心無い一言
やあ、よく来たね○○君。
君がここに来るのは実に数ヶ月ぶりといったところかな?
なに、その気になれば秒数まで詳細に言う事が出来るが言ってほしいのかね?お互い面倒だしその判断はとても賢明なものだと僕は思うよ。
今日は何をしにきたのかな?
前回のように誰もしたことのない遊びを考えて一緒に遊ぶかい?それともその前のように喧嘩でもしてみるかい?
ああ、すまない。流石にそれは冗談だ。
僕も暴力というものはあまり好まないから殴りあうような喧嘩は苦手なんだ。
そんなに顔を赤くして怒らなくてもいいじゃないか。
なあに、僕は君の事は大体分かるんだ。
今日来たのは君が反応して怒った暴力という単語に関することだろう?
驚いた顔をしているところ申し訳ないが君は感情がすぐに顔にでるから非常に分かりやすいんだ。うん?これは前も言った気がするな。まあいい、ちょっと待っててくれ。きっと話は少し長くなるのだろう?飲み物とお茶請けを持ってくるよ。
さあ悩める若人よ、汝の話を聞かせたまえ。
・・・ごめん。少し悪ふざけをしてしまった。
僕は真面目に聞いているつもりなのだけどね。こういうものだと思って諦めてもらうほかないんじゃないかな。僕も君の自分の思ったことを素直に言うところは好ましく思うと同時に鬱陶しく思っているからね。たとえそれが僕限定のものであるとしてもね。
ははは、君が怒っているときの顔色は実に庭に生っているトマトのようだ。
痛っ!何も叩くことはないじゃないか!
こっちは真面目な話になりそうだから少し高い茶葉でお茶を入れたんだぞ!え?いくらかって?一杯当たり三百円ぐらいにはなるんじゃないかな。
いや、謝ることはないさ。僕も少し君を弄りすぎた。
すまないね、君の相談だがおそらく周囲に弄られているのが嫌なのだろう?まあ、要するにいじめに関する相談だろう?
ふむ、やはりそうかそれでは詳しく聞くこととしよう。
ふむ・・・なるほど。
いじめに関してはどうにもならないから徹底的に抵抗することにしたのか。
それが君の決めた道なら僕はそれを全力で応援しよう。ただ、潰れてしまう前に相談に来てくれ。愚痴やストレスの発散に付き合うからさ。
なあに、気にするな。潰れて自殺されてしまうほうが困ってしまう。こんな僕と会話をしてくれるのは君ぐらい名ものだからね。寂しくて泣いてしまうよ。
君は今僕に色々と言ってここに来た時よりも大変スッキリした顔をしている。実に良いことだ。
だけどね、君の中にはまだ疑問に思っていることがあるはずだよね?差し支えなければ教えてくれないかい?
ふふふ、上手く隠した気になったようだがバレバレさ。
君は隠し事をしているとき僕と視線を全く合わせようとしないからね。
・・・くっくっく、アッハッハッハッハ!冗談だよ。まあ見事に引っかかってくれたみたいだけどね。
あ、待って、流石にそれで殴られたら死んじゃうから。落ち着こう、ね?
