不明船の正体
「というわけだったのさ!」
オーガスタスを床に正座させたまま説明させたが、事の顛末は恐ろしいほどくだらないものだった。というのもこの男、俺が少しだけ顔を出した人魚保護会議に居合わせ、その頃の記憶で今回のいたずらを思いついたらしい。軍艦は彼の親の遺産で乗組員は彼の集めた孤児やら志願者だったそうだ。器用なのはチラ見しただけの俺の魔力を覚えていて、瞬時にこのどうでもいいいたずらを思いついたことだ。問答無用で消し飛ばしていたらどうするつもりだったのかは想像できない。
「マリオ、仕えるべき人間は選ぶべきだぞ?」
立ち上がり、刈り上げた頭を掻きながらマリオは何とも言えない表情で深々と頭を下げて返事をした。
「もっともなんだが・・・拾って貰った恩もある、許してほしい」
手をあげて返事をすると安心したのか椅子へ深く腰掛け、葉巻をふかした。するといつのまにか部屋に入ってきた白い船乗り猫がマリオの腿の上に飛び乗り香箱座りをした。
「もっとフォローしてくれ!出来心だったのさ!」
まだ正座のままのオーガスタスはマリオに加勢をせがむ。まるで子供だ。言われて困ったのはそのマリオだ。一仕事終えたような顔だった彼はまた少し難しい表情を浮かべ、猫を一撫でしたあと口を開いた。
「普段は頭の回る人なんだが、自分より長生きな者を見た時に暴走するというか…」
捻りだした答えに無理があると思ったのかマリオは頭を掻く。だが、彼が言いたいことは大体わかった。
「アホなんだな。」
これ以上ない簡潔な言い回しになってしまったが、概ねあっていたようでマリオの表情は少し和らいだ。そこで立つ瀬が無くなったのはオーガスタスだ。
「この年になるとそこら辺の人より年上になっちゃってね!あなたを見た時もう運命だとすら思ったよ!」
言い訳にしても無理がある。普段真面目な人が羽目を外すと失敗するとはよく聞くが、こいつのはそういった話ではない。
「殴れば直るか?」
「これでも我々にとっては立派な親であり指揮官なんだ、手心を加えてくれないか?」
頷きかけてマリオは頭を振った。そしてコーヒーをすすりながらもう一口葉巻をふかす。ここで退出していたアレクセイがコーヒーのおかわりを持って入室した。正座のオーガスタスを無表情のまま一瞥し、慣れた手際でコーヒーを注ぎ部屋を出る。ドアが閉まった瞬間盛大に噴き出し、それを聞いたマリオは顔を逸らして笑いを堪えていた。
「所属が言えないのは本当なんだよ!だってどこにも所属してないし階級なんかも特に準備してないんだもの!ね、許してほしいね!」
この男、ロサンク王国の人魚保護を訴えていた派閥の生き残りだそうだ。国が滅んでも一途に保護へ情熱を傾けているらしい。活動は立派なのだがこのザマを見ると疑ってしまう。
「それにしてもどこから資金が出てるんだ? 人魚の保護やら軍艦の維持やら相当かかるだろう?」
「それは僕の親が残してくれたものさ!覚えていないかい?ハリス・ユースタス!ロサンク宣言を発布したエルフの貴族を!」
「・・・・んー、あっ!あいつか!!お前あいつの!」
外見が人間に一番近い種族のエルフでも人間の国で貴族になるのは珍しかった時代、神謀の将と称えられたエルフがいた。それがハリス・ユースタス、亜人の地位向上を訴えて私財をなげうった人格者。地位向上の象徴として、亜人ともされずに虐げられていた人魚の保護を実現した有言実行の男。
「父は覚えていたんだね!会談の時に僕も紹介してもらったはずなんだけどね!」
「奥さんが美人だったなーってのは覚えてるんだが、・・・その場にいたか?」
「いたのさ!あなたの目が怖くて父の後ろに隠れてね!当時僕は7歳だったから仕方ないさ!」
美形とはいえ男の膨れっ面を見せられてもこちらは面白くない。さらに見た目は二十そこそこだが中身は五百歳オーバー仲間でもある。なんとなく痛い目に合わせたい。
「マスター、そろそろ本題に移ったらどうですか? ジョセフソン君にこれ以上嫌われたくなければね」
脱線していく話にしびれを切らしたのかマリオが鋭い目つきでオーガスタスを見た。それに反応し一瞬だけキリリと彼の顔が引き締まる。
「んー・・・それもそうだね!」
