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魔王さまは涙もろい  作者: 南部
27/67

リールの町にて5冒頭の昔話の続きとボーデンの最後

昔話の続きです本編にはあまり関係ありません。が、ちょっと好きな話だったので幕間としてアップしてみます。

「右に飛べ!!」

仲間の声にナディアは身を翻しかろうじて飛ぶ。敵の振るう長剣を皮一枚で躱し、返す刀で首を切る。相手の首が落ちる前にその後ろからもう一人が長槍で突きを仕掛けてくる。右手を失うことを覚悟した瞬間大男が巨大な盾で敵を吹っ飛ばした。

「ナディア!総大将が最前線に立つもんじゃないだろ!?」

「すまないバルザック!助かった!だが、道を示すものが胡坐をかいている訳にもいかんだろう?」

本陣には信頼できる軍師が控えている。お飾りの総大将は本陣にいる事よりも最前線で兵とともに駆けることを選んだのだ。その彼女を守るためバルザックは3mはあろう槍を片手で軽々と振り回して近づいてくる敵兵を薙ぎ払い、大きく声あげる。その姿に敵兵は怖気づいて固まった。

「ちげぇねえ!早くボーデンの旦那に合流しよう!道は俺が開く!お嬢様は化粧でも直してからゆっくりついてきな!」

「言ってくれる!遅れは取らんぞ!!」

大振りのバルザックに小回りの利くナディアがフォローを入れることで数の不利を感じさせない戦いを繰り広げる。そこへ出遅れていた後発隊が合流して頭数も拮抗したことで敵の兵が崩れ始めた。

「好機は今ぞ!!突撃!!!」

「「「おぉぉぉおお!!」」」

ただひたすらに本陣を目指す。元々人と人の勝負は決まっていた。最後まで戦争を継続できたのは偽りの神オルロードの”隷化の鎖”の影響である。これは一度己を主と認めさせた者を意のままに操る傀儡の力だ。解除するにはボーデンの”連鎖の解放”が必要だが、彼は既に単騎でオルロードと死闘を繰り広げている。ドラクルの翼、獣人の四肢、エルフの体に人間の頭。もはや人と呼べぬその姿とは裏腹に全ての命の解放を目指し一人戦っていた優しき者。彼の体は亡き友の体、彼の心は全ての自由意志の思い。目覚めた彼のささやかな反抗から始まったこの戦いはここで終わらせなければならない。なぜなら連綿と続いてきた戦いは彼の人間性を奪い続けていたからだ。感情の減衰に伴い彼を形作る友の力も弱まりつつある。ここを逃せば彼を失うどころか全ての生き物は偽りの神に反抗する術を失うのだ。

「ナディアお待たせ!」

「ルーナ!そちらも片付いたか!」

「待たせたな!」

「ルド!」

三方から居城であるヘルベティアの塔を攻めていた連合軍はここに集結した。塔を守るのはオルロードの懐刀、塵龍(じんりゅう)クロイツェル。大技が多いこの龍には少数精鋭で行かなければ被害が大きい。

「事前の作戦通りだ行こう ルーナはバルザックの後ろから援護を頼む ルドと私は切り込むからバルザックは注意を引いてくれ」

「任せろ!」

「問題ない」

「わかったわ!」

「いや、ここは俺に任せて貰えないか?」

「「誰だ!」」

そこには見覚えのない男が一人、ボロを纏って佇んでいた。30代半ばといったところの男は名乗りもせず説明を続ける。

「あれは俺が倒さなければならない相手なんだ ちょっとした宿題でね皆さんはボーデンさんの所へ急いで欲しい 彼は今、奴と戦うどころじゃないことになっててね 皆さんの助けが一秒でも早く必要だ」

