~捜査の進展と保昌の策略~
「もしもし、赤磐警部? 今、大丈夫ですか?」
車内に戻った保昌は、メモ帳片手にハンズ・フリー機能で電話をかけた。
『ああ、例の学生さんとは話がついたか?』
「はい。収穫がありました。被害者の3人とつるんでいたもう一人が判りました。『青山浩平』という二年生の学生です。彼らの『ユ~チューバー』活動の撮影を担当している人物だそうです。後で、LINEで彼の住所を送ります。」
『おう、ご苦労だった。こちらもいろいろ判ったことがある。まず連中の投稿動画のハンドルネームは「ハンサム団」。体を張ったチャレンジ物らしく、結構バカな事をやってる。「コーラのペットボトルの飲み口に、バニラアイスを小さじ一杯塗り付けるとコーラが飲めなくなる。」を検証する、とか。』
「今の若者が好きそうなヤツですね。」
『最後の投稿が4月19日。どこかの廃トンネルを肝試ししている動画だ。演出や合成かも知れんが結構な衝撃映像になっている。ここはお前さんの得意分野だから見て感想をくれ。』
「さっき、八嶋結菜という学生から聞いた話だと、その撮影の後、次回作の下見で例のダイヤを見つけたそうです。」
『そうか。動画の最後に次回予告としてトンネル向こうの廃屋を探検するとか言っていた。実際にその映像があるのなら、「不法侵入」でしょっぴいて話を聞く所なんだが。それと、被害者3人の銀行口座を調べて面白い事が判った。』
「と、言いますと?」
『4月21日~25日にかけて3人に数百万円の振り込みがされている。特に赤枝純一には数度に渡って、合計1958万円の入金が記録されている。』
「それはすごい。出処は割れたんですか?」
『ああ、すべて古物買取商の物だったよ。』
「つまり、入手したダイヤを売り払った金という訳ですね。」
『そうだろう、過去の入金履歴を見ると、数千円ぐらいの入金が定期的にある。これが動画の広告収入と言うヤツだろ?』
「仲間4人で山分けしているなら、まあまあ稼げている連中ですね。今日報告した『青山浩平』の口座も同様に巨額の入金があるかも知れないですね。」
『確実にそうだろうな。じゃ、住所の転送を頼む。そいつの口座や身辺を探らせてみる。』
「はい。分かりました。」
LINEで青山浩平の住所を送った後、保昌は目を閉じてふうっと息を吐いた。
「ナナツ。頼まれてくれるかい?」
『なんだ? 保昌。』
野太い声が車内に響いた。
「アラビアン・ナイトでジンが願い事を叶えてくれるだろ? アレ、出来るかい?」
『物質的なヤツならある程度はな。だが、現在の貨幣は妙に管理がしっかりしているから、「ハガル」で居た頃みたいに豪商の蔵から持って来るとバレてしまうぞ。』
「いや、窃盗してくれと言うんじゃない。青いガラスでこんな宝石のニセモノは作れるかい?」
保昌はスマートフォンの画面にトリオンカットの青い宝石を映し出した。
『ふむ。ガラスにこだわらなければ知り合いの「ノーム (地の精霊)」に頼んで手配できそうだ。』
「上手く行けば、どれくらいの期日で出来る?」
『連中は仕事が早い、というか時間枠に捕らわれていないからな。その気になってくれれば、我らの一瞬の感覚でやってくれるさ。ただ、対価が必要だ。』
「どれくらいかかる?」
『大豆をボウル2杯分ぐらいは要求されるな。』
「そうか。ウチの倉庫にある『追儺』用の、麻袋に入った5キロ入りの国産大豆を持って行って交渉してみてくれ。1.5センチ大で、このトリオンカットの形が嬉しいんだが。」
『ああ、ちょっと画像を写し取らせてもらうぞ。』
スマートフォンの画面の上の空間がぼうっと光った。
「交渉は出来そうかい?」
『ああ、任せろ。日本国産大豆5キロも積めば、快く受けてくれるだろうよ。』
その声が響くと、車がグラッと揺れ、辺りに砂塵が舞い上がった。
「さて、赤磐警部から聞いた『ハンサム団』とやらの動画を見てみようか。」
保昌はスマートフォンの画面をタップした。