その顔が先程までとあまりにかけ離れていたため少し気になったが、オーガスタスはすぐにだらけた表情へ戻っていた。しっかりとした考えはあるようだ。だがこの茶番、想定していたより時間を食ってしまった。さっさと二人の元へ帰りたいが、本題を聞かずに帰るのも癪に障る。
「で、本題ってのは?」
「そう!なにもただいたずらするためにちょっかいをかけに来たわけじゃないのさ!実は協力してほしいことがあってね!」
「言ってみろ。」
「人魚の保護に協力して欲しいのさ!」
話が巻き戻ったような気になるがわざわざ言い直したということは何か理由があるのだろう。しかしこちらも目的があるためなんとなく断ってみる。
「旅行で手一杯だ。」
「あなたにやって欲しいのは保護活動じゃないんだね!名義貸しさ!」
オーガスタスは強く頷くと、話を聞いているようで聞いていない強引な返答をしてきた。それにしても名義貸しなぞ良いイメージが無い。借金でもさせる気だろうか?
「犯罪の臭いしかしないが…わかるように説明してくれ。」
「ロサンクが滅んだのは知っていると思うんだけど、その後は知っているかい?」
「密猟者が後を絶たないって話をさっき聞いた。」
「そう!ロサンクが滅んだのもそれが原因!人魚を独占していると根も葉もない話を吹聴して周辺国を動かした奴がいたのさ!僕の父が死んだ直後にね!軍の重鎮を欠いた状態ではまともな戦闘も起こらなかったよ!」
「王族は皆殺しか。」
「それどころか国民も容赦なく殺されて生き残った者はほとんどが奴隷、逃げおおせたのはほんの一握りって状況さ!そんな中でも父の遺言で逃げる算段を付けていた僕ら家族はこうして財産も持ち出せたってわけだね!」
「わかってたんなら…」
「信じると思うかい?父の居る間に平和ボケした連中が!!おっと、言葉が汚かったね!すまない!それでね、僕は父の思いを継いで人魚を助けようと思ったわけなのさ!この船と資金はあったから各地を回って貿易をしながら元手を増やして活動を開始した!でもどうしても無理なことがあってね!」
「なんだ? もったいぶらずに言えよ。」
「それは他国の武力介入!保護した地域は秘匿しているけど、金に目がくらんだ近隣の者達が情報を売るんだ!それで海上戦力のある国が人魚を狙って攻めてくる!もちろん見つかるたびに場所を変えているんだけど島のない海域では彼らも生活できないんだ!だから島のある地域に行くとだいたい人間が住んでいてね!辺境の島国の人達は往々にして金に困っているんだよ!」
「いたちごっこか。」
「それで武勇で名を馳せたヴァルガス様の登場って訳さ!その災害級の力で不埒な国を千切っては投げ千切っては投げ!」
「冗談はいい。」
「抑止力になってほしいのさ!」
「抑止力は一度使う必要があるだろう? 推定有罪ってだけで滅ぼすのか?」
「そこで先日のアスペリア連合国の件が生きるのさ!」
「知ってたのか?」
「あなたが無自覚なだけでリールに現れた驚異的な魔力は権力者の注目の的さ!突然消えたそれが鎮護の森で地形を変えるほどの大破壊を起こし、アスペリアで両軍の衝突を横合いから消滅させた!もう世界の長老共は気づいてる!あなたが戻って来たってね!」
「・・・森ってリールの近くのか?」
「そう!あそこに封じられていた”国滅の魔人”を排して人知れず世界を救ったこと、再びカーリマインの戦争を止めたこと!それにアルジェシュでもなにかやらかしたそんなあなたが人魚の保護を声高に叫べば保身を考える連中は手を出せなくなる!」
「森のあれは俺じゃないんだけどな。それにうまくいくとは思えない。」
「今まで通り生活してくれればいいだけさ!神出鬼没!ただ生活しているだけで何かしらのトラブルに見舞われて即解決!そういった事案を見て金の亡者や権力者はナニを縮める!完璧じゃないか!」
「本心は?」
「すべてが無くなるなんてありえないね!長老共はあなたへの恐怖を覚えているけど新参者は知らないし信じない!本当はあなたがどこかの大陸を強奪して亜人の楽園を築くのが一番の近道なんだけど裏切られた国さえ滅ぼさなかったあなたが他者のためとはいえ戦乱を起こすことはないでしょう!」
「現実的じゃない。すべてを救うのは勇者のやることだ、俺じゃあない。」