「その話、信じる証拠がどこにある?お前がオルロードの手下じゃないってどうやって信じる?」

ルドの至極当然な問いに男はかぶりを振った。

「信じる信じないも自由だが、皆さんも早く駆け付けたいでしょう?勝負の行方もあるだろうが”仲間”として”友”として彼を助けたいだろう?」

「わかった ここは任せよう」

「ナディア!!大丈夫なの!?」

「信じるに値すると私は感じた ふふ、”女の勘”ってやつだな」

「またそれかよ!外したことぁねぇけどよぉ!」

「ふははははっ!ならば大丈夫だ!行こう!!」

「恩に着る 刺し違えても片付けて見せる」

「それはだめだ 事が済んだら皆を集めて祝杯をあげなければならない 必ず生き残れ」

「・・・あぁ、女王様のご命令とあらば」

ナディアはにっこりとほほ笑むと剣を塔に向け号令をかけた。

「行くぞ!自由を!勝利を!」

ボロの男は先陣を切って塔に突入した。大広間には臨戦態勢のクロイツェルが10mはあろう巨体へ力を漲らせて鎌首をもたげていた。

「フロストリッパー!さぁ、行ってくれ!!」

龍の周りを氷が埋め尽くす。注意が男に向けられたところで4人は脇を通り抜けて上階へと向かって行った。男はぶるぶると震えて歓喜の表情を浮かべた。

「ようやく ようやくだフララ、ようやく辿り着いたよ さぁともに行こう!!」

男の胸の首飾りがきらりと揺れ、淡く光る。


4人は爆音が鳴り響く1階からできる限りのスピードで離れ、最上階を目指す。平原の戦闘で出し尽くしたのか人間の戦力はもう中にはいなかった。代わりにいたのがスケルトンの群れだった。人間であればどこか傷をつければ無力化できるがスケルトンは頭をつぶさない限り無力化できない。

「厄介だ・・っな!」

バルザックが槍を薙ぎ道を開き、ルドが態勢を崩したスケルトンの頭を切り離して楽々止めを刺して行く。遠くの敵をナディアが火魔法で焼き払いルーナが回復魔法で援護した。

「連中は恐怖が無いからな 逃げも隠れもしない」

「みんな大丈夫!?回復はルーナさんにまっかせなさーい!」

順調に階段を駆け上がり第二広間に彼らは突入する。

「ん?なんだ人間・・・ということはクロイツェルは敗れたという事か 使えん奴だ」

銀色の巨躯の狼、銀狼族だ。魔法ダメージを減衰して雷を使い、その巨躯とは思えないスピードで敵を翻弄する地の牙と爪を持つ魔獣の頂点。

「馬鹿な!なぜ銀狼族が!?」

「なに、リスク分散のためだよ人間 私が死んでも人間についた銀狼族は生き残る 逆に人間が滅んだら私が生き残るだろう?」

「ふざけるな!」

「至って大真面目だよ人間 どのみち私に勝てないような連中ではお館様には勝てないでしょう?さぁおいで、相手をしてあげる」

言い終わるか否かルドが鼻っ面めがけて切りかかる。首をひねってそれを躱した狼は爪を振り抜く。そこにはバルザックが大盾を構えて待ち受けていた。

「見え見えのフェイントにかかってくれてありがとうな!」

ガチリと鈍い音を響かせて爪を止めるとその後ろからナディアが首をめがけて切りかかった。すると狼は人間の女の姿に変わり、その剣を躱して雷の魔法を打ち放つ。

「ディバイン!」

ルーナが属性耐性をあげる魔法を使うことでダメージは抑えられたがルドが被弾してしまった。

「グッ!すまん、油断した!」

「キュアライト!」

「やはり人間は面白い・・実力差のある相手でもかかってくるとは まるでゴブリンねぇ」

「馬鹿にしてんじゃねぇよ!!」

バルザックが槍で牽制するように飛び込み、立て直しのための時間を稼ぐ。

「勘違いしないで頂戴 褒めているの」

「ふん!知るか!そら!くたばれ!」

槍での追撃をいなしながら人型になった狼は的確にバルザックの攻撃の隙をついて小さく反撃していく。そこへナディアがフォローのためにサイドから切りかかる。

「威勢の良いお嬢ちゃんだこと! でも一撃が軽いわね」

二人の相手をしながら的確に隙をついて反撃を重ねる。さらにそこへ回復が終わったルドが加勢するが状況がほぼ変わらない。ルーナが加速と重撃の補助魔法をかけることでようやく互角に立ち回り始めた。

