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魔王さまは涙もろい  作者: 南部
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式典おわり

「いやー・・・・ 人生でも有数の無駄な時間だったな。」


魔石を使った街灯が灯る中、ねぷかけてふらふらのミチを誘導しながらロックの家に戻る。式は滞りなく済んだが、その後のパーティーが曲者だった。高価な料理に目がくらんで出席したが最後、取り囲まれて帰るタイミングを失ってしまった。ミチは暇そうにしながらも一緒にいてくれたが、ドラ子はめぼしいものを平らげるとちゃっちゃといなくなってしまった。

女王の演説で始まった返還式典は諸侯への確固たるメッセージであった。伝説の魔王と女王のつながり、さらには死者の秘石の所有をアピールして地盤を強化しようという考えらしい。知らない貴族より知り合いの助けになる方が個人的にもうれしいが、この国に残るロック一家が心配になってきた。女王を介さず節操なく言い寄ってきた連中には釘を刺したが、問題なのは目立たずに動く連中だ。コルビーがいるうちはラウラが守ってくれるだろうが、冒険者希望の彼がいつまでもここにいることは無い。クロムは彼らの護衛としてではなく女王の直轄の兵員として雇われているため休みの日はともかく日中監視の目が届かない。カリーナは不本意だが俺のことを嫌っているため協力が期待できないし、ラーベラは戦闘が得意ではない上にリザの所で仕事に励んでいる。エリザベスが近衛兵をつけると提案してくれたが、懐柔される可能性があるため逆効果だ。パン屋で修業中のアビゲイルは元兵士と言えどただの可愛い女の子だから論外である。


「あら、二人ともお疲れ様 式典はどうだった?」


商店街へ差し掛かった所で久しぶりの自由を謳歌しているリディアが声をかけてきた。


「あぁ、リディアさんか。悪くはないがちょっと・・・」


帰ってきてから間もないのにすっかり元気になった彼女の顔がキラキラ輝いて見えた。彼女は吸血一族の中でも指折りの実力者、こと今のこの国の戦力で言ったらトップを争う程だ。


「・・・何企んでるの?」


知らず知らずに真顔になっていたようで指摘を受ける。彼女は今、ロック一家と一緒に暮らしている。実はあの屋敷、リディアの実家だったらしい。忘却魔法のせいで所有者があいまいになり、不明建築物として国が接収し今に至る。”住めればいい”とのことで返却ではなく有り余る部屋を使って一緒に住むことになった。


「いや、企んではないけどちょっと頼みがあって。」


「世話になったもの、できることならやるわ」


「ロックさん一家が権力争いに巻き込まれないか心配でね。一緒に住む隣人として助けてくれないか?」


拍子抜けしたような顔でリディアは即答した。


「そんな顔で頼むもんだから、どんな無理難題かと思ったわ 心配しなくても助けるから安心して」


自分の真顔がいらぬ誤解を与えていたのが腑に落ちないがリディアは快諾してくれた。彼女は機転も利き義理堅い人物であるから信頼できる。


「助かるよ、これで安心できる。」


「でもあなたが一蹴した魔人にも負けるくらいだから、期待できないかもよ?」


リディアが皮肉っぽく言う。


「そんなことない、あの魔人の硬さは今までで二番目だ。それにレイコが言ってたよ”母さんがぶっ叩いたら素直についてきた”って。」


「そんなこと言ってたの? 殴っても反応がないくせに女の名前を叫びながらついてきて気持ち悪かったわ」


「人間だったころの彼女とかに似てたんじゃないか? 女好きの魔人も結構いるから。」


「うわ、気持ち悪い・・・」


「そう言うなって、中にはとんでもない悲恋の末に魔人になったやつもいるから、同情の余地もあるかもしれなくもないかもしれない。」


「どんな言い回しよ? 今更知る由もないしどうでもいいじゃない」


「まぁ、そうなんだけどな。とりあえず森の変異体を処分したらここを離れるから、必要なものがあるならそれまでに教えてほしい。」


「・・・特に無いわね へそくりは無事だったし屋敷も健在、娘も元・・気?だし」


「何で疑問形?」


「いや、なんだか距離感がやけに近い気がするのよねー・・・」


「甘えたい年ごろなんじゃないか? リディアさんの名前を出しただけで号泣したくらいだもん。」


「手のかからない子だったと思うんだけど・・・ 何なら一人暮らしがしたいっていうから宿舎に出したくらいだし」


「いや、いつでも会える安心感があればそうなるんじゃないか? 突然別れたらだれでも取り乱すさ。リディアさんがいなくなってからは褒められることを糧に乗り越えたって言ってたし。飽きるまでは甘えさせてやればいいじゃないか。」


