1日目〜春が来るまでの冬の時期に、植物はしっかりと準備をするんだ。
△△荘は冬はスキー場となるであろうゲレンデの隣に、平行に建っている。ゲレンデの低い方に正式な入口とフロントがあって、その奥には階段がありこれを上ったさらに奥が一階部分となる。一階は一番奥に食堂があり、その手前の右手、つまりゲレンデ側には小部屋が一つある。小部屋の反対側には階段があり、それは地下一階から屋根裏である四階までを繋いでいる唯一の階段である。その階段の手前には自動販売機や読書スペース、さらにはコンピューターが置いてある休息スペースとなっている。
二階部分は、食堂の上部を除いて部屋がある。そして、フロントとは反対側の部分に渡り廊下があり、ここを通ると音楽ホールになる。三階部分は部屋のみがあり、四階の屋根裏部屋は大部屋が一つある。地下一階は、洗濯機と乾燥機、それに浴場が男性用と女性用、あと大部屋が一つある。この階はフロントよりも少し低い位置にある。
音楽ホールは一階部分と同じ高さにあり、広さは教室二個分と言った所だろう。グランドピアノが一つ、パイプ椅子が沢山置いてある。その音楽ホールには、食堂に向いた面のゲレンデとは離れた部分に出入口がある。
その出入口を出てゲレンデの方へ向かい渡り廊下の下をくぐると、草の生えた小さな庭があり、ゲレンデに向かって右手、つまり食堂からゲレンデを見たときに見える部分に、白い机が二つ、椅子が八つ置いてある。正面と左手には二メートル程度の坂があり、正面の坂を登った所にある幅一メートル五十センチほどの小道は、ゲレンデと同じ向きに左上がりの傾斜がつけてある。その坂を登ると、そこには教室六個分程度の草花の生えた大きめの広場があり、反対に坂を下りると、そこには教室二個分程度の小さめの広場がある。
その広場とは△△荘を挟んで反対側に駐車場があり、そこにバスが二台停まっていた。他にも乗用車が三台停まっていた。
そのバスから、☆☆高校の吹奏楽部員が続々と降りてきた。
色とりどりの大きなカバンを持ち、フロントには行かずに音楽ホールに入っていく。
そして、続けてトラックから楽器を中に運び込んでいく。
二十分ほどで作業を終え、ぽつぽつと何人かが楽器を持って外に出てきた。
「ふっぴゃ〜〜〜」
その声がこだまする。
彼女は、ホルンパートのパートリーダーである日高春見だ。
「先輩、煩いです」
そう春見を諌めたのは吉岡冬見。
「べっつに良いでしょー。それよりも、さっさと音出し始めちゃいなさい」
大きめの広場から小道に少し入るあたりまで一直線に、小道に対して四十五度程度の傾きをもってゲレンデの山の上の方を見るように、ホルンパート六人は座った。