「くそ!なんて奴だ!」

「・・・!」

「そこまでの力があってなぜ奴に加担する!」

ナディアの問いかけに3人を振り払って狼が答える。

「言ったでしょう?リスク分散 お前たちもそうだろう?二手に別れて進むことで全滅を避けた それと同じだよ あぁ、それと 銀狼族は彼に創られた種族だ 皆が捨てたらかわいそうだろう?せめて私だけでも味方してやらないとね」

「・・・ならその覚悟!私の全力でお相手しよう!!」

ナディアが剣を掲げると持っていた剣が輝き、目の色が紅く、髪の色が銀色に変わった。瞬く間に狼に近づくと剣を振り下ろす。辛うじて反応した狼は右半身を後方へねじることで深手を避けたが、太ももへ無視できない傷を受けた。

「ふふ、それが貴女の奥の手かい?なかなかじゃないか!」

「長くは持たない 悔いのないように死力を尽くそう!」

狼が小さく微笑むとこれまで幾多の死線を超えてきた仲間たちが気圧されルーナが呼吸を忘れるほどの強い殺気を放った。お互いの汗が床に落ちる刹那、狼の爪がナディアの首を擦め、ナディアの剣が狼の心臓を捉えた。

「なぜ・・・ 手を止めた?」

「なんでだろうねぇ・・ なんでも良かったのかもねぇ」

狼は天井へ向けて手を伸ばした後、力を失った。

「・・・行こう 終わらせるんだ」

ナディアの悲しそうな声が3人を奮い立たせ、その場を後にした。



「四肢操陣」

名の通り四肢を操る傀儡術。本来は死霊術士が骸を操るための技だが、彼は己の体を操るために使っている。度重なる爆発で吹き飛んだ彼の手足は魔力を使うことで自由な動きを取り戻した。出血は火の魔法で傷口を焼くことで抑え、常人ならば意識を保つことすらできないであろう傷を負いながらもまだ戦っていた。彼は25歳から前の記憶がない。それでもやらなければならない事の為にここまで生き抜いた。改造生物兵器塵龍(じんりゅう)の破壊という最愛の人のやり残し。塵龍は己の体を文字通り塵にすることで粉塵爆発を起こす。元々はおとなしいドラゴンだが、改造によって凶暴に、生物としての枠を離れたものになってしまった。体の中にある核を破壊することで殺すことができるのだが、その核は体内を移動しており、破壊することは難しい。彼はそのことを知っていたが約束のため戦いに身を投じた。勝機は五分、対策を知らなければ確実に負けてしまうが制作者の記録を発見した彼はそこに掛けていた。それは最大威力の爆発時には爆発の中心に核が移動してくること。敵に気づかれないように湿気を作るのにだいぶ苦労した。そうすることで最大威力を誘い込み、自らが持つ最大威力魔法を打ち込む腹積もりだ。思った通り粉塵を作りにくくなった塵龍は最大威力の爆発を起こすべく体を変容させていく。

