5ショートストーリーズ2 その1【神様のオセロ】
生まれつき色白な男は色黒に憧れていた。ある日男は、左ひじに黒子が二つあることに気づいたが…
男の一家はみな色白だった。彼の母親はよく言っていたものだ。
「色の白いは七難隠す。お前が女の子だったら良かったのにね」
子供の頃は意味が分からず、それを訊ねると
「色白の子は多少造りに難があっても、それを補って美しく見える
ものなのよ」
そう笑った。
男は成長しても色白のままだった。子供の頃から陽に焼けても、
赤くなってすぐに元の色に戻ってしまうのだ。
女にはモテた方だろう。元来優しくおとなしい性格だったし、色
黒の粗野な男子とは一味違って見える、それが一番の理由だったの
かもしれない。
情にも厚いので、男子にも友達は多かった。
「おまえ、優男の癖に、いいヤツじゃん!」
彼の人となりを知ると、友人達はみな口を揃えてそう言った。
そんな彼が密かに憧れていたのは、色黒だった。人は昔から無い
ものねだりをするものなのだ。
ある程度お金が自由になる年齢になると、日焼けサロンにも通っ
た。が、当然、皮膚にダメージを受けるだけで、医者からも禁止令
が出された。
「あ~あ、色黒になりたい。色白の男なんて弱く見えるだけだ。出
来れば黒人に生まれたかった…」
いつしか男は口癖のように、そんな事を言うまでになった。
そんなある日、男は、風呂上りに、左ひじに黒子がふたつあるの
に気がついた。それまでの男の身体は、一点の曇りも無い程に真っ
白だったから、これには驚いた。と、同時にどことなく嬉しくもあ
ったのは、彼だらかこそなのだろう。
風呂上りに黒子を見る事は、彼にとっての楽しみとなった。
その黒子が、ある日を境に数を増していった。これには彼も驚き
を隠しえず、皮膚科に相談に行った。
「う~ん、ただの黒子ですな。皮膚癌でないことは確かです。しか
し、なぜ急に数が増えたのかは分りません…」
なじみの皮膚科医が首をひねった。
「健康に害がないのならそのまま放置しても良いんですよね」
「レーザーでとることも出来ますが」
「いや、それには及びません」
「それでは念の為に、月に一度通院されるとよいでしょう」
「はい」
男は自分の安心の為にも、先生の言う通りにしようと思った。
一年後、彼の左腕は真っ黒になっていた。黒子が増えたのでそう
見えるのだろうが、内心、彼は自分の白い体が黒くなっていくこと
に喜びをも覚えていた。
「う~ん、不思議な現象です。しかし、健康には問題がないようで
すな」
「はい、体調はいいようです」
「ではまた来月」
こうしていつしか3年の月日がたった。男は身体の一部分を除い
て、全身黒子まみれになって、一見すると黒人に見えるようになっ
た。
男は満足だった。やっと自分の望み通りの身体になれたのだ。見
よ、この輝くまでに黒光りする身体を! ヘイ、ブラザーという掛
け声もこの俺の為にあるような言葉じゃないか。
そんなある日、彼は睡眠中、『やられた!』という声を聞いた。
『やったぞ、大逆転だ!これで勝負は俺の勝ちと!』
そんな声も聞こえた。
次の朝、目覚めた彼が目にしたのは、全身真っ白の彼の身体だっ
た。彼の身体は、神様のオセロの碁盤として、使われていたのだ。
神様もオセロをするんか~い!しかも人間の身体を碁盤にして!無理な設定、
無理な進行wwごめんなさい…