9、抗えない結末
ねぇ、先輩。
どこでどう間違ってしまったんでしょうか。
あの春の日から一年と少し。
どこをどうすれば、こんな結末にならなくて済んだのかな。
僕は部室のすぐ近くにある大きな木の下に立っていた。カズトの死から一夜明けて、この街では日本のどこかで震災があったなんて全く考えられないような平和な一日が過ぎた。木に西日が当たり、この時間帯だけは僕たちの部室に影が落ちることはなく、その木は長い長い影をグランドに伸ばしていた。その影に、不自然な影が混ざっている。
「先輩・・・」
僕はその木を見上げた。正確には、その木にぶら下がっている者を。
枝の一本に引っかけられた頑丈そうなロープは一体どこから持ってきたのか。それは彼女の首筋に食い込み、おかげで雪のように白かった肌はうっ血してどす黒く染まり、お世辞にも綺麗とは言えなかった。彼女の足元には部室にあったはずの白いテーブル。僕たちが囲んで今まで過ごしてきた非常に見慣れた物。けっ飛ばされて後ろに倒れている。これをここまで運ぶのも大変だっただろうに。
どこで間違った?何がいけなかった?僕はどうすればよかったんだ?
去年の夏、河原でカズトの言いかけた話し。もしあの時、もっと問い詰めて、全てあの時に話してもらっていたら、この結末は回避できたのか?
いや、そもそも、カズトが被災地に行くと言ったとき、しがみついてでも止めるべきだった。
それとも、僕が一緒に行ってれば何か変わった?非力な僕でも、何か彼の役に立てたのではないだろうか。
いや。たぶんどれでもない。いくら止めたとしてもカズトは行っていただろうし、もし今回は見送ったとしてもいつかは行ってしまっただろう。そして僕が一緒に行ったとしても、きっと何もできなかった。
どうやっても、運命はきっとこの結末に終着したのではないか。そう思えてならない。理屈ではなく、直感でそう思う。
「ごめんカズト・・・僕は、君のおねーさんを守れなかった」
その場に僕は崩れ落ちた。親友を失った悲しみが今さらながらに僕を襲い、そして後悔と彼に対する懺悔で胸が潰れそうだ。
「すみません、先輩・・・僕はあなたに何もしてあげられなかった」
そして再び彼女の亡骸を見上げる。涙にぬれた目では、もうはっきりとそれをとらえることはできない。あふれてこぼれて落ちた滴が、夏の乾いた地面に吸い込まれていった。