「んー・・・ まぁ、そうね 小っちゃい頃を思い出してちょっと楽しいし」


リディアが楽しそうに話すレイコの思出話を聞いている間に屋敷についた。すると、まるで自動ドアの様に戸が開き、レイコが待ち受けていた。


「ママ、ジョンおかえりなさい!」


すっかりママ呼びになってしまったレイコが満面の笑みで出迎える。結局式典に呼ばれなかったレイコだが、リディアが戻ったことで”褒められる”ということに頓着が無くなり長期休暇申請をだして休みを満喫している。てっきりあのマシンガントークが地だと思っていたがストレスのせいだったらしく、品のあるお嬢様らしくなった。恋人でも迎え入れるようにリディアの手を取って中へ入っていく。


「おぉ、ようやく戻りよったか あんなものさっさと抜け出せばよかったじゃろう?」


薄情にも一人で帰ったドラ子が出迎えに出てきた。すでに限界を迎えて俺の腕に納まったミチを見ると穏やかな笑顔で頭を撫でた。手触りが好きらしい。


「一応主賓だからなー、さすがに抜け出すわけにもいかんだろ。女王とのコネはあったほうがロックさんたちにとっても良いだろうしな。」


「心配なら連れて行けば良いじゃろう?」


「さすがにそれはなぁ・・・ ロックさんなら旅慣れてそうだから何とかなるかもしれない、というかこっそり観光旅行しているのに大所帯になるのは避けたいな。」


「んー、しかし我らの感覚からすれば人間の命なぞあっという間、見逃すぞ?」


銀狼族以外との触れ合いが久しぶり過ぎて忘れていたが、ドラ子の言葉で得も言われぬ焦燥感が胸を締め付ける。アリアに言われた”寿命の概念が無い”という言葉も思い出したからだ。これから先は見送ることはあっても見送られることは無いだろう。


「それでも一緒に居ることが彼らの為になるとは限らない。スキール君やフェタさんは旅とは無縁な生活を送っていたしな。」


「だがの?外面ばかり気にして納得できない結果を得るなんぞ馬鹿のすることじゃ まぁ、それが人間の可愛いところでもあるんじゃんがなぁ」


人とともに暮らしていた珍しいドラゴンは昔を思い出したのかにやにやと物思いにふけっている。そこまでは良かったが、楽し気な顔でよだれをたらし始めたので小突いて正気に戻す。


「なんでよだれたらしてんだよ。」


「あの村の名物の串団子がうまくてな 思い出したらつい、の」


「あぁ、あの味噌つけて焼いたやつか? 確かに美味そうだったな。あの頃は忙しくて食えなかったからなー、見かけたら買ってみるか。この辺でも似たようなもんならきっとあるだろ。」


「うむ、妾の分も頼むぞ? もちろんミチのもな」


「あぁ、任せとけ。とりあえず明日は休みってことで鱈腹食って服も買おう。晩飯はリザに頼んで良い店を押さえてもらったから、露店であんまり食べ過ぎないようにな?」


ドラ子への詫びに丁度いい店をエリザベスに手配してもらっていたのだ。初日に奢ってもらった高級店、本来一般客の入店はできないが友好の証として特別に使わせてくれることになった。


「心配せずともうまいものは別腹じゃ! いくらでも食える!!」


「そこを力一杯言われてもな・・・ まぁ、臨時収入もあったし大丈夫だけどさ。」


じつは魔人討伐の報酬をエリザベスが用意してくれていた。三血士の問題も片付き、女王の権威の向上も図れたとたんまり包んでくれたのだ。正直頭が上がらない。


「ミチも連れて行くのじゃろう? 覚悟しておくがいい!」


エリザベスのおかげで二人がいくら大食いでも何の心配もない、はずだ。ちなみに風呑龍の売却益はアビゲイルとロック一家の支援金として受け取りを固辞し、エリザベスに運用を任せた。


「それにしても、そんなに腹減りキャラだっけ?」


ミチをベッドに寝かしつけながら聞く。


「あれだけ封印されておったのじゃ、味覚が新鮮! 毎日の食事が楽しゅうてのぅ」


「あぁ、その、ごめん・・・」


「いまさらよいわ 当時の状況では殺されてもおかしくはなかった ほどほどに感謝しておるぞ?」


「心が広くて助かるよ。何て名前だったかな・・とりあえず女の子にえらくしつこくお願いされてたんだよ。あの子にも感謝しないとな。」


「おそらくマリーじゃろう 家族のようによくつるんでおった ロックの先祖じゃ」


「あ、そうそうマリーさん。子供の命乞いする親みたいな鬼気迫る感じだったよ。一瞬洗脳されてんじゃないかって疑ったほどだ。にしても封印されてた間の情報なんてどうして知ってるんだ?」