「アイスランス」

一発目はわざと見当違いな場所に当てることで注意を引き、確実に誘い込む。

「グラッドフリーズ!」

超重量の氷の塊が塵龍の核を押しつぶした瞬間に最大威力の爆発が起き、辺りを爆風が襲う。後に残ったのは構造を支える柱だけであった。



「今の振動は!?」

「わからないが今は進むよりないだろう?」

「・・・そうだな」

狼を倒した後は静かなものでスケルトンの大群も現れていない。ただ、階を重ねるごとに強くなる魔力に皆不安が募っていた。

「間に合わなかったなんてないよな・・」

「俺たちが不安になってどうする?ボーデンを信じるしかないだろ!」

「そうだよ!バルザックのビビり!へたれ!」

「あぁん!?」

「よさないか!大丈夫だ ボーデンは負けない!」

ナディアの言葉に一同が黙る。一番気が気でないのは彼女であった。異常な世界を救うために命を懸けた彼を、最も長く見守ってきたのは彼女だったからだ。

「あ、あれが最後の扉じゃない!?」

ルーナが指さす方向に一際豪奢な扉があった。

「皆、いよいよ本番だ!行こう!」

ナディアの掛け声に全員が頷き、勢いよく扉を開けた。その瞬間扉のすぐそばに何かが猛スピードで激突した。

「な、なんだ!?」

「ボーデン!!?」

「キュアライト!」

それはつぎはぎの体からは血が噴き出して息も絶え絶えのボーデンだった。ルーナが慌てて回復魔法を連続で使用しているが回復が追いつかない。

「ふむ 人間の代表者諸君、歓迎しよう 私がオルロードと呼ばれるものだ」

「貴様!」

「血気盛んなことは良いことだ そこの男も存外楽しませてくれるが、どうも壊れてしまったようでな 退屈していたのだ」

「この」

「落ち着けナディア!挑発に乗るな!!」

「ふむ、良い女だ 飼ってやってもいいぞ?なにぶん暇でな 戦争を起こしても心躍るような闘争は近々見ていない」

「貴様!貴様ぁぁぁあー!!」

「クソ!ルド行くぞ!」

「言われなくても!」

飛び掛かっていったナディアをフォローするためにバルザックがオルロードの足を狙う。だが、当たる刹那、彼の槍を踏み動きを止める。ルドとナディアが左右から一撃を入れたがそれぞれの剣を指でつまんで押し返す。

「ばっ馬鹿な!」

「ほら、3秒あげよう 次を考えなさい」

「!」

びくともしないオルロードはルドの剣を弾きがら空きになった横腹に左手で突きをいれ、そのまま横に薙いでナディアを吹き飛ばしバルザックを蹴飛ばした。顔面に一撃を食らったバルザックは顎が折れて入り口まで転がった。

「どうした勇者諸君 君たちの覚悟はその程度だったのか?」

ゆっくりと入り口に近づくオルロードは無表情のまま語る。

「私は今まで自ら神を名乗ったことはない 貴様らが勝手にそう呼んだだけだ 先を示し、技術を与え、恩恵を、愛を!全てを与えた!だが貴様らは何がしたい?考えが違うなら離れれば良いものをなぜ相手を排除する?それが人間?下らん!」

ルーナがバルザックを回復しているが傷が深くすぐに立ち上がれない。回復を待つようにオルロードはまた語り出した。

「私が偽りの神だと?お前たちは本当の神を知らんのにどうしてそんなことが言える!奴の方が余程質が悪い!私がやっているのはあいつを楽しませるただの余興だ・・・実に下らん!貴様らにわかるか?何百、何千!終わらぬ人生程苦痛なものは無い!下らんこの世界など滅ぼして奴の吠え面を拝むことが私の救いなのだ!!」

「うっぐ・・・そんなことは・・させない!」

ナディアの瞳と髪の色がかわり、一気に接近して切りかかる。しかし、オルロードは左人差し指だけでその剣戟をいなして一歩も後ろに引かない。

「本当にいい女だ どうだ世界が滅ぶまで私の横にいないか?」

「断る!!」

ナディアは胸当てを打ち抜かれて壁まで飛ばされた。

「さっきからふらふらと飛び回るのが好きなのか?」

壁と激突する前に腹に手刀を受けてナディアは地面に転がった。少し遅れてルドが背中に切りかかるが振り向きざまの一撃で左肩が砕けてその場に叩きつけられた。

「あぁ、あぁあ・・・!」

一方的な、最早戦闘とは呼べない暴力にルーナが取り乱す。

「そんなに怯えて可哀そうに・・・ すぐに」

「うらぁぁあああ!!!」

ルーナに急接近してきたオルロードにバルザックが大盾で応戦する。しかし、一撃で大盾がはじけ飛び持っていた左手が砕ける。

「オォォオオオバアァアレエェェェェブ!!」

「バルザック!!」

ルーナの悲鳴にも似た声が響いた。



デン  ・・ボーデン!起きろよボーデン!

