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女神様

頭を空っぽにしてまったり読める系が目標です。

生活に支障がない程度に更新するので、更新頻度低めの文章量少なめになると思います。

 気が付いたら俺は、真っ白い空間の中にいた。ネットの小説とか、ラノベとかで、よく見かけるアレである。



 週末だし、1人でパーッと家で飲んで過ごそうと、家の近くにある地元密着型のスーパーで、惣菜とか、ポテチとか、その他諸々を色々買い込むために、仕事の帰り道をウキウキと歩いていたはずだ。

 その帰り道に、こんな不思議空間が存在するなんて事はないし、そんなものあってたまるかと思う。

 けど、現実問題として、ネットの小説とか、ラノベでよく見かける不思議空間に俺は居る。

 その小説やらラノベやらの話になるけど、この真っ白い場所っていうのは大体が、魔法で召喚されたりなんだりで、現代日本とは異なる世界、いわゆる異世界とやらにぶち込まれる前段階なのだ。

 何でこんな事を知ってるのかと言うと、俺もそういった類のネットの小説とか、ラノベとかを趣味で読んでいたからだ。だから、こうして冷静に、現在の状況を確認することができるのだ。読んでて良かったネット小説。

 そんな俺のバイブル(ラノベ)によると、そろそろ、俺をこの状況に置いた者と対面することになるはずだ。例えば、神様とか女神様とか、そんな感じのすごーくえらい人(?)だ。

 というわけで、ちょっと待ってみると…。


「この様な場所にお呼びたてしてしまい、申し訳ありません。私、別の世界で女神をやっている者でして…」


 ほらね。いらっしゃいました。俺の場合は、見目麗しい、ちょっとばかりぽやっとした女神様でした。


「いえいえ、とんでもございません」


 すごく丁寧な挨拶を頂いたので、日本社会に生きる者として、こちらも丁寧に返事を返す。

 お互いにぺこぺこと頭を下げ、ひと段落した所で、女神様は「あの…」と切り出してきた。


「実は、あなたにお願いがあるんです…」


 きた。王道のパターン。何が王道なのかというと、俺の知識の宝庫(ネット小説)によると、大体のパターンはこうだ。

 世界が魔王でヤバい、ピンチ。そうだ、別の世界(地球)から人材を召喚しよう!そのまま放り込んだら、そいつすぐ死んじゃうし、適当な力を与えて後は丸投げしよう←今ココ

 こんな感じで、恐らく、この女神様は異世界のピンチを救う人材として俺を選び、なんかスゴイ能力を与えて、問題の解決に当たらせようというわけだ。すごくワクワクする。


「どの様なことでしょうか?」


 大体は俺の推測通りだとは思うが、社会人として、何も聞かずに安請合いはできない。仕事内容の把握は、社会人としては重要なことであるからにして。


「はい。実は、私が管理する世界から、あなたが住んでいる世界に、1人、人を寄越すことになりまして」


 逆だった。え、なに、日本というか、地球ヤバいの?滅亡の危機に瀕する地球を異世界人に救ってもらうパターン?新しいパターンだ。やだ怖い。ワクワクが吹き飛んだ。

 とにかく、新しい情報が欲しい。聞いてみよう。


「え、あの、もしかして地球ヤバいんすか?」


 思わず素が出てしまって、しかも要領を得にくい発言をしてしまった俺を、誰が責められようか。だって地球がヤバいんだぞ。


「え? いえ、そんなことはありませんよ」


 ヤバくなかった。俺は心から安心したが、女神様は怪訝そうな顔をしてる。いきなり地球の安否について聞かれでもしたらそうなるよね。俺でもそうなる。


「続けてもよろしいですか?」


「あ、どうぞ」


 深くツッコまれなくて良かった。話を遮ってすみません。


「転移元の世界は、地球ほどの文明を持っておりません。ですので、地球の文明に慣れるまで、その人を保護する人が必要かと思いまして」


「ふむふむ」


「そこで、白羽の矢が立ったのが、あなたなのです!」


 びしっ!と、片手を腰に手を当てながら俺を指差す女神様。

 というか、何で俺なんだろうか。


「えっと、俺以外にも相応しい人がいると思うんですが」


 人を一人、面倒見ると言うことは、結構な金が掛かる。かつ、保護者だか後見人だかになるってことは、面倒見もよくないとダメってことだ。

 だけど、そんな人材は日本にも結構な人数がいそうなものである。むしろ、世界中を探せばわんさかいることだろう。だからこそ、なんで俺なんだろうか。いや、一人の面倒見るくらいの金も、心の余裕も、あるにはあるけど。