”滅ぼさなければ好きにしろ”アリアの言葉が頭をよぎったがすぐに否定する。これをやるには犠牲が多すぎる。多すぎる犠牲は恨みを量産してまた溝を作る。そうなればオーガスタスの活動は全くの無駄に終わってしまう。だがこのまま亜人が犠牲になったまま世界が進むのはやるせない。まとまらない考えに言い訳を重ねる。
「勇者なんてのは体の良い操り人形さ!なにを成すか、それは全ての生命の帰結!称号や名声が与える物じゃないのさ!」
「なんだ、意外と真面目なことを言うじゃないか。」
「もっと褒めてくれていいんだよ!僕は褒められて伸びるタイプなのさ!」
「五百歳が言う事じゃない。それで、具体的にはどうやってその”表明”をするんだ?」
どうにも話していると頭が痛くなってくる。これは持論だが、聞いてあっさり答える奴というのは何かしら腹に隠している奴だ。こめかみを抑えながら続きを聞く。
「僕らのネットワークでそれを広めるのさ!あなたも使っていただろう?通信魔法!それに貿易で儲けてたって説明したのをおぼえているかい?いろいろ顔が利くんだよ!もちろん商会としての顔だけどね!」
「商売のそれがその連中に意味があるのか?」
「噂話ってのはすごく強いんだよ!もちろん知り合いの権力者にはそのまま伝えて二つのルートから話を広めるのさ!いっそのこと亜人全ての地位向上を訴えてしまうのも手だね!まぁそれはしないけどさ!」
「二兎を追う者は一兎をも得ずってか? まぁ任せる。正直俺は気が回らないから、何かすることは無いと思ってくれ。」
「大丈夫!あとはこちらで何とかするね!協力ありがとう!」
オーガスタスは立ち上がり、問答無用で俺の手を取ってぶんぶんと振る。断る理由は無かったがまた自分の名前が独り歩きするんじゃないかと今更ながら考える。塔を出るときに”静かに嫁探し旅行”などと目標を立てていたことを思い出し溜息がこぼれた。
「そういや俺が協力するメリットはなんだ?」
「・・・(⌒∇⌒)/」
「我々が提供できるのは情報だ 保護活動に貿易、世界を回るうちに手に入れた情報を提供できる もちろんそれ以外もできることはする」
オーガスタスの無駄な笑顔に焦ったのか猫毛まみれのマリオが割り込む。確かに数百年レベルで引きこもりだった俺達には生の情報は貴重だ。アルジェシュでリザから聞くのも考えたが、城に行くと女王が乱入してきて聞ける状況ではなかった。真っ当な情報を仕入れて旅の一助とするのはやぶさかではない。
「ま、悪用しなきゃいいか。」
「ありがとうありがとう!きっと協力してくれるって信じてたよ!」
「今回みたいに君へ迷惑をかけることになるかもしれないが、よろしく頼む」
「あまり無茶をしてくれるなよ。」
「ところでジョセフソンってなんだい?」
「いや、今更だな。さっき人魚に会ったからな、あいつらは名を縛るだろ? それで偽名を名乗ったんだ。そのついでだな。」
人魚は名前に呪詛を込めることができるといわれている。名を呼ばれればそちらに行きたくなったり、手助けしたくなる程度のものらしい。それでも恐怖を感じた者たちが数々の物語を作るには十分な力だったのだろう。だから諸先輩方から人魚に名を名乗るなと教えられる。
「それができるのはツインテールマーメイドだね!シングルテール達はただの惚れやすい陽気な連中さ!ツインテールはもう100人くらいしかいないから会うこともあまりないだろうさ!」
「そうなのか? 俺も見たことないからどんな姿か知らないが・・・」
「まぁ、彼らは幻術も使えるし僕らを信じてくれたのが100人ってだけでもっとたくさんいるかもしれないね!」
「敵対してた連中が擦り寄って来ても疑うほうが普通か。」
「そうそう!保護だなんて言っても彼らの自由を担保できないし結局は僕らの自己満足さ!こっちが干渉していることを快く思わない人がいて当然!当事者以外も獣王ライネルなんかは尊厳が~とか言って目の敵にしてくるし!」
「魔王だとか言われてる奴か。」
「そう!彼も獣人を従えて自由のために戦ってたけど先日亡くなったよ!」
「死んだ? なんで?」
「正確にはわからないけど”怨嗟の魔女”を名乗る連中と交戦中に戦死したようだよ!」
怨嗟の魔女、その名には聞き覚えがあった。ディアナ・ドレール、リールの森で出会ったあの露出狂。魔人化した人間から魔人の魂を分離して救っていたはず。それが魔王を名乗る相手に戦端を開いたのは理解ができない。獣王というのが魔人だったのだろうか?
