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絶対妹大戦  作者: 長門葵
11章~ドリームランドの扉の鍵~
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ドリームランドの扉の鍵Ⅱ


「そういえば、妹さんたち最近静かだな」


「いきなりだな」


「だってそうだろ?」


「まぁ…な」


敏樹の突然の問いに千尋は顎に手をあて、考える人のようなポーズをとる。


敏樹の一件以降、確かに義妹たち(特に絢と麻貴)が前みたく突撃してくることはなくなった。


兄としてそれは嬉しいものだが、嵐の前の静けさのようで何か恐ろしいものが来る気がしてならないので、どうも落ちつかないというのが本音だった。


「でも、兄妹喧嘩でもしたわけでもないし、問題はないだろ。それよりもうすぐ夏休みだけど、前園は……」


「怜央とバカンスさ!」


「…だろうな」


聞いた自分が馬鹿だったと言いたげに額に手を置く千尋。


敏樹も笑いながら一方的に肩を組み、夏休みの予定なんかを楽しげに話している。


なんだか戻った気がした。


あの衝撃的すぎる告白の前に。


確かに、いろんなことが起きたが……こうして親友と馬鹿げた話をしているのが妙に落ちついた。


義妹たちのことは少し気になるが、もう少し、この静かな日々が続いてもいいと思った。


そんなことを願いながら千尋は帰路についた。



「ジャイアントスイングクラッチ!」


「ごふっ!」


そんな願いも自宅の玄関で儚く砕かれる兄。


そんな願いをいとも簡単にプロレス技で壊す次女。


なんて状況だろうか。


きっと長州力も驚きな光景だ。


「ふふ。遊園地に私を連れていけ!」


「いきなり何の…話しだ」


「しってるんだよ!君が遊園地のペアチケット持ってることを!」


「な、なんだってー」


寸劇としか呼べないくらい棒読みで妹の台詞を処理する千尋。


麻貴はそんな千尋の態度にも気付かず自慢げに胸を張っていた。


千尋はシャツについた埃を払いながら、麻貴に言った。


「で?だからどうした」


「なっ!?」


雷でも落ち方のような表情だ。


次になんて恐ろしい子って言いだしそうな顔だった。


「なんて恐ろしい子!」


本当に言った。


兄も驚きを隠せないようで苦笑いをしているが、千尋の口元は引くついていた。


「だ、だって、妹がこんなにお願いしてるんだよ。行こうか。ぐらい言えないの?」


「え?いつお願いされた?」


「私の渾身の一撃入れたじゃん!」


「それをお願いとしたら、プロレスという競技はなんて図々しい競技になってしまうんだろうね」


「で、でも!」


「あ、それと。これ、一緒に行く人は決まってるから!」


「なっ!」


「じゃあな」


そう言って千尋は自室に戻っていく。


白く燃え尽きて、そこに固まった麻貴を置いて。







この千尋の一言により、今夜、緊急義妹会議が開催されることとなった。


議題は『兄はだれを誘うのか!?』。





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