コモドンと出会います
探検を続けるための拠点を作ろうとしていると僕は更なる大発見をしてしまいました。
なんと、火を吐く大きなトカゲを発見したのです! 外見はコモドオオトカゲにそっくり……なるほど、おそらくはコモドオオトカゲの近縁種だったモノが口の中に飼っていたバクテリアがメタン菌などの可燃性物質を作るものに変わってしまい、それに合わせて高温ガスを吐くことによって火を吐く……と言った感じの変化でしょうか?
強引ですかね……? いや、それでも目の前には居るのですから何らかの進化を遂げたはずでしょう。それに僕は動物学者ではないのでそんなに詳しいことは分かりません。
そう、動物学者ではないんです……が、目の前で火を吐く大っきなトカゲが居たら流石に気になります。
「気になりますね……」
コモドン(命名)と僕との間には結構距離があります。コモドンは遠くで何かを探しているようです。
こちらに来られると先程家を作るために頑張って伐った木材が燃やされてしまうかもしれないのでちょっと困りますね…
うーん……駆除するべきか……いや、研究したいですし……もしアレが希少種であったらと考えると……
そんなことを思っているとコモドンが急に動きを速めました。そして茂みにダイヴ!
「……あ、現地人発見……」
代わりに小さな子どもが茂みの中から飛び出てきました。この距離ではどんな子どもかわかりませんが、服は辛うじてわかります。
貫頭衣ですね。……ですが、毛皮ではない……少し織物をすることが出来る位の文明はちゃんとあるみたいですね……まぁ電波が通じていたので大丈夫と思っていましたが。
「tttaksuqe!」
そして……案の定何を言っているのか分かりませんでした……何語かすらも分かりません……
悲鳴だったらいいなぁ……できれば英語を……
「tttaksuqe!」
あ、こっちに来てますね。好都合です。第一現地民と接触! それと同時にコモドンに比較的弱めのキック!
コモドンは僕のキックで3メートルくらいの巨体を空中に舞い上げながら飛んで行きました……あれ? おかしいですね。それほど強く蹴ったつもりは……
まぁ過ぎたことはしょうがないですか。それは兎も角、この異国感溢れる黒髪褐色の少女に尋ねましょう。
「えっと…Can you speak English?」
反応なし……無理です。僕にはこれ以上この子と話をすることは不可能だとわかりました。諦めましょう。
「kkydrkwoxshika?」
何か訊いてますが、とりあえず何を言っているのか全く分からないので放置することにします。
家を作ることで忙しいのです。言葉が全く分からないのが分かった今、僕に取れる手段は救助が来るまで自分の力で生きていくこと。
目下、近くの木を切り倒し、何か、ハイテクという不思議な携帯機能で木を乾燥させて合板などの木材を揃えて軸組造式の立派なお家を創り上げることに忙しいです。
その際には流石に心配だったので先生に図面をめーるという文書の機能で写メという何か不思議な情報を付与したの物を送り、直されました。
「建築舐めてんのか?」と怒られましたが、訂正した図面と乾燥が不十分だから背割りをして木材を組み直せとの指示をくれた先生に感謝です。
そして現在、やり直しになった僕は非常に忙しい。今やっと探索途中で見つけた岩場から切り出した土台で定礎から束石を一纏めで造り、アンカーを作って基礎工事を終えました。
また、思いの外、火打梁と言うものが必要なので今日中にお家に住みたい僕としては頑張らないといけないのです。
なので、少女のことは放置気味にしているのですが間柱と筋違を立てる頃になっても少女は変な顔をしてそこにいて首を傾げています。
仕方がないので手を止めて取り敢えず、お家へお帰りとメッセージを……喋れませんから……ジェスチャーで。
まずは僕の途中完成の木の家を指して、家を想像してもらいます。次に歩く動作を見せて家に行くと言うことをイメージしてもらいます。最後に首を傾げてわかった? と伝えれば……少女は頷いてくれました。
うんうん。分かってもらえましたよ。えぇ。では僕は全てを組み上げた後に石釘で合板の壁を柱に打ち込みつつ内装を始めますか。
しばらくして、小屋が出来ました。
今の所、家具は取り敢えず必要かなと思った丸太をぶつ切りにした椅子とそれを並べたベッドしかないですけど……立派な住居を作り上げて見せます!
そう意気込んで家に進むとおずおずと少女が付いてきました。……こっちの方に家があるんですかね?
まぁこれ以上の接触は意味もないですし、手を振っておきます。すると悩んでいたように見える少女が顔を明るくして足取り確かに歩き始めました。
……僕の家に向かって。
「……何をしてるんですかね?迷子……かな?」
「Я жертвoпринoшение……Пoмoгите!」
何言ってるのか皆目見当もつきません。僕の様子を見てまた何か言った少女もどことなく悲しげな顔で首を振りました。
「……kkpuria…………」
「うん。わかりません。」
でも、お腹が鳴っていることは分かります。「僕らのご先祖様」の残りでしたらまだありましたよね……
取り敢えずジェスチャーをしましょう。お腹を抑える。口に何か持って行く動作。家。……分かりましたかね? あ、笑顔です。分かったみたいですね。
……にしても、知らない人について行ったらダメだという時代ではないのですかね……? ああいう風潮はいつごろから生まれたんでしょうか……
僕の住んでいた場所だと僕の施設にいる子ども、幼い女の子の一団に声をかけた御老人が通りすがりのおばさんに通報されて事案になったくらい厳しい世の中になってるんですけど……
ここは平和ですね。尤も、親御さんに文句を言われたら……まぁ、異国の地で言葉も通じず釈明できるとは思えないので実力行使しますか。先生に教えてもらった技術を駆使すれば逃げられるでしょう。
「あ、勝手に家に……まぁいいですけど。」
色々と考えていると少女は僕の先を歩きだし、勝手に僕の家の中に入って行きました。しかも何だか勝手にがっかりしています。
ちょっとムッとしますよ。あの施設に居た者としてこの程度だと思われるのは何だか納得いきません。彼女の椅子くらいすぐに作り上げてやろうではありませんか。
まず、闘気を手に纏わせて手刀で木を伐り倒します。次に、土台を切り出したときの細かい結晶から成る、硬い石を手刀で斬ります。そして木を先程の石で綺麗に曲線に削って板を何枚か作ります。
木の棒を長さを揃えた状態の物を手刀で5セット作ります。手刀である程度形を整えた石を削って針状にした物を作ります。
後は組み立てます。まず四角の枠組みを作りその上に板を並べて石を釘代わりに打ち込み、出来上がった物の枠組みの内側の四隅に棒を置いて釘を打ち込む。枠組みの方からも撃ち抜く。背凭れも作る!
「フフフ。これが、『太陽の苑』出の実力ですよ。」
我ながらいい出来です。売り物になると思います。異国の少女は何故か最初は引いていましたが出来上がるにつれて目を輝かせていました。
異文化コミュニケーション成功ですね!
この後はお腹が空いているらしいですし、お食事と行きましょう。味付けはないですけど……まぁ我慢してください。