「前に言ったような気もするが、封印に食われる瞬間には死者の秘石で自我を取り戻してな 千里眼くらいなら使えたのじゃ しかしあれだけ美しい術式でこれだけ長く縫い留めるとはやはり当時のお主も化け物じゃ」


「それはよく言われるけど、魔王にはボコボコにされたぞ? あいつが何か諦めたから勝ったけど・・・ あれが無ければここにはいなかったな。」


「・・・・?」


「いや、ほんとだって。ほんの少し間ができてから異常にパワーダウンしたもん。アリアあたりがなんかしたのかもしれないけどいつも聞くの忘れてな。」


「それは興味深いのぅ 詳しく話すのじゃ」


「いや、それ以上の何かはないよ。明らかにその瞬間を境に手が緩んだんだ。正直、恐ろしい魔王だと言われていたからどんな奴かと思ったが・・・ 差別されてる連中を集めて独立国家をつくろうとしてただけだった。正直それまで見た亜人の境遇を思い出して味方したいと思ったくらいだ。」


「お主・・・そこまで考えて引けなかったのか?」


「あぁ、勇者じゃなかったらなんとかなっただろうけどな。ま、過ぎたことはどうしようもない。アリアの話じゃあ彼女を作って元気にやってるそうだからいいだろ。」


「何とも、ぶっちゃけた話じゃのう・・・」


「いいじゃないか、幸せなのはいいことだ。俺もこうやって目的もなく旅したり昔の顔をみて楽しいからな。あの魔王の贈り物が無ければミチやドラ子と会うことも無かったから、今は感謝してるよ。」


「うむ、妾もそう思う お主やミチなら先に逝くこともあるまい 末永くよろしく頼むぞ?」


「そりゃプロポーズか?」


「んぇ・・? なにゅ、いや何を言っておる!妾を封印したときの事を忘れたのか!?」


「・・・・・・・・・あー・・・・」


「ちょ!? お主!!?」


「ちょっと待て。落ち着け俺、今思い出すから。」


確かにドラ子へ何か言った気はする。だが、当時はドラゴンの姿しか見ていないし、そもそもドラゴンの性別なんて見た目で判断できないからプロポーズに近い言葉を吐くとは思えない。しかし、あれだけ話したマリーって名前も今まで忘れていたくらいだから何か取り返しのつかないことを言っていたかもしれない。ドラ子は封印が彼女を飲み込む時に意識が戻ったと言っていた。思い出せる言葉はたしかこんな内容だったはずだ。


「”普通に出会ってれば相棒になれたかもな”プロポーズじゃなくね?」


「違う! そのあとじゃ!! マジかお主まぢか!?」


この後は特に何か話した記憶は無い。村付きの呪術師が作ってくれた呪文を唱えていただけだ。彼が作り上げたものを丸暗記しただけだから意味も解っていなかったが、もしかするとその中に勘違いするような内容が含まれていたのかもしれない。


「もしかしてあの呪文か? ならスマンが内容もわからん!」


「・・・おー・・・あー・・・えぇぇ・・・」


この死んだような顔を見ればどうやら正解の様だ。あの呪術師何を考えてそんなものをぶち込んだのかわからんがとんでもないやつだ。だが、目の前で狼狽するくらいにはドラ子はそれを受け入れている。という事はフラれる心配は無いんじゃないだろうか? すごく男らしくないが正直これまで良い雰囲気になっては目も当てられない結果になっていた俺には降って湧いた大きなチャンスだ。


「いや、それについてはスマン! でもお前さえ良ければそのー・・なんだ・・・あー、俺の言葉で改め」


言いかけた瞬間ベッドから手が伸び俺の左手の袖を掴んだ。


「・・・・さすがに起きますお館様・・」


ミチは恥ずかしそうにゆっくり起き上がり、ベッドから立ち上がった。


「ご、ごめんミチ!すぐ出てくから!」

「違います その・・ドラ子、抜け駆けは良くない」

「ち、違うのじゃ!こやつが!」


「お館様・・その・・・母様はどこかに置いて来いと言っておられたでしょうが、私はお館様以外に考えておりません もしドラ子だけ受け入れるなら殺して行って下さい」

「ミチ!?」


「言葉通りですお館様 ドラ子とは話がついています」


「何の話が・・」

「私が妃」

「妾が側室じゃ」


「それと、それ以上は認めないという事が決まっています」


「魔王と言えど城も領地も無いからのぅ 嫁を増やしてもプレステージはあがらんじゃろう?」


「まー・・・ その、あー・・・ 寝室で告白とか無しだ。せめて明日の夜まで待ってくれないか?

