ミミックスライム
「さって、知ってることを話してくれるかな?」
テーブルと使用感のないベッドが置かれた窓すらない殺風景な部屋、その片隅にくつろぐこともせずラーベラは立っていた。
「・・・カリーナ様はどちらに?」
「話しにくいことなんかもあるかと思ってね、席を外して貰った。」
「で、あればカリーナ様からお話がございましたでしょう? それが全てでございます 私しか知らない情報は特にございません」
ラーベラは感情のない細い目でこちらを見据える。
「んー、監視役なんだろ? ナーニャ以外に誰かが関係しているなら教えてほしい。」
「はい、それは間違いございません しかし、私の知り得た情報はすべてカリーナ様も知っていることでございます あくまで私はカリーナ様の動向をナーニャ様へお知らせするための連絡員でございます それ以上の情報は与えられておりませんでした」
「ちなみに戦闘になったのに取り巻きが自室で待機ってのはどういう了見だ?」
「御冗談を! カリーナ様は本気でしたがヴァルガス様は欠片もやる気がございませんでした それに森の中での騒動も別な方の一人芝居でございましょう?」
昔読んだ本が間違った内容だったのか大分受ける印象が違う。大した洞察力だ。
「・・・他の取り巻きは?」
「皆様は身支度をなさっています カリーナ様と一緒にいたいという気持ちは変わらないからと」
ラーベラが何か隠していないか表情から読み取りたかったが、足の先から頭の先まで観察しても何もわからなかった。やはりグレンはエスパーか何かだ。
「質問を変えよう。なんでナーニャに協力してたんだ?」
「ヴァルガス様はミミックスライムのことをご存じでしょうか?」
「他の生き物の群れに紛れ込んで身を守るって昔見た本に書いてたな。」
「はい、概ねその通りでございます 一点足りないのは紛れ込んだ群れを内側から食い尽くす特殊な個体がいたということです」
「食べるの?」
「はい、一般的な個体は草や木の実などを食べることで生きております 群れが無くなれば無防備でございますし、また入り込める群れを探す必要がありますから」
「おう・・・それで?」
「特殊個体は群れを食らいつくし渡り歩くことでより強力に成長します それが発見されてからミミックスライムは忌むべき存在として狩られ続けています おそらくヴァルガス様がご覧になった本はその特殊個体が発見される前、優しい時代の物だったのでしょう 今は発見されれば即処分となります」
「ラーベラはその特殊個体なのか?」
「・・・いいえ、私は一般的なものです 弱い種族でございますから、強者の威を借るために協力致しました」
「その特殊個体ってのはまだいるのか?」
「わかりません 発見された個体はとうの昔に殺されております どういった条件で生まれるかもわからないものですから・・・生まれているかもしれません」
「とりあえずラーベラは一般的なミミックスライムで、紛れ込んでる群れは吸血一族ってことで間違いないな?」
「? はい ナーニャ様は強力ですが一人、いつも一緒にいるのはカリーナ様達吸血一族でございます」
「じゃあ、お前さんのことをカリーナがこっちよりの立ち位置だったと話していたのは?」
「それは紛れ込んでいる群が不利になるようなことは避けたいと・・・癖、のようなものでございます」
依然表情から本心はわからないが、なんとなく信じても良いような気がしてきた。
「じゃ、いいか。カリーナにそのまま雇用して貰えるか交渉してみるよ。」
「どういうことでございましょうか? ナーニャ様は毎月こちらにおいでになります」
「もう来ない。だって殺したから。」
「・・・は?」
「カリーナもおんなじ反応だったわー・・・ 紆余曲折を経て殺りました。」
「えー・・・っと あのー・・・・はい! よろしくお願い致します!」
「お、信じてくれるのか?」
「ヴァルガス様が規格外の強さであることはカリーナ様もおっしゃっておりました それにいつもならナーニャ様がお金の無心にやってくる頃でしたが・・・お姿もありません つまりそういうことなのでございましょう」
「それにしてもお前さんはすごいな。本では言葉や常識が理解できず、すぐに追い出されるなんて書いてたが・・・そこらの人よりしっかりしてるな。」