「厳正な審査の結果です。この人に託せば、問題がないだろうという人が、あなただったんです」


 なんか、ぼやかされた気がするけど、これ以上聞いても答えてくれないだろうな。


「後は、この空間を見てもビックリしない人っていうのも、判断の一つでした。スムーズに話を進めたかったので」


 なるほど。ネット小説読み漁っただけあって、俺は殆ど動揺もしなかったからね。ホントだよ。

 しかし、人を受け入れるにあたって、幾つか問題がある。


「ちなみに、戸籍とかってどうなります?」


 身分証明書もない、戸籍もないじゃ、密入国を疑われたって仕方がない。あからさまな外国人顔した人間を匿って逮捕とか怖すぎる。いや、モンゴロイドな異世界人が来る可能性だって、あるにはあるのか。それはそれで、なんだかなぁ。


「その辺りは問題ありません。戸籍作成や、あなたの扶養にいれる事等の諸々の許可は、地球の管理者に事前に取ってあります」


 すごい。心配のタネを事前に取り除くなんて。この女神様仕事ができる。

 腰に両手を当てて自慢気だが、素直に称賛できる。すごい。しかし扶養云々は俺に許可を求めるべきじゃなかろうか。特には問題ないけど。


「その他、調整が必要なところも色々あるのですが、あなたに迷惑が掛からないようにします。すごく簡単ですが、説明は以上です。後は、あなたの許可が降りれば、なんですが」


 そう言って、俺を伺う様に見てくる女神様。

 ここまでお膳立てされて断るのもなあ、と考える。何より、楽しそうじゃん。一人の生活は気楽だけど、少し寂しいし。寂しさを紛らわす手段として、最近、ウサギでも飼おうかと思ってたくらいだ。

 幸いにも、俺の現在の家は2LDKで、一部屋持て余してたところだ。受け入れるだけの余裕はある。

 そこら辺も、女神様がさっき言ってた厳正な審査とやらに含まれてたんだろうな。

 となれば、決まったも同然だ。


「俺で良ければ、お受けします」


 俺の言葉を聞いた女神様の表情が、ぱあっと華やいだ。


「良かったです! これで安心して、私の世界から送り出す事ができます」


 女神様は心底ホッとしたようで、眼の端には薄っすらと涙が溜まって見えた。

 女神様にとっては、その世界に住む人々は自分の子も同然なんだろうな。ええ女神様や。


「今後もできる限りのサポートを行いますので、よろしくお願いしますね」


 アフターサービスもバッチリなようで、すごく仕事のできる女神様だし、安心感が半端ない。素敵な笑顔ですごくドキドキします。営業のセンスも半端ない。


「ところで、今回の依頼をお受け頂いたあなたに、特典があるのです」


 特典?ほほう、何がもらえるんだろうか。


「あなたの願い事を2つだけ、可能な限り叶える、という特典です」


「2つも?」


 願い事が1つ叶うだけでも十分だと思うのに、2つも叶えてもらえるなんて。とりあえず宝クジに当たりたい。


「はい。本来なら1つだけの予定でした。これから、あなた達の世界へと送り出す人物に餞別として、1つ願い事を叶えることを話したら『これからお世話になる人の為に、それは譲る』と」


 やっぱり宝クジはナシで!

 なんだか、私利私欲に塗れて、俺がゲスな人間に思えてきた。その身一つで日本に来る奴が、無欲にも俺の為に願い事を譲るような事をするんだ。ちょっと恥じるべきだろこれ。

 せめて1つは、相手の為になるような事がしたい。


「願い事って、今すぐ決めないとダメですか?」


 俺にしては、えらく真剣に聞いたと思う。そんな俺に、女神様は優しく微笑みながら答えてくれた。


「いいえ。ゆっくりと決めてくださって結構ですよ。この後、あなたを現実世界に戻しますが、願い事が決まりましたら呼んでくださいね」


 良かった、これで一安心だ。後はこれから来る異世界人と話して、願い事を決めればいい。


「では、明日、日本時間にして午前9時に、そちらへ転移されます。ご面倒をお掛けしますが、よろしくお願いします」


 そう言うと、女神様は深々とお辞儀をした。俺もお返しにお辞儀をして顔を上げると、微笑む女神様と目があった。

 次第に真っ白だった空間が、アスファルトの地面や建物といったものに置き換わっていく。そこは見慣れた通勤路で、女神様の姿はもうなかった。

 宅飲みは中止にして、弁当だけ買って食べて、俺は明日に備えた。

 

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