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絶対妹大戦  作者: 長門葵
10章~闇夜を飾る純愛のオーロラ~
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闇夜を飾る純愛のオーロラⅩⅩⅤ


「怜央。ダンスも上手だな」


「いいえ。敏樹おにいさまの方が何倍も上手ですわ」


「ふふ。ならさらに良いところを見せないとな」


「そしたら余計好きになってしまいます」


……………


「おい。誰か…あいつらを殴る鈍器を」


怜央と敏樹の歯が浮くような態度にしびれを切らした渚が肩を震わせながら額に血管を浮かべた。


それを抑えるように凰華が話しかけた。


「いいじゃないか。とりあえず敏樹君と千尋がくっつく可能性は消えたんだから。それに、今回はそれ以上の成果を聞き出せたじゃないか」


「まぁ、それはそうなんだが…」


それでも納得しきれない感じの渚。


(そもそも、こんなことならあいつが女装する必要なんてなかったはずだ。そうすれば僕は千尋と今回ゆっくりとパーティーを過ごせたはずなのに)


そう思うと余計に今の敏樹たちの態度に腹が立った。


「あ、渚さん!」


どうやったら事故に見せかけて敏樹を殴れるかを必死に考えていた渚に声がかけられた。


渚がそちらの方を向くと間宮家姉妹が全員そろってこちらに駆け寄ってきた。


「渚さん、ちぃくんを見ませんでした?」


「ん?見てないが」


困ったようで凰華に視線を向け、助け船を求めるが、凰華はわざとらしく肩をすくめた。


「私も見てないわ。何か用事?」


「その……親父がつぶれちまって」


「お母さんがにぃにを呼んでくれって」


麻貴、葵の順で事情を説明する。凰華もベンチで酔いつぶれた英司の姿を見て納得する。


「それより、なんで前園のやつあんな楽しそうなんだ」


「香菜。それはあれよ…恋ってやつよ。そんなものもわからないの?」


「なんだ!お前にはわかるのか!」


敏樹たちの態度に疑問をもった香菜の質問にわざとらしく怒らせるような返答をする茉奈。


案の定、二人は喧嘩を始めた。


それを止めようとした絢の視界の隅におかしなものをとらえた。


「お兄ちゃん!!」


足を引きづりながら千尋が歩いていた。


千尋も絢に気づいたらしく、にっこりと笑った。


「ど、どうしたの!?お兄ちゃん」


「えっと…話すと長くなるんだが、その前に肩貸してくれないか?」


そういうと千尋は力なく倒れた。


他の妹たちも気付き、千尋に駆け寄ってくる。


千尋は心配かけまいと微笑みかけるが、その笑みはいささか頼りないものだった。


「あれ~、なんか力が入らないな。おかしいな?あはは…」


「何をしてきたんだよ、まったく。ボロボロじゃないか」


「ふふ、ずいぶん勇ましい姿だね、千尋」


そこにあきれたような態度を示す渚と面白そうに笑う凰華も合流した。


「いやはや、良いわけもないっす」


「ったく、仕様がない。僕が肩を貸してやる」


「ありがとうございます~」


倒れた状態でまさに頭だけを下げる千尋。


千尋を肩に乗せ、担ぐ。


(―――――なんか嫌だったんだ)


不意にその言葉が頭に蘇る。


「っ!」


火が出るんじゃないかってくらい顔を火照らせた。


「どうしたんですか?渚さん、顔が真っ赤ですよ?」


「な、ななな、なな、なんでもない!」


渚のすごい動揺っぷりに間宮家は頭に疑問符を浮かべた。


唯一、その理由を知っている凰華はにやにやと笑いながら渚を見ていた。


「ぼ、僕のことより!早くこいつとこいつの親父を運ばなきゃ!」


「そうね。とりあえず、私の家の車まで運ばないと」


渚の声に答えたのは凰華だった。(むろん、顔はにやけたまま)


それに同意した間宮家娘たちも頷き、英司の元へ向かう。


凰華と千尋を担ぐ渚もその後に続いた。


「ちょっと待ちたまえ」


不意にかけられた声に二人は足を止める。


振り向くと前園金造がそこに立っていた。


「いやはや、ボロボロじゃないか千尋君《・・・》」


「やっぱり…最初から気付いてましたね」


「まぁな。あの意固地のことだ。何かしら手を打ってくるとはわかっていたが、まさか君に女装を頼むとは驚