謎の狸
さとちゃんが最近ハマってることは将棋です。じじいかよ。
茂みから出てきた予想外の生き物。
狸。
『わしの姿が見える人間なんて久しぶりに見たわい。』
そう言って狸は私の肩を笑いながら叩いた。
…ちょっと待て。状況についていけてないのは私だけか?突然なんだこの狸は。
「そなた、もののけではないか?」
ずっと黙ってた八千代さんが、突然口を開いた。
「はい?」
もののけって何?ジ○リのあれか?随分しょぼいんだな…
『しょぼいとはなんだ。お前さん』
「っ!?え、今私声に…!?」
出てなかったよな?てことはまさかこいつ、心の声を聞いたってことか!?
また突然、八千代さんが笑い出した。
「びっくりしてるね、さとちゃん。実はこの方はこう見えて、人の心を読む能力を持つ神様、もののけ様なんだよ」
「もののけ…様」
うわこいつのドヤ顔腹立つな。俺すごいんだよ的な目しやがって。
『腹立つってお前さんさっきから酷くはないか?』
「そうだよさとちゃん。もののけはこの地域では一番偉い神様なんだ」
「そうなんだ…」
『そうだぞ。もっと敬いたまえ?ぎしゃしゃしゃ。』
なんだこいつ!
「笑い方キモ!」
心を読まれてるならもういい。遠慮なく声に出してやる。
「あはは…」
さすがの八千代さんも苦笑いしかできないみたいだ。
『ところでお前さん』
ふいに狸…もののけ様が私に話しかけてきた。
「なんだ?」
『名を何という』
「は?名前?なんだよいきなりすぎるだろ」
頭の上に?マークがたくさん浮かんでいる私に対して、もののけ様は真剣な表情をしていた。
「…佐藤、花子だけど。それがなんだ?」
『なっ…』
もののけ様の表情がみるみる変わっていく。驚きと、恐怖が入り混じったような顔…
なんだよ一体…?
『じゃあお前さんまさか…佐藤、百合子の娘…か?』
「…は?」
母さんだ。私の母さんがなんだってんだ?
…正直母さんは嫌いだ。もう何年も会ってないし、たまに帰ってきたと思ったらいつも意味不明なことを言って私を殴る。
ああもう、嫌なこと思い出しちゃった。
ぼんっ!!
何?今度は何?
「消えた…?」
さっきまでここにいたもののけ様が、煙と共に姿を消してしまった。
八千代さんは主人公と違って言葉遣いが綺麗ですよね。