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ドリームランドの扉の鍵ⅩⅢ
笑顔を飾る涙が広場前のライトに照らされ輝きながら一粒、また一粒と落ちていく。
「…うれしかった」
「……………」
葵の言葉。
それに答えるかのように千尋の無言。
先ほどとは立場が入れ替わってしまった。
千尋はその言葉に何を返すのが正解なのかがわからなかった。
答えの真意もわからなかった。でも…
それでもしなければならないことがあるはずだ。
「えっ」
「……………」
千尋は葵を抱きしめていた。
葵は驚いたような顔を一瞬するがすぐに笑顔で頬ずりをした。
「正直、俺は葵がなんでそんなことを言ってくれるのかは全然わからん。情けない兄だ。でもな。どんなになさけなくてもお前に泣いてほしくないんだよ。お前が笑ってくれるなら俺は何でもしてやる。だからなくなよ」
「……………」
葵は千尋の顔を笑みを浮かべながら眺めた。
「ふふ。にぃにらしい言葉だね」
葵の言葉に千尋は満足げに笑顔を浮かべた。
「だろ?」