「私の系統は野犬の群れとして暮らしておりましたが、牧羊犬として捕まり長く人の生活に寄り添ってまいりました 代を重ね人の暮らしを見守る中で身につけた知識でございます」
「カリーナを逃すための進路妨害や兵への指示も評価できる。」
「人も私も群れの存続を望んでいることは同じこと・・・異物であることは存じておりますが、私共は時に己を囮に群れを逃すこともございます」
「なおさら残って貰った方がいいな。だが、裏切るなら覚悟してくれよ? 必ず見つけ出して後悔させるからな。」
「もちろんでございます 生かして置いて頂くからには肝に銘じ、より精進致します」
「よろしく頼む。ところで・・・ミミックスライムはどうやって増えるんだ?」
「? 他のスライム同様分裂にて増殖致します どうかなさいましたか?」
「いやな、お前さんを見てたらうちにも引き入れたいなと思って。うちは俺も含めてポンコツばかりだからなー・・・頼れる人が必要なんだ。」
「私どもは先ほどの通り戦力としては三流でございます ヴァルガス様の足手纏いになるでしょう」
「あまり自分を過小評価しちゃだめだぞ? 円滑なコミュニケーションや立ち居振る舞い、気遣いなんかは特に重要だ。それに加えて機転も利くなんていったら引っ張りだこさ。」
褒めちぎったらラーベラは少し照れ臭そうに頬を掻いていた。出会ってから初めて感情を表に出したような気がする。
「じきに私も分裂致します その時にはよろしくお願いします」
ラーベラはニコニコと楽しそうに両手を合わせて承諾した。長く人と関わっていた彼女の経験からなのだろうか、ちょっとした動きもいやに可愛い。
「こっちからお願いする、いつになってもいいから必ず知らせてくれ。急いで迎えにくるから! ・・・そういえばミミックスライムはどのくらい生きるんだ?」
「捉え方次第ではありますが、永遠に生きます」
「どういうこと?」
「私たちは一体のミミックスライムから分裂して増殖致しました 同じ個体が沢山いると思ってくだされば間違いありません そのため個体としての寿命は大体100年くらいですが、全滅さえしなければ永遠に生きます」
「じゃ、じゃあラーベラが沢山いるの?」
「もちろん見た目はその群で違和感が無いように変わりますが、中身は分裂するまで同じでございます ヴァルガス様の下におれば安泰でございましょう 末長くお傍において下さいませ」
嫁入りの挨拶みたいになってしまったがスライムの類は無性だ。残念だが嫁にはならない。
「よろし あ、あれ、それじゃあナーニャに協力していたのは他にもいるのか?」
「いいえ、私だけでございます 一般的なスライムのように次々と分裂できるわけではございませんので・・・」
「それは良かった・・・ていうのも君達からしたら変か。とにかく敵対しない限り手伝えることはやるから相談してくれ。」
「それでは早速ですが、連絡手段がございません」
「あぁ・・・ そうだなー・・・ あ、でもこの辺に用事があるからしばらく城の近くにいるし、ロックフォールって人が城下町に住む予定だからたまに尋ねると思う。」
「それでは余分な魔石がありましたら下さいませんか? 多少は早く分裂できるかと存じます」
申し訳なさそうにラーベラが微笑む。こちらが無茶を言っているだけなのに気のいい奴だ。
「もちろんだ。だけどお前さんの体に負担がかかるとかそんなことがあるなら絶対に渡さない。大丈夫なのか?」
「ご配慮頂き申し訳ございません 私共にとっての栄養食のような物でございます」
ラーベラはニッコリと微笑んだ。魔石ならば換金しそこなった不良在庫が鱈腹ある。彼女に有効活用してもらえるならば浮かばれるだろう。早速収納魔法から皮袋ごと取り出してテーブルの上に置く。
「こ、こんなに頂くわけには・・・」
「遠慮は無用! それだけ期待してるってことさ。それに家族を迎える支度金みたいなもんだからな。出し惜しみはしないさ。」
もう一つ魔石入りの袋を取り出してテーブルに追加し、ラーベラへ目を向ける。すると先ほどまでニコニコしていたはずの彼女は目にいっぱいの涙を溜めてぷるぷると震えていた。
