響き
なんとなく見上げた空に
帰りそびれた薄い月
燦々とふりそそぐ夏の光
太陽に向かって、ぐんぐんと背を伸ばすヒマワリは
こぼれ種で自然に生えた去年の忘れ物。
「抜くなよ!」
「もうすぐ咲いてやるから、」
「元気がでるぞー」
「俺を見れば、」
人間さまの不調を幸いに
剪定を免れた紫陽花は、
輝く初夏の木漏れ日を浴びて
きままに枝を四方に伸ばし
わたしの背丈をも超えて生きいきと、
どの枝にも誇らしげに花芽を抱いている。
「あら、悪いわね…」
「今年は自由にさせてもらったわ。」
「ふふふ(笑)」
7月、故郷の丘一面を紫色に染めて
さわやかな風に咲く花は、
そのきらめきをあますことなく
長い冬を耐え歓びを謳歌する。
夏の日射しの移ろいのなか
いつ訪れるとも定まらぬ雨水の恵みを根に蓄え
真夏の灼熱さえも味方にして生き抜くラベンダー。
「夏は短いからね…」
「大切なものを見極めて」
「生きたいように生きなさい」
「心をきたえて生きなさい。」
濃厚な香りをただよわす野のユリは
繊細ですらりとした立ち姿に似合わず
たくましくて強い。
弱そうなのに強いのだ。
やさしく、熱く、しなやかに…
「惑わされちゃ駄目よ…」
「わたしにも、恋人とよべる人がいた」
「ずっとずっと昔のことだけど…」
短い夏を慈しむかのように
花たちが澄んだ風にゆれている。