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ドリームランドの扉の鍵Ⅹ
「食べた食べた」
レストランから腹をさすりながら、満足そうな笑みを浮かべて葵が出てきた。
「その仕草とセリフはおやじ臭いぞ」
そのあとから会計を済ませた千尋が外に出る。
「むぅ~。そのセリフこそ女の子に言っちゃだめだと思います」
頬を膨らませすねたようなポーズをとるが、すぐにそれは崩れ、また嬉しそうに笑った。
先ほど食べたスイーツがよっぽど気に入ったのか、さっきから葵はこの調子だ。
甘いものの力は偉大だと感じずにはいられない。
千尋も葵の手前笑みを作っているが、レストランに入る前に言われた葵のセリフが頭の中を何回もめぐり、気恥ずかしさに今からでも逃げ出したい気分だった。
正直、顔から火が出ても不思議じゃないくらいだ。
顔には出さないが。
「さて、次は何に乗ろうかな」
とりあえず、気を紛らわすために千尋は葵に話題を振る。
「ん~…どうしようか。にぃにのおすすめは?」
「そうだな。じゃあ、あれなんていかがかな?」
千尋が指差した先に存在するでかい屋敷。
『ホラー・ザ・ベスト』
世界一と噂されるお化け屋敷だった。