「う、ごめん!なんかやらかしたか!?」
「いいえ、いいえ! 家族と・・・家族と仰って下さる方がいるなど・・・・」
「あー、なんだ、そのー、今まで何があったかは知らないけど、一緒にいるなら家族でいいだろ? ただし、ふらっと居なくなるのは無しな! それと、俺は裏切られると何しでかすかわからないからそこは覚悟してくれよ?」
頭をなでながら脅しのように注意事項を伝える。触った頭は髪の質感も温もりも人のそれと全く同じで違和感がない。事前にスライムだと言われていなければ見破ることは難しいだろう。それにしてもそっくりだとはいえ涙も流せるとは恐ろしいほどの擬態である。
「私は特に長く人と関わっておりました きっとそれが原因でございましょう」
「あれ・・・声に出てたか? すまん・・・」
ラーベラは泣きながらニッコリ笑うとこちらの顎の辺りを触りながら話す。
「いいえ、お顔に書いております」
グレンのことを思い出して自分の顔を触って確かめる。勇者時代はポーカーフェイスで通したものだがどうにも歳のせいで変わってしまったらしい。相手の考えはわからないのにここまで読まれるとある意味恐怖だ。自分で交渉ができる気がしない。
「ふふ、お任せください 力ではお役に立てませんが、言葉ではお力になれるでしょう もし失敗して死んでも分裂体が仕事を致しますからご安心下さい」
「あっはっは! それは頼もしい! でも死んだらだめ。代わりがいるとかそう言う問題じゃないからな? 死ぬなら寿命で、かつ身内の側で死ね。そこも守って欲しい。」
「お約束致しましょう!」
握手でもしようかと思った瞬間にラーベラがバルコニーの方を振り向いた。つられてそちらへ目をやると微妙な表情でカリーナが入ってきた。
「いちゃついてるとこ悪いけどラーベラは連れてっていいわ」
だいぶ前から話を聞いていたようで、挨拶や乱入した理由などを言うわけでもなく要件を伝えてきた。
「いちゃついてねーし! 盗み聞きとか趣味悪いな。」
「散々悩まされたんだから気になるでしょ!? ま、いずれにせよそのこをここに残すことはできないわ」
「あ? 話を聞いてたなら彼女が有能だってわかるだろ?」
「否定はしないわ・・・ でも私もこの砦を去るんだから後任がどうするかなんてわからないわ 例えあんたの説得があっても私の部下として入り込んだその子に今後も居場所があるとは思えないわ」
そういえばカリーナの退去は決まっていたのだった。伝言に来たのにいろいろあってそれを忘れていた。
「ま、リザに聞いてみて判断してもらうか。それじゃ、弁明もあるだろうからカリーナも一緒に来るか?」
「いや、私は」
「まぁそう言うなって! リザは随分丸くなってたから良い感じにまとめてくれるんじゃないか?」
「ちょ、離せ!お前が想像してるのとは違う!」
「ラーベラも掴まって。」
「こう、でよろしいでしょうか?」
「よし、いくぞ!」
「聞・・にゃああああああぁぁぁぁ」
騒ぐカリーナをがっちりとホールドして走り出す。取り巻きの連中のことを忘れていたが、カリーナの元でその姿を見てきたならきっとなんとかするだろう。他にも何か忘れている気がするが夕飯に遅れそうなのでさっさと戻ることにした。
昔ミミックスライムはとても一般的な生き物でした。森に生き、森に死ぬ。好奇心が旺盛で、初めて見た生き物も観察し学習し群れに収まる。そんな暮らしをしていました。ある時二本足で歩く生き物を発見して観察を始めます。観察して形を真似、いつも通りにミミックスライムは群れに収まろうとしましたが、その二本足で歩く生き物の鳴き声は複雑で真似ができません。たくさんいた二本足の生き物はそのいびつな声真似を怖がって逃げていきました。その中で一匹だけ興味深げに観察を続ける者がいました。ミミックスライムはその二本足の生き物の動きを真似て一緒に居ようとします。手を出されれば手を出し、表情を真似、立ったり座ったり。それでも真似できないことがありました。
「バイバイ!」
初めて聞いた鳴き声なのにミミックスライムの体は全力でそれを拒否しました。もちろんその子供はそんなことを理解できる訳もなく走り去っていきます。追いかけようにも二本足がそれを邪魔しました。四本脚なら今からでもその子に追い付くことができますが、なぜかそうしたくない。そんな気がしたのです。
