ドリームランドの扉の鍵
敏樹の一件から約一カ月が経過した。
怜央と敏樹はあれから二人の仲を証明するが如く、休日にはデートに出かけている。
そして、その度に千尋がうんざりするぐらい惚気を聞かされていた。
そして、今もその時である。
「でさぁ~、何がかわいいってもう怜央がかわいくってたまらないわけよ」
「はいはい」
「なんだよ。ずいぶんと冷たい返しじゃないか」
「この一カ月、休みがある度にお前の惚気を聞かされてんだぞ。いい加減嫌気も差してくるさ」
千尋は窓から見れる嫌みかってほど青く晴れた空を見ながら、大きな欠伸をした。
「お、なんだ?嫉妬か?」
「もうそれでいいよ」
「なんだよ。つれねえな。おお、そういえば!そんなお前にこれをプレゼントしよう」
そう言って敏樹がポケットから取り出したのは二枚の紙切れ。
その表面には夢と魔法の国ディスティニーランドと書かれていた。
夢と魔法の国なのに運命の園ってどうかと思う。
「怜央さんと一緒に行ってやれよ。きっと喜ぶぞ」
「そのつもりだったんだけど、怜央に予定が入っちまって」
「だから、この券は用無しになったと?」
「理解が早くて助かるぜ」
嫌みのない笑みに今更文句もつけられず、素直にそれをもらうことにした。
そのあとも敏樹の惚気話は続いたが、千尋はそれを空を流れる雲を見ながら聞き流した。