「もっとも獣王は方々に喧嘩を吹っかけて派手に立ち回ってたからいつ死んでもおかしくなかったけどね!あなたのいたアルジェシュにも人間を飼殺す異端としてケンカを吹っかけていたし!」
「迷惑な奴だな。だが王を名乗っていたなら国を持っていたんだろ? どうなったんだ?」
「混乱の只中さ!あの国は戦はできるけど外交は壊滅的!でもライネルの圧倒的な力で手が出しにくい国だったんだ!それが崩れた今、切り売りされるのを待つチーズみたいなものだね!」
「国民は獣人なんだよな?」
「もちろんそうだよ!だから奴隷商は近隣諸国に集まっているみたいだね!」
「何とかしないのか?」
「逆にできると思うかい?人魚たちの保護すらままならない僕たちが!」
「いつまでたっても奴隷はいなくならないんだな。」
「それはそうさ!自分たちが楽して経済を回すなら他人を搾り取るしかないもの!人間は数と道具の暴力で生来の能力を圧倒する!やり方は嫌いだけど獣王の言わんとしていることも僕は理解できるのさ!」
「それにしたって獣人は元が強い、奴隷として使うにはリスクもあるだろ?」
「あなたは現場には行ってないんだね!男性は鉱山に連れていかれて帰ってこないよ!穴に落とされてあとは掘るだけ死んでもそのまま埋められるのさ!女性たちは娼館で子供を産まされてその子供が奴隷として取引される!胸糞悪いね!最低だ!おっと!言葉が汚かったね!すまない!」
「・・・獣人の権利を認めていた国があったはずだ、そこに行く者達はいないのか?」
「もちろんあるしそこに向かうさ!でも受け入れることのできる人数なんかとっくに超えていて入国できずに追い返される!世界の価値観が変わらなければいつまでもこんなものさ!真っ当な感性をもっている国は数が少なくて涙を流しながら命を天秤に掛けるんだ!自国の民か、他所から来た者かでね!」
へらへらしているオーガスタスの表情は読めない。だが、揺らめく魔力が悲しみを感じさせる。やはり創命の魔王を倒したのはこの世界にとって重大な過ちだった。勇者だなんだと持ち上げられ、人のためだと戦いに挑んだ当時の自分を殺してやりたい。目が曇っていなければ気付けたはずだ。あれだけ世界をめぐっていたのだから。
「言葉が出ないな。」
オーガスタスは俺の背中をバシバシ叩きながら続ける。
「君が涙を流すことはないさ!すべては時代の、いや、礎である連中が悪いのさ!僕らの手の届く範囲は狭いけど、きっとこの活動が次代の価値観を創る!そうすれば少しずつ、少しずつでも世界は変わっていくのさ!」
やはり涙腺が仕事をしない。後悔の涙ほど格好の悪い物はないというのに。情けない俺の姿を見てかオーガスタスは話を変える。
「そうだ!救助者はどうするつもりなんだい?」
「アルジェシュに連れていこうかと思ったが、お前さんたちが何とかしてくれるのか?」
「任せておくれよ!僕らはいろんな港に行くのさ!きっと力になれると思うよ!」
「三十人くらいいるらしいが・・・乗れるか?」
「もちろんだよ!僕らの船を見くびってもらっちゃあ困るね!」
「・・・マリオ、よろしく頼む。」
「そこは僕じゃないのかい!?ユースタスの名に懸けてしっかり…」
「任せてくれ、迷惑をかけた詫びとしてしっかり対応しよう」
「あれ!?マリオ!私の顔を立てておくれよ!」
