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学者冥利  作者: 枯木人
本編
4/15

せいえん

レビューと感想が貰えたのでもう一話行きます。

 飛行機が墜落したはずの場所に行って僕は驚くことになります。


「飛行機が……ない……?」


 墜落した場所では地面が抉れており木々も折れ、惨状が目に入っているのでほぼ間違いありません。ここが墜落した場所です。ですが現実としてその元凶となる飛行機がない……


 もしや、既に救助の手が入って……?


 仮にそうだとすると僕だけ取り残されたことになりますね……取り残されるのはいいんですがもう少し研究させてもらいたいですね。乗客リストなんかから僕のことが割り出されると捜索隊でも出動してこの世紀の大発見が広まってしまうのでしょうか? まぁその辺はその辺として、今の問題は。


「……困りましたね。これでは僕の分しかブランケットが……」


 今日、ここに来た問題はこれなのです。この前助けた童子は今日も今日とて僕に付いて来ています。帰る家はないようなのです。もしあれば誘拐犯として扱われそうなのでまた更に困るのですが……

 あ、ついでにペットのコモドンくんも付いて来ています。そう言えば彼は何を食べるのでしょう? 気になります。

 一応、お肉を与えましたが……食べてくれないんです。放し飼いにしているのでどこかで食べているのかもしれませんが……


 まぁ今はそんなこと良いのです。幼子の分のブランケット……


「まぁ、仕方ないので諦めてもらいましょう。」


 諦めましょうか。そもそもそこまで深い縁と言う訳でもありませんし……そんなことを考えられている対象である幼子は今日も僕について来ています。恐らく、迷子か孤児なのでしょう。僕も孤児でしたからそれなりに同情しておきます。


「krnfai……」

「……一向に何を言ってるのか分かりませんねぇ……どうしますか……」


 ですが、同情するのと助けるのはまた別です……言葉が通じないので一応食事と寝床を与える程度しか僕に出来ることがありません。もっと言えばこの子が迷子という証明も出来ないので誘拐犯と間違えられると困るのです。


「……弁護はしてくださいね?」

「akhoa?」

「……そう言えば、言葉が分からない時にこうやるべきみたいなのが……」


 僕の脳内に過るのは身の回りの絵を描いてそれを子どもに見させてその物の名前を言わせることで単語を覚え、ある程度したらぐちゃぐちゃに絵を描いて見せて「これ何?」と言うであろうことを予測。それによりこれは何ですか? という言葉を覚えて知っている単語を増やしていくという……


 面倒ですね。止めましょう。


「正直、僕としては植物を調べることが出来ればそれでいいので……まぁ、君には悪いですがそこまで世話を焼くなんてことはできないんですよ。僕も一介の学生という身分ですしね。」


 僕が独り言をべらべら喋っているのを不思議そうな目で見ている少女。無垢な瞳が僕を苛みますがそれに負けて自分を曲げるわけにもいきません。僕らはブランケットを諦めて森の中に帰って行きました。





「……味付けは欲しいですね……」


 その日の昼御飯中に僕はそう零します。少女は嬉しそうに魚を食べているので良いのですが……僕としては少々物足りないのです。


「ご先祖さま方の住んでいる場所の水には塩分がそれなりに含まれているみたいなので塩づくりでも開始しますか……」


 ちょうどいいことにコモドンくんがいますしね……熱いのであまり日中に火を吐いて欲しくないのですが仕方ありません。塩くらいは欲しいですから。


「えーと……まぁ色々ありますが、簡単に……ガンガンやっていきますか……」


 僕はまず手近な岩をくり抜くことから始めるのでした。





 私がご飯を食べていると目の前の人はいきなり岩をまるでねんどのようにさっくりと抉り取ってその中に水を入れるとサラマンダー様に火を吐くように言って何度も何度も水を入れては蒸発させ始めました。


 ……気でも、狂われたのでしょうか……? 水を入れても火にかけ続けたらなくなるのは当たり前だと思うのですが……それとも、何かの儀式……?


『おい、俺も疲れはするんだぞ……?』


 サラマンダー様が愚痴を言っていますが、目の前の人は理解していないようで水を足しては中を見て確認し、頷いています。


 ……暑い……でも、この場から離れていつの間にかいなくなられていたら……私は、それが怖くてこの場から動けません。言葉が分からないのは分かっていますが、一応何をしているのか尋ねてみます。


「……暇なんですかね? 水遊びでもするといいと思いますよ?」


 案の定、何を言っているのか分かりませんでした。そして困ったような顔をされ、首を傾げられて河を指さすのです。


 ……手伝えと言う意味でしょうか? そうですね。ずっとお世話になってるだけというのも心が苦しいですし、問題ですから手伝います!


 そう思って水瓶代わりにくり抜かれ、洗ってある葉っぱを敷き詰められた岩を持って川の方へと移動し始めると彼は私の方を見て息を漏らしました。どうやら、感心されている様子です。


「……おや、手伝ってくれるんですか……子どもはもっと遊んでもいいと思うんですが……まぁ、貧しい国ですと子どもはやはり労働力ですからね。ただ養われるというのも気に入らないんでしょう……」


 ……何を言ってるのか分かりませんが、今私は必死で水の入った岩を持ってます……重、重いです……


「ぅ……んっ!」

「……力む声は同じなんですねぇ……水漏れしないように頑丈に分厚い岩で作っているので落として足の指とかが潰れそうなので怖いですが。」

『じゃあ手伝ってやれよ。』

『サラマンダー様……ご心配ありがとうございます……ですが、これは私がやるので……』


 男の人が何と言ったのかは分かりませんが、サラマンダー様が呆れ口調でそう言うので、私は止めて自力で運びます。そして頑張って水を運ぶと男の人は褒めてくれたようです。


「ありがとう。でも、もういいですよ? 遊んできてください。」


 ……水辺を指さしています。もう一度水を運んでほしいのでしょう。私、頑張りますからまた褒めてくださいね! 




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