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絶対妹大戦  作者: 長門葵
11章~ドリームランドの扉の鍵~
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ドリームランドの扉の鍵Ⅻ


楽しい時間は意外と速く過ぎるもので、葵にとってもそれは例外ではなかった。


「もう、真っ暗だね」


「そうだなぁ。もう月が出てる」


千尋は近くで買ったコーヒーを口にしながら、一息をついた。


「なんかその仕草…親父くさいよ」


「そんなことはないだろ!お、俺はまだピチピチの10代だぞ」


「がっちゃっ!」


「それはカードに世界をかけてるイケメンさんだ!」


「ぷ……にゃははは」


必死に否定する千尋を指さしながら葵はお腹をおさえてわらった。


「そんな笑うなよ。ほら。もうそろそろパレード始まるぞ!」


恥ずかしさからか顔を赤くする千尋。


その場を逃げるように葵の手を取り、通路付近の芝生に腰を下ろす。


「なぁ、葵」


「ん?」


「今から恥ずかしいこと聞いていいか?」


「嫌だ」


「早いよ。少しくらいいいじゃないか」


「じゃあ、いいよ」


「適当だな、おい」


「そんなこと言うと気が変わっちゃうよ」


「聞いてください!!」


きれいな土下座だった。それもうなんとも言えない絶妙な土下座だった。


「妹に土下座してま頼み込む兄ってないわ~」


「返す言葉もありません」


「で、話って?」


千尋は少し間をおいてから話し始めた。


「俺さ…不思議に思ったんだよ」


「なにが?」


「お前が告白してきたことだよ」


「………………」


千尋の言葉に葵は驚きとも悲しみともとれない表情を浮かべた。


無言のままの葵の答えを待つことはなく、千尋は話し続けた。


「きっと言い出したのは絢だろ?で、麻貴がそれに乗ってみたいな感じだと思ってた」


「………………」


葵はうつむき、無言を突き通した。


「佳奈や茉那はなんやかんやでまだ子供だ。あいつらの好きはきっと家族としての好きだ。絢の影響かそれを勘違いして、でもそれを否定したくなくてそんな状態だろ?」


「………………」


千尋は真剣な眼差しで葵を見つめた。


「でも、唯一わからなかった」


「………………」


少しの間と張り巡らされた緊張の糸。


「なんで俺なんだ」


「………………」


「なんで葵が俺にそんなことを言ってくれたんだ。お前は流されるような奴じゃないし、俺なんかじゃ追いつけないぐらいお前はいい子だと思ってる。理由。それを俺はお前に聞きたい」


「……………かった」


「へ?」


「………………うれしかった。今だって嬉しいし、にぃにのことが本当に大好き」


葵が顔を上げるとその表情は笑顔だった。


だが、その瞳からは夜のライトに照らされ宝石のように光る涙が、一粒一粒と流れ落ちていた。


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