「・・・バルザックか?」

すまねぇ、やられちまった!もっと行けると思ったんだけどなー

「どういうことだ?」

お前がのびてる間に皆で突入したんだけどな あいつ強すぎだろ!

「なんっ!来るなって言っただろう!?」

ハッ!お前ひとりで行かせる訳ないだろ?ま、俺はもうここで終わりだ けど、思いは連れてってくれ!皆をよろしく頼むぞ?特にルーナ!よろしくな!

「待て!待ってくれ!!バルザック!!」




「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!」

それはナディアの心臓をオルロードが貫く瞬間だった。起き上がったボーデンはオルロードの指が届く前にその右手を切り落とした。そのままの勢いでナディアを持っている左手も刈り取ろうとしたが僅かに届かずオルロードは後ろにとんだ。

「ふむ、遅いお目覚めだな 残念だが君の仲間は虫の息だ あぁ、一人は勝手に自滅していたな」

オルロードが話している間に切り取った右腕が再生した。

「グゥオ!オアァア・・ゴアああぁぁぁ!!!!」

「言葉も失ったか どれ、処分して」

言い終わる前にボーデンの左の拳がオルロードの胸を貫く。想定外の速度に回避できなかった彼は後ろに引こうと力を入れたが背骨を掴まれて離れることができない。

「オオオオォォォォォォ!!!」

追撃で右の拳が彼の心臓を貫き盛大に出血して辺りを紅く染め上げていく。そのまま回転しながら壁に向かって投げつけた。

「ははははは!それでこそ!それでこそだ!!」

傷の修復が終わったオルロードは大きな笑い声をあげて足へ渾身の力を込めて飛ぶ。しかし、軌道を読んでいたボーデンの一撃で床へめり込んだ。

「!?」

「ヲオオオォォォォ!!!!!」

そのまま連打連打連打連打連打でオルロードの上半身が無くなるまでボーデンは殴り続けた。



「ボー・・デン?」

ナディアが目覚めたのはオルロードの原型が無くなった時だった。そこには残骸を踏みつぶしナディアの声に反応した獣の様な何かがいた。

「ボーデン・・貴方でしょう?」

「クゥゥゥウヲオオオォォォォ!!!!!」

狼から受けた殺気などぬるま湯だったかの様な強烈なプレッシャーでナディアは固まった。ルドとルーナは重症のまま気を失って逃げることができない。ナディア本人も両足が折れて立つこともままならない状態だ。

「ボーデン・・・私はあなたの手で死ぬなら構わない・・・でも!貴方でないなら話は別だ!!目を覚ましてくれ!!!」

「ギャァオッギィィィアアァァアア!」

ボーデンは右手を高く振り上げて勢いよく振り下ろした。最早これまでと目を閉じたナディアだったが、いつまで経っても痛みは来ない。恐る恐る目を開けるとそこには自らの手で心臓をくりぬいたボーデンの姿があった。

「何を!何をっ!!」

這いずってボーデンに手を伸ばしてナディアは縋り付く。

「ありがとう きみのおかげで ひととして しぬことができる あぁ、ばるざっくに おこられるな」

そう言い残すと心臓を握りつぶして彼は旅立っていった。



その後彼女はアーティリア帝国をより大きく豊かで自由な国へと導き、終生独身を貫いた。

ちなみに粉微塵になったオルロードの魂が人に辿り着き魔人になりました。ボーデンの固有スキル”連鎖の解放”はアリアが付けたもので、オルロードの再生能力を著しく低下させるものでした。副産物として隷化の効果を打ち消すことができました。ルーナは戦いの後ナディアの腹心として働き、子宝に恵まれます。ルドはルーナと結婚して育児に専念しました。二人ともバルザックの事を大変慕っていたため傷の舐めあいで仲良くなりました。ちなみに長男の名前がバルザックです。慕っていたというか愛していたというか最早怖い。

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