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ドリームランドの扉の鍵ⅩⅣ
パレードもクライマックスを迎え、終わりを告げる花火が次々と顔を見せた。
それと同時に夢の国から人々は満足そうな笑みを浮かべ去っていった。
千尋と葵もその流れにのり、夢の国を立ち去ろうとしていた。
「ねぇ、にぃに」
「ん。どうした?」
「ちょっとね。聞きたいことがあるんだ」
「いいよ」
「もしかしてだけど…絢ちゃんだったり、麻希ちゃんにも同じこと言ってたりしてないよね?」
「お、同じことって?」
「さっき私にくれたとっても情熱的なこ・と・ばのことだよ」
「あは、あはは」
千尋の顔には異常なほどの汗とわざとらしすぎる笑みが浮かんでいた。
「いててっ」
つねられた。
とてつもない指圧で。
「にぃにのば~か」
そう言って「べ~」と言いながら舌を出して、葵は走り出した。
千尋も追いかけようと足に力を込めた時だった。
葵の足が止まり、くるりと振り返った。
「でも…大好き」
「………………」
言葉を失った。
その笑顔はあまりにも男には魅力的だった。
「お兄ちゃんをおちょくるんじゃない!」
照れ隠しに大声で叫ぶと葵を追いかけるように千尋は走り出した。
一日中、葵にドキドキさせられる一日だったな




