怨霊化しかけの少女
この作品を開いてくれてありがとうございます!
前回、いい感じに終わりましたがまだまだ続きます
あの狸に出会ってから3日が過ぎた。未だに狸の正体はわからないし、あれから全然見ていない。
そんな事は全く気にせず今街を歩いている私の目には、眼帯が付いている。
そう、最近魂を喰ってなかったから、赤黒く変色してしまったのだ。
早く魂喰って戻さないとな…
そう思いながら八千代さんと二人で怨霊を捜しているが、なかなかいないな…
「さとちゃん、彼女なんてどうだい?」
突然八千代さんが指さしたのは、ある家の前に立っている少女だった。でも…
「まだ完全に怨霊になってねぇっすよ。まだ助かるかも…」
そう言うと八千代さんはなぜかふふっと笑った。
「?なんで笑うんすか?」
「いやあ…さとちゃんは優しいね。自分の目を治す事よりも、助かるかわからない彼女の魂を選ぶなんて」
そう言われて顔が赤くなったのは自分でもわかった。
「うるさいなっ。でも助かりそうにないな、あれじゃ」
でもあいつ、なんであの家見つめてんだ?未練でもあるのか?
…ああ、駄目だ駄目!この世に未練のある幽霊を成仏させる仕事は、あいつらに任せておけば…そんなん私には向いてない!
でも…まだ完全に怨霊化するまでに時間かかりそうだし…うまくいけば、成仏する時にあいつの魂貰えるかもだし…
「っああ!ごちゃごちゃ考えるなんて性に合わない!八千代さん!こっからは私一人でやります!」
八千代さんの返事も待たずに私は走り出した。
「おい!お前!」
私が声をかけるとそいつは飛び上がって驚いた。どうして私が見えるの?とでも言うみたいに。
「私は生まれつきそっち系のもんが見えるんだよ」
そう説明するとそいつはやっと納得してくれた。
「…それで?この家になんか未練でもあるのか?だから怨霊になりそうな今でもここにいるんだろ?」
「………うん」
イライラするほど長い間の後、そいつは答えた。
「…なあ、取引しないか?」
「え?…取引?」
突然の事で困ってるそいつに…って、そいつそいつってもうめんどいわ!!
「っていうかお前、名前なんだ?」
また長い間を空けて答えた。
「…苗字は忘れた。名前は凛」
「凛か…。で、凛!改めて、私と取引しないか?」
「…どんなのか説明してくれないと、わからない」
力のこもってない声でそう言われると、こっちまで力が抜けてくるな…。
「私がお前の未練を無くしてやる。だからお前は成仏する時に、私に魂をよこせ」
そう言いながら眼帯の下を見せると、凛はすぐに理解してくれた。
「あなたが霊界で噂の、キラ…さん?」
「は?」
キラ?キラって何?え…死神的なあれ?
え?
私が困惑してると、凛が遠慮がちに教えてくれた。
「身体に宿った悪魔の力を借りて魂を狩る死神、キラだって」
Oh…マジデスカ…知らない間にそんな異名が…
「それはいいとして」
置いとかれた!?私結構衝撃受けてるんですけど!?
「本当に、未練を解決してくれるの?」
凛の目はさっきと違って、期待に溢れていた。
「ああ、まかせろ!じゃあ取引成立だな?」
私は凛に握手を求めた。凛は私の手に触れようとしたが、霊体だからすり抜けてしまう。だが凛がすり抜けた私の右手は、暖かい空気に包まれた気がした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回は凛の過去の話です