 人生始まってこんなに頭が追い付かないのは初めてだ。」


だいたい考えが追い付いた試しは無い。しかしバランスボールの上で立っているような、ここまで地に足がつかないのは初めてだ。


「確かに雰囲気もへったくれもあったもんじゃない! と思ったが・・・今更情緒的に口説かれてものぅ・・ これくらいがちょうどいいんじゃあないかの?」

「そんなんでいいのかよ!」

「返事を伸ばされては眠れません ・・おあずけは、要りません!」


「あー、・・そういう事ならいいか。いや、いいのか? 人生でも有数のビッグイベントじゃないのか・・・? 俺が間違ってるのか?」


「いや、間違ってはおらんだろうが、妾とミチじゃぞ? 気の使いどころが違うじゃろうなぁ」


「もう後回しにしません ・・・お館様、気持ちはお伝えしました」


「それじゃぁ・・・ 俺はちょっと頼りないかもしれないし常識外れなところもある。気も利かないし、欠点なんて上げたらきりがない。それでもいいか? 正直女性と付き合ったことも無いからどうしていいかわかんないけど。」


「そこはビシッと”幸せにする”とか言えんのか?」


「ドラ子、答えを急がせた私たちが悪い」


「いやな? 何をもって幸せかが全く想像つかないからな・・・ いかんせん長生きってだけで人生経験が無いようなもんだから。」


「まぁ、妾は別に現状維持でも構わん」


「私も置き去りじゃなければ」


「・・・急ぐ必要あったか?」

「あります」「あるのう」


「そうか?」


「ミチはお主に対してのアプローチが腫物を触るようじゃったからいつまでたってもこのままじゃったろうなぁ」


「いや、ノアさんの娘だもん・・・ 我が娘だと思って見てたよ。あそこまで考えてくれてたなら断る理由が無いけどさ。」


「母様は最初から何か分かっていた風でしたが・・・」


「“ミチを気に入ったらそのまま連れ帰れ”てなことは言われたよ。」


「ミチのサポートを頼むと妾にも言っておった 内心複雑じゃったが・・妾が二番目なら怒らんじゃろう」


「ところでいつの間に話し合ってたんだ? なんか、こう・・デリケートな問題な気がするんだが?」


「アスペリアで待ちぼうけしておるときじゃな 暇で暇で昔話をしておったら・・・」


「お館様がドラ子にプロポーズしたと言い始めたので洗いざらい話させたあと、わからせました」


「別に順位なぞ妾は気にせん ミチのことも気に入っておるしな!」


「そっかー・・・ でもな、俺も男だからな? 結婚といったらそういうこともあるからな?」


「正直いつまでたってもこんから、不思議に思っておったくらいじゃ まさかお主が理解しておらんかったとはのぅ」


「でも封印を壊した時は怒ってたじゃないか。極大魔法なんか起動してさ。」


「それは・・・ ニヤニヤして飛び出したら・・安い女だと思われるじゃろう? だから少し意地悪をしようと思ったら・・・ まさか拳で黙らされるとは思わんかったがの!」


「いや、ほんとごめん・・・ 人目があってさ。」


「明らかに解除方法を間違えておったからのぅ」


「? 確か合ってると思ったんだが。」


「封印の時にもそうじゃったが・・・魔力を込めすぎなのじゃ 予想はしておったから問題なかったがのぅ・・・ 小物ならあれで永眠じゃ」


「えー・・・ 重ね重ね申し訳ありませんでした・・・」


「もうよい、正直人間のお主がどうやって妾を嫁に迎えるまで生きながらえるか見当もつかんかったが・・・ そのことが封印の中でも正気を保てた一因でもあった 一悶着あったがまぁいいじゃろう」


「これからも一つ、よろしく頼む。・・・離さんからな?」


「心配せずとも妾もミチも死ぬまでお主と共にあろう ただし、浮気は許さんからの?」


「あぁ、約束しよう。この身が滅ぼうと二人を愛そう。」


「改まって言われるとこそばゆいのぅ!」


「カオカラ、ヒヲフキソウダ。とりあえず今から店が開くまで変異種を片付けてくるから、二人ともゆっくり休んでてくれ。朝飯はウルダちゃんとフェタさんが作ってくれる・・けど、ほどほどにな?」


