さんにべったり懐いてる。面白い子だよ。」

『へ~。機会があれば会ってみたいな。そうだ、麗奈さんとお母さんとのお茶会、どうだった?』

「ああ。久しぶりに話に花が咲いたよ。シャーロットさんの日本語も相変わらずだったし。」

『あはは。やっぱりあんな感じだったんだ?』

 香澄は初めて聞いた風を装った。

「大きな声で熱弁するから喫茶店のお客さん、困った感じみたいだったな。そう言えば、僕の居た席の隣のBOX席に沢井さんが居てね。」

『え、は、はい。そうなんだ?』

「八嶋さんと話してたよ。後でその席で例の石を返してたって教えてくれた。」

『ああ、良かったじゃん。ちゃんと返すことが出来て。加奈ちゃんも肩の荷が下りたって喜んでるよ。・・・きっと。』

「うん。あと二人お友達が座っていたみたいなんだけど、ちょっと挨拶しそびれちゃったな。沢井さんの学校の子達だったのかな?」

『うえっ? たっ多分、きっとそうだよっ。ほら、西崎の美波ちゃんとか、凛音ちゃんとか。』

「あの子達とは雰囲気だいぶ違った感じだったけど。また、加奈ちゃん連絡取った時、僕が挨拶できなくてごめんって伝えといて。」

『う、うん。まっかせなさい。』

「今日は香澄、何か威勢が良いな。あ、そうだ、沢井さんに僕のメアド伝えてあげて。」

『うん? なに? 私にナンパの手伝いをしろって?』

「そうじゃ無いよ。僕のガラケーじゃ、LINE出来ないだろ? 禎茂さんがらみでの連絡付けたい時に、通話だけじゃ不便だから。」

『ふ~ん。ま、そういうことにしときましょうか。いいよ、伝えとく。』

「サンキュ。」

『ライコウ、加奈ちゃんって好みの内に入る?』

「なんだよ。いきなりだな。まあ、カッコイイ感じで好感持てるよ。だけど、なんかこう、繊細なトコを強気で隠そうとしてる所があるみたいだね。ツンデレとは別の方向性で。」

『え? そんなこと判るの?』

「うん。母子家庭だって事言ってたところにカマかけてみたら、そんな感じの返答があったから・・・そういうの、片親の僕も良く解るよ。」

『そうなんだ・・・あ、ライコウ、それでね。話は結構変わるんだけど?』

「うん。」

『カッコイイ女の子とカッコイイ男の人、どっちが萌える?』

「変わったね。」

『ま、いいじゃん。ちょっとさ、気になっちゃって。』

「今日、紗彩ちゃんと美幸ちゃんにもそんなネタ振られたよ。何? 流行(はや)ってんの?」

『一部では熱狂的な人は居るけど・・・えっとさ、ライコウはどうよ?』

「どうよって・・・何か腑に落ちないな。何か企んでる?」

『いや。企むとかそんなんじゃないのよ。これは、その、質問。』

「・・・よし、香澄。もう、すっぱり核心を行こうか。何が聞きたいんだ?」

『え、えっと。その・・・ちょっと、言いにくいんだけど・・・』

「ちゃんと言ってくれたら、その後になんでも一つ香澄の質問に答えてあげよう。」

『え? なんでも?』

香澄の声の調子が変わった。

「ああ、古文の現代語訳だろうが、僕の初恋話だろうがなんでも一つ。」

『あ・・・こいばな・・・いい・・・』

「え?」

『いや、何でもないっ・・・それじゃ、いくねっ。』

「おう。」

 ちょっと深呼吸する音が聞こえた。

『ライコウって・・・男の人とシたっ?』

「・・・・・・・はあ?」

『も、もう、どこで聞いたのとかは聞かないでっ。とにかくライコウがそういうことに興味があって、そういう行為に及んで、また別の人ともそういうコトしようとか約束してないっ?』

 もうやけくそで叫ぶ香澄の声が響いた。

「・・・あの、香澄さん・・・何、おっしゃってるの?」

『なんで敬語っ? 私だってこんな事口にするのは恥ずかしいんだからっ。ライコウは、そっち側のひとなのっ?』

「・・・」

『ここで黙るなぁっ、置いてけぼり感がすごいんだから、何か言ってよっ。』

「香澄、大丈夫か? 熱があるのか?」

『体は健康体だよっ。』

 声に悲壮感が混じるので頼光はわしゃわしゃと頭を掻くと口を開いた。

「・・・どこで聞いたのかは知らないけど、全くの誤解。LGBTの人達をバカにする訳じゃないけど、僕はノーマルだよ。ちゃんと女の子が恋愛対象だし、好きになった子も、これからそうなる子も女の子だよ。だから安心しな・・・て、なんでこんなこと真剣に言わなきゃならないんだ?」

『・・・ホント?』

「ここで嘘ついて僕に何の得がある?」

 少し間が空いた。

『・・・はああああああああ。良かったぁ、あれ聞き間違い的なヤツだったんだぁ・・・』

 すっごい安堵の溜息と共に、香澄の声が聞こえた。

「解決した?」

『うん、すっごいすっきりした。美幸ちゃんにも誤解だった教えてあげなきゃ。で、例の件なんだけど?』

 いつもの声調子になった香澄がうきうきと話す。

「うん?」

『ほら、なんでも答えてくれるって言う。』

「ああ、一つ。な。」

『絶対答えてくれる?』

「モノによってはパス権を行使する。」

『認めませんっ。』

「分かったよ。で、聞きたいことは何?」

『えっと、ね・・・・』

 考え込む香澄の小さな唸り声を聞きながら、頼光は大鳥居の石段を上りきり、朱の鳥居の前を横切って自宅の玄関の引き戸を開けた。

 出迎えてくれたミケコの頭を撫でて、ペット皿2つにドライフードとレトルトパウチ「いなばCHIAO」を盛る。

はくはくとゴキゲンで食事をするミケコの背中を撫でてから自室への階段を上る。

自室の明かりを点けて、学生カバンを机の横に立て掛け、学校の制服を脱いで壁にしつらえたハンガーラックに掛ける。

「あの、香澄。」

『・・・う、うん、何?』

「まだかかりそう?」

『あ、ゴメン。一つだからどれにしようかと。』

要件が決まった連絡をくれと伝えた頼光は一度通話を切って風呂場へと向かった。



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