「それじゃ連れてくるからしばらく待っててくれ。」
「無視しないでくれないかな!ね!ヴァルガス様!」
どうにも涙を流したのが気恥ずかしくてガスを無視してドアを開ける。すると部屋の前でアレクセイが声を殺して笑っていた。彼の案内で甲板に出て海を眺める。
「綺麗なもんだ。」
後悔が無ければ癒されるであろう美しい海に感嘆ではないため息が出る。ひとまず救助者の引き渡しを伝えるため恐らく二人がいるであろう水賊の拠点を目指して走ることにした。
「なーんもないのぅ・・・」
「武器なんて使わないものね」
ミチは長剣を抜き二、三振ると鞘に戻した。
「? 随分手慣れておるのぅ」
ドラ子は流れるようなミチの動きに大きな目を丸くした。
「昔少しね、でもこんな”なまくら”私の力に耐えられない」
出来は良いが魔力耐性の低い剣はミチには無価値に見えたようだ。装飾性の高い剣も同じ理由で放り投げられた。物色するミチの姿に剣への思い入れを感じ取ったのかドラ子が提案する。
「ふむ、ジョンなら業物も持っておるんじゃないか?」
小首を傾げてミチが答える。
「だめ、思い出したら困るもの」
予想とは違う答えにドラ子も小首を傾げて質問する。
「何をじゃ?」
しまったというような顔でミオは話をそらす。
「秘密 ほら、あっちも探すの」
その反応をみて楽しそうにドラ子が追撃を掛けた。
「むふふーん?ミチー?」
「せい」
「おごぅ!ちょっミチ!?」
それが鬱陶しいのかミチはドラ子のわき腹に一撃入れると、抗議の表情を浮かべたドラ子に短く伝える。
「黙って探す」
「えぇー!?」
颯爽と出ていくミチを追いかけてドラ子も倉庫を後にするのだった。
暇な二人の一幕でした。
読んで字のごとくシングルとツイン二種類の人魚がいます。陽気で惚れやすくチョロい人魚がシングル。疑り深いくせに一度信じると裏切られたことを信じないほど情が深いのがツインです。どちらも魔法が得意で単体戦力としては強力ですが数が少なく狩られる立場です。
お話の中には出てきませんがオーガスタスの母は彼を産んだ直後に早逝しています。ジョンに妻として紹介された女性がハリスを助けてオーガスタスを育てたツインテールマーメイドでした。ハリスと彼女の間に子は産まれませんが、オーガスタスを大切に育てながら睦まじく暮らしました。ハリスは幻術を使い首都で暮らす彼女をすごしやすくしてやりたいと保護活動を始めたのでした。活動をする理由は博愛ではありませんでした。ハリスはその後病気(毒による暗殺)で床に伏し、今際の際に国から出るよう指示しました。土葬して墓を守ると言い出した継母を連れて行くためにオーガスタスは父を火葬し船に積み込み海へ漕ぎだしたのです。
ちなみに捕獲された人魚は内陸のお金持ちに買われることが多く、移送費を含めると小国の国家予算並みになります。ルートの確保や魔法を封じ込める魔道具の確保などやることがたくさんあり目立ちます。そのため規模の大きい野盗などに狙われやすくなり強力な護衛が必要でさらに金がかかります。そのかわりに一大事業として雇用を生み出すため海洋戦力のある国は手を出してしまうのです。人魚は一族共通して歌が大変うまく、教え込んで外交の場に連れ出すとその価格的な価値も含めて大変なプレステージとなるのです。