はあ、命の危険を感じたよ。
自業自得だって?何も言い返せなくて笑いが止まらないね。
でも悩み事は口にしてくれないと分からないよ。僕は想像力は豊かだけど正確な情報までは分からないからね。
・・・うん。・・・うん。
なるほどね。君も最初は家族に相談したんだね。そしたら「いじめられる人にも原因がある」と言われたんだね。
なるほどなるほど、確かにそれは一理あるね。
まあ、たとえそれでも僕はその言い分は認めないけどね。
最初のきっかけは確かにいじめられる側に原因があるのだろう。だが、その原因だって全てが悪いわけじゃないはずだ。
純粋にスクールカーストの上位陣の悪口を言ったからいじめられたのかもしれない、急いでいるときにぶつかってしまい、ちゃんと謝らなかったからいじめられたのかもしれない、他のいじめを受けている人を庇ったらいじめの対象になってしまったかもしれない。
まあ、二つ目の奴は相手が小さすぎる気がするけどね。
このように色々な理由があり、さらに細分化出来てしまう。今は極端かもしれないがこれだけとしておこう。
明らかに一ついじめられる側の落ち度ではないのがあるね。
でも君が親に言われたそれはただの大人の客観的な意見でしかないからそんなに気にすることは無いだろうね。むしろそれに固執するような奴はいじめを受けたことが無いんじゃないかね。
所詮これも僕の主観的な意見に過ぎないからそうじゃないと言ってくる人もいるだろうけどね。
ぶっちゃけいじめを受けている人がかけて欲しい声と言うのはそんなものじゃないんだよ。
甘やかさなくていい、同意なんていらない、同情なんてものは尚更ほしいわけじゃない。ただただ理解してもらいたいだけだ。
むしろ否定を入れてお前が悪いと言って来る様な奴が被害者をさらに追い詰めていくのさ。
もちろんいじめを何とかできるのが一番だ。
けどね、確かに注意をしたその場では反省したように見えても、注意した人の見ていない場所でより激しいいじめが起こる、もしくは何も変わらず同じようないじめが続くだけだね。
それでいじめを受ける人は察するんだ。
「大人に頼っても何も変わらない。自分の立ち位置は何をどうしようとも変わらない」とね。
さて、君は立ち向かうことを選んだからいう必要は無いかもしれないけど一応言っておこう。
いじめを受ける人間の最終逃避手段である自殺だけど、それをしても相手は何も反省はしないよ。
何でかって?根本的な問題さ。
相手には罪の意識なんてものは何も無いんだから。
遊び感覚で、ゲームのように、玩具で遊ぶ子供のように、ただただ自分の行っている行為と相手の反応が面白いから続けるんだ。
君は小さい頃虫などに残酷な行為をしたことはあるかい?
僕はしたことある。
何をしていたかって?今は話が逸れてしまうから話さないでおくよ。
ともかく、繰り返す形になるけど逃避することで相手に反省を促しても意味はない。
僕はどうしたかって?
おいおい、何で僕がいじめられた前提なんだい?
詳しすぎる?理解がありすぎる?
だ~か~ら~、僕は君の事を・・・そうか、そうだよな。
僕が君の事をなんとなく察せるように、君も僕の事をなんとなく察せるか。付き合い長いからな。
ああ、そうだよ。
僕も学生の頃いじめを受けていた。
なあに、君みたいに立ち向かうとかそんなことを一切しなかった。ただの臆病者さ。
・・・いや、臆病者ですらなかった。
聞きたいかい?
いや、別に話すのが嫌だとかじゃないんだよ。なんせ今の改めて考えると笑い話に出来る程度の軽いものだったからね。
君のがどれだけ酷いのかは判らないけど、こういうのは比べてはいけないと思うんだよね。
不幸自慢がしたいんなら同じようにやりたい人とワイワイ楽しくすればいい。
本気で考えている人の前でしてもらいたくはないよね。
うん。理解してくれて嬉しいよ。
ハッハッハ、素敵な視線をありがとう。
もう一時間ほどされてしまったら興奮してしまうかもしれないな。
・・・流石に今の行動はとても傷ついた。もう寝てしまおうか。
ハイハイ、自業自得自業自得。
話を戻そうか。
君は立ち向かうと言ったね。
それは立ち向かえなかった僕からしたら嫉妬すら覚えてしまうくらい勇敢で素敵な考えだが、どう反撃するか考えているかい?
やり方によっては一網打尽できるかもしれないが、対応を間違えてしまうとさらに泥沼になったり余計な恨みを買ってしまうかもしれないよ。いや、むしろその可能性の方が圧倒的に高いね。
そのことを理解しているかい?
うん、そうか。
否定しないのかだって?
おいおい、さっき言ったことをもう忘れてしまったのかい。
僕は君が自分で決めた道だったら全力で応援し続けると決めているんだぜ?
まあ、その、あれだ。頑張りたまえ。
おっと、そろそろ帰らなくてはいけない時間だろう。早く帰らないと家の人も心配するだろう?
なあに、毎回言っているから耳にタコが出来ているかもしれないけど今回も言わせて貰う。
僕はいつだってここにいる。だから君が会いたいと願えばいつでも会える。
それではまた。よい日常を・・・。