ドリームランドの扉の鍵Ⅵ
「今日はベーコンを燻ってみたんだ。どうかな?」
「うん。おいしいよ、にぃに。えへへ」
「「「「………………」」」」
「は、ハンバーグも今回は少しデミグラスソースを変えてみたんだ」
「いつもと違って少し濃いめだよね。お肉と合ってすごい美味しいよ。さすがにぃに」
「「「「……………」」」」
リビングには夕食ににつかない温度差が生まれていた。
葵は楽しそうにご飯を進めるが、その他の義妹たちは無言のままどんよりとした空気を纏いながらチビチビと箸を進める。
原因はわかっているのだが、千尋にはどうしようもなかった。
詠子に助けを求めようとしたが、それを先読みしていたかのように詠子はすぐにご飯を食べ終わり、入
浴しにお風呂へ向かった。
「なぁ、みんな?感想を聞かせてくれないか?」
「でもちぃくんは…アオちゃんが一番なんでしょ。アオから感想は聞けばいいじゃない」
「おいおい、そんなことはないぞ。変な言いがかりはよしてくれ」
「でも、ちぃくんはアオだけを遊園地に誘ったじゃない」
「?それがおかしいことか?お前らで決めたことじゃないか」
そう、これは決まり事だ。
長く間があいて忘れていたかもしれないが、義妹五人は遊園地に行く権利を懸けて料理対決をしたのだ。
「あ~、そういえばそんなのあったね」
「すっかり忘れてました」
麻貴、茉奈の順に呆けた声を出し、納得したかのように首を縦に振った。
「そ、それなら仕方ないね。ふふふ」
絢はなぜか上機嫌そうに笑みを浮かべていた。
香菜も納得したようで、今度は私とだぞ、と千尋に言いながらも食事を口に運んでいた。
妹たちの機嫌がよくなったことに安心して、自分も食事に戻ろうとしたが、先程まで唯一機嫌のよかった葵が逆に落ち込んでいたことに目がいった。
「どうした?」
「そうだよね。どうせそんなことだと思ってたよ」
「どんまい、アオちゃん」
「元気出して。アオ」
姉二人から声援をもらう葵。
それを千尋は不思議そうに眺めていた。
「にぃにのばか…」
小さな声で呟かれた声はやはり千尋には届かないのであった。