「二人の食事もなかなかに美味い・・気をつけねばのぅ」


フェタの作る料理はバリエーションも多く味もうまい。今のところ催促しない限り同じメニューが出たことは無い。ただ、潰した豆、あれはだめだ。エンドウ豆みたいなものをゆでて潰して鬼のように甘くしたものを香辛料を利かせ焼いた肉に乗せて食べる料理。ゆでてあるのに口の中の水分を根こそぎ奪い、歯が痛くなるような隙のない甘さが襲ってくる。せっかくのうまい肉もあれのせいで脂っこい甘い何かになり果てる。リールの郷土料理らしいがロックも苦手なようで、食べた瞬間のこちらの反応を見て爆笑していた。当のフェタは不思議そうな顔をした後何事もなかったように平らげ、その息子二人は慣れているようで完食、コルビーの嫁のウルダは呆然としていた。肉と別々に食べることでなんとか完食したが、追豆もあったせいで絶句した。


「たぶん同じことを考えておるが・・・ あんな料理見たことも無かった きっとどこからか流れてきた料理と融合したのじゃろうよ 妾もあれは好きになれんなぁ」


「・・・我慢しながら食ってたのか?」


「もったいなかろう? ちゃんと苦手なことは伝えておるからもう出さんじゃろう!」


「すごいな・・でも助かったよ。あと数日も一緒にいないから、いい思い出ではあるんだが・・・また食いたいとは思わないからな。」


「まったくじゃ とりあえず妾は休む 億が一にもありえんだろうが気を付けてゆくがいい」


「お、ありがとう。それじゃあ行ってくる。」


変異種がどれだけいるかわからないが、ある程度間引いておけばあとは吸血一族がどうにかしてくれるだろう。強そうな固体を優先で処理して行けば彼らの負担が減るだろう。探知魔法をかけながら森へと向かうことにした。


「はっ! お館様! 私はいつで・・ ドラ子、お館様は?」


赤面しながら固まっていたミチは部屋を見渡しながらドラ子に聞く。


「ミチが呆けている間に森に向かいおったぞ」


「・・・・・・・・・!!!」


ジョンからの質問に二手三手を考えながら言葉を選んでいたはずが、時すでに遅し。ジョン本人が退室してしまっていた。完全に自分の落ち度だがヤリ場のない思いでドラ子を見る。


「いや、そう睨まれてものぅ・・・ 確かに思わぬ質問じゃったが、夫婦ならば、ある話しじゃろう? そんなに恥ずかしがることは無い、それに我らの寿命は人間とは違う 焦らずともゆっくり距離を縮めればよかろう?」


先輩らしいアドバイスがしたかったのか少し違う答えが返ってきた。


「どっちかというと、どうやってそういう雰囲気に持って行けばいいか考えてた」


塔にいるときは妹たちの目もあり手出しができなかったから今しかない。手の届くところで手出しできない毎日を過ごした悶々とした感情がドラ子との会話を聞いて爆発してしまった。


「・・・ミチは意外と大胆じゃのぅ てっきり戸惑っておるのかと思ったのじゃ」


「経験は無い、けど・・やる!」


「ほ、ほどほどにのぅ?」


「大丈夫、もう夫婦だから遮るものは何もない」


「いや、元から遮るものなんか無かったようなきもするがのぅ・・・」


「ごちゃごちゃ言わない ヤル気が無いならドラ子は黙ってる」


「あるんじゃが、ここまで本気のミチを見るとのぅ・・」


「ドラ子は指を咥えてみてるといい!」


「使い方が違うと思うんじゃがな・・・」


「寝込みを襲う」


「いや、もう完全に犯罪者じゃ!肉食系もそこまでせんじゃろう!?」


「・・・ドラ子ならどうする?」


「・・・胸でも押し付けて耳元でささやくかのぅ」


胸をさすりながらミチはドラ子のそれと比べる。魔人討伐の時には褒めていたが、本心とは限らない。


「私は正攻法で行く 明日、なんか良い感じの服と下着を買う」


「それが良いのじゃ 奴とは少し別行動をして驚かせてやるのがよかろう 狼狽する姿が目に浮かぶのぅ!」


「ところでドラ子・・・服のセンス、ある?」


「・・・・・リディアに協力を仰いでみようかのぅ・・」


「早速話に行きましょう」

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