それから数日、ミミックスライムはあの生き物を忘れられませんでした。本来は群れを探して収まるべきですが、あの姿のままあてもなく彷徨いました。最初は四つ這いで移動していましたが、あの姿を思い出すたびこのままではいけないと試行錯誤するようになりました。次第に二本足で立つことに慣れ、歩ける時間が長くなり、ついには走れるようになりました。視点が少し高くなったことで栄養のある木の実や果物にありつけるようになり餌を探し回る時間が減り、あの生き物を思い出す時間が増えました。
「あわうぇあー」
時々鳴き声を真似してみましたが肝心の意味が分かりません。ワンと鳴く牙のある四つ脚の生き物などは何個かの鳴き声を覚えれば一緒にいることができましたが、二本足の生き物の鳴き声が指す意味は理解できませんでした。しかし、二本足のおかげか栄養状態は良く、最初の分裂が起きます。分裂体は牙のあるワンと鳴く四本足の生き物に擬態して森に消えました。
ミミックスライムは自らの記憶をもとにその場所で最も生存率の高い生き物に擬態することが多いからです。大体一つの群れに2~3匹のミミックスライムが紛れ込んでいるため、自らを囮に使って群れを逃がすこともあります。記憶を継承して増殖し、トライアル・アンド・エラーを繰り返すことで群れに溶け込んできたミミックスライム特有の習性なのです。
物語調にミミックスライムの紹介をしようと思いましたが断念。
特異個体は強烈な怨嗟を持って死んだミミックスライムから生まれます。種を守るとか群れを守るとかそういった思いを全く持たず、これまで培った記憶も引き継かず、ただ他者を食らいつくすために生まれる。怨嗟を持って死んだミミックスライムの体からは小さな子実体が複数生え、その胞子を吸った生き物の体を内側から食いながら成長して群れに溶け込みます。最初に取り付くのは鼻や喉の粘膜。そこから侵入するので初期症状としては鼻血や血混じりの痰が出ます。次に血液に乗り全身に回ります。この時点では意思を持っておらず、宿主も風邪のような微熱と咳、だるさ程度の症状しか出ないため見過ごされます。最後に血液の多く集まる器官でスライムの細胞が結合します。腎臓や肺、肝臓や脳であることもあります。腎臓で結合した場合血尿などの症状が出るため場合によっては駆除できました。肺で結合した場合は肺炎や肺気胸と混同されて放置されることが多く致死率が上がります。さらに厄介なのは脳で結合された場合です。脳を食い破っていく過程で本人にとって代わり体を動かします。もちろん言語や行動をまねることはできませんが、本人が寝込んでいる訳ですから唸っているだけで生きていると判断されるのです。そうして成長した個体はギリギリまで体を食い進め、限界を迎えると皮を破り生まれ出るのです。
お察しの方もいらっしゃる通り、人間相手にしか特異個体は生まれません。本来好奇心旺盛で性格は温厚、草食のミミックスライムは殺されても相手を恨みません。もちろん残念であるとかもっと生きたかったと感じるのですが、己の命は群れの維持よりも優先度が低い種族なので死を受け入れます。しかし、彼らに理解できない死が訪れた時、その恐怖の生存本能が牙を剝きます。例えば群れと判断していた個体群の一掃、あるいは捕食以外の目的での殺害があげられます。ラーベラの言っていた特異個体は後者です。上記のミミックスライムはこの後老人の生物研究者に拾われます。ラバルと名付けられたミミックスライムは老人の家族を観察することでより精巧に人へ化けることを習得します。ジョンが読んだ本はこの老人のまとめたミミックスライムについての項でした。彼の研究書に特異個体の記載がなかった理由はこの老人家族が皆殺しにされ、ラバルが子実体を形成したからです。生物の研究者であった老人を疎んだ同業者があらぬ疑いをかけて殺害したためでした。本当は老人だけを狙ったはずでしたが、ラバルがいたことで皆殺しの憂目となりました。
「あいつは魔獣に殺されて取って代わられた亡者だ!早く殺して死体を燃やさなければ我々も同じ目にあうぞ!」
