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魔王さまは涙もろい  作者: 南部
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城攻め

「Open Sesame」


 ちょっと憧れていたこの言葉、うまくいった試しはない。力で押せば大概開くので問題ないがこうなってはどう見ても悪役だ。


「敵だ!誰か来てくれ!!」


 蜂の巣をつついたように兵士たちがワラワラと飛び出してくる。銃やら弓やらで抵抗を見せるが特別目を引くような手練れはいない。俺がひとりでどでかい城門をこじ開けたせいでパニックになり、連携がうまくいっておらず右往左往している。せっかくの立派な装備が台無しだ。


「ウーツクレモス」


 旦那としていいところを見せたい一心で防御魔法をかける。しかし、ミチは軽々避けているしドラ子に至っては弾が逸れていく。これも風魔法とかそう言うものだろうか? いずれにせよ必要ではなさそうだ。


「あんな豆鉄砲、妾には届かんぞ?」


 もっともなツッコミが入る。本気で戦うことがないから忘れてしまうが、二人とも控えめに言って強い。目の前の兵士たちでは傷すらつけられないだろう。


「ごめんな?」

「いや、責めておる訳ではない。気遣いはわかっておる」


「遊んでないで早く行こう?」


 今度はミチからツッコミが入る。確かに下っ端の兵士をいくら驚かせても意味がない。さっさと偉い奴らを見つけて方針を決めなければならない。それにこんな楽しくもない場所にいるのは苦痛だ。


「そうだな、玉座まで競争!」

「競争!?」

「負けない」


 嬉しそうなミチが駆け出す。速いとかそういうレベルではなく壁を走っている。どうやっているんだかわからんが楽しいならいいか。


「ならば妾は飛ぼうかのぅ……」


 ドラ子は風でふわりと浮き上がり天井スレスレを飛んでいく。言い出した俺が一番不利だったみたいだ。


 上へ向かう階段は重装歩兵が隊列を組んで道幅一杯に並んでいる。忠実に命令を守っている彼らをできるだけ傷つけずに上へ向かうには骨が折れそうだ。ジャンプして飛び越えようとしても銃を持った奴が後ろに待機しているから撃たれることは確実だ。問題はないが反射的に反撃したらあいつら死んでしまう。


「前進!」


 彼らの上官だろうか? 考えている内に階段の上から号令をかけた。ミチとドラ子への攻撃をさっさと諦めてこっちに切り替える思い切りの良さは素晴らしい。重装歩兵の皆様がファランクスの如く整然と前進してくる。ガチャガチャと甲冑が擦れる音と兵士どもの荒い息が聞こえる。あれだけの重量の甲冑だから疲れるだろう。それに足元が見えていないだろうによく階段を下りられるものだ。


「兵士諸君!できるだけ手加減するが怪我したらすまん!」


 念のため忠告するがこちらの言葉に一切耳を貸さず行進してくる。隙のない密集型、長槍を使っての前進。よく訓練されているが、銃のある時代になんとも前時代的チグハグ戦法だ。理由は簡単、彼らが前進してしまっては後ろにいる銃士隊が前衛を気にして発砲できなくなるからだ。


「まぁいいか、ブレイクブリック」


 二十名くらいの重装歩兵諸君がいきなり足場を失って阿鼻叫喚の図。これは名前の通りレンガを破壊する魔法。通常は建築の際にタガネの代わりにレンガを切るのに使われる生活魔法だ。そんな生活魔法も魔力を込めて発動してやればこんな威力になる。燃費が悪いから普通の人間じゃ真似できないだろうが、イメージを“切る”から“砕ける”に変えてやるだけで城壁だって砂になる。あまり細かくすると埋まって死にそうだったので砕石程度に留めたのが正解だった。


「それじゃ、通してもらうか」


 もがく兵士諸君をひょいと飛び越え上の階に向かう。銃士隊の皆さまは呆然とこちらをながめるだけだ。たぶん俺が二つの部隊の間に立っているから、撃ちたくても撃てないのだろう。


「見送りご苦労!」


 一声かけて走り出す。かなり差をつけられてしまったから二人はもう着いてしまっただろうか?

 城攻めしているのに緊張感が無さ過ぎた。反省せねば。

この魔王、勇者時代の緊張感はどこかに置いてきました。

ちなみに今回出てきたレンガ割りの魔法、天然石にも使えます。そのおかげで天然石でつくられた階段を破壊しました。あくまで生活魔法であることを出したかったせいでレンガと言ってます。

ついでに重装歩兵の装備は厚く作られていて40kgの設定です。

装備に銃を取り入れたので当たっても問題ない作りにした結果重くなっています。実際にはもっと薄くても跳弾するので問題ありませんが密集しての突撃をするために跳弾先の兵士が無傷で済むように改良されています。いや、改悪……?

よろしくお願いします!

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