この話を持ち出した男はラバルの子に八つ裂きにされた後食われました。というかその町一つが無くなりました。ラーベラの話で間違っている点はラバルの子が処分されたという点です。特異個体は燃費が悪く、2日間食べないと死んでしまう腹ペコさんでした。老人の町は隣町まで急いで4日、道を知らない特異個体は道中で餓死しちゃうおっちょこちょいだったのです。逃げ切れた人間の話で調査に来た派遣隊は道中で力尽きた化け物を見つけ、解体しました。腹の中から大量の人骨や動物の骨を発見して恐怖におののきます。その地域で知らぬ者はいないといわれたほど有名な冒険者の大剣も腹の中から見つかったからでした。どっとはらい
ちなみにラバルから分裂した個体が後のラーベラに続く系統です。特異個体が大暴れした町周辺にミミックスライム掃討作戦という名の生物皆殺しが展開されたため、元居た森を追われ追われて他の森に逃げ込みました。その森で群れごと捕獲されて選別、牧羊犬として調教されました。そこから営々と人の暮らしに寄り添い、人の言葉の意味や表情の違いなどを学習します。しかし、ラバルから分裂する前の遠い記憶、初めて遭遇した人との触れ合い。主従ではなく対等な相手としての触れ合いを思い出して人間に紛れることを始めたのです。
さらに余談ですがラーベラの親個体は人間に殺されています。彼女は人に紛れて素性を悟られないように転々と生活していました。しかし、金物屋の男に見初められて結婚します。子ができないことを前提に付き合っていましたが次第に男の家族から子を強く望まれます。仕方なく二人で相談し孤児を二人引き取りました。その時の一人が分裂した個体、ラーベラです。もう一人の子供の成長に合わせて成長を偽装することでより分裂体が自然に群れと溶け込むためでした。誤算だったのは彼女がその子供を子として愛してしまったことでした。
子を産むことのないミミックスライムが夫と手探りで子育てに奮闘し次第に心を開く子供に感情移入しない方が無理だったのでしょう。いつしか本当の親子のように穏やかな生活が続いて行きました。”家族”という言葉に押しつぶされながら。
夫と息子を騙し続けることが彼女にとって重荷になっていました。人と暮らし、人として生きてきた彼女は彼女が思う以上に人間だったのです。そしてある夜夫に真実を告げてしまいます。夫はもちろん信じませんでしたが、彼女の擬態はそれを信じさせるのに苦労しませんでした。このあとマザコンの気がある夫はママに相談してめでたく討伐隊が結成されました。
「マッマ!うちの嫁化け物だった!」
好きだったらそれでいいのにねぇ。お尋ね者になった彼女はラーベラを連れて逃げます。分裂して数年、彼女の気持ちもわかるラーベラは複雑な思いで一緒に逃げます。己が彼女の立場であればどうしたか?彼女が黙っていてくれたらどうだったか?疑問は尽きませんが二人とも動物の姿になることは頑なにしませんでした。そのためあっさり捕まりました。夫の情かラーベラのことは孤児だったと報告されており、彼女だけ殺されました。恐怖に煽られる人間の顔をみてラーベラは自分たちが異物であることを再認識してしまいます。穏やかだった家族との日々と、それを奪った人間の恐怖に揺れながら数十年逃げ続けたのです。それでジョンの言葉で泣いてしまいました。
アーテヴァーに拾われたのは全くの偶然です。精霊は色で個体を識別しています。つまり擬態は効果がありません。人間を信用できなくなったアーテヴァーは一人で様々こなしていましたが、財布に紐をつけたいと考えておったので丁度良く拾ったラーベラという紐をつけました。あの一件以来群れに入り込むことを恐れていたラーベラは強力なアーテヴァーに逆らえない群れならばある意味安心できるかとこの要求をのみました。というか飲まなきゃ殺されてました。臆病に生きてきたラーベラは人の顔色を窺うのが生命線でした。そこまでじゃないけどちょっと可愛い顔にしてしまったため暴漢に襲われることも少なくありませんでした。流れ者の一人女は軽んじられる地域が多かったわけです。しかし、ここでも昔の思い出が姿を変えることを拒み、危機管理能力が高くなりました。
まとまりのないミミックスライムの説明・・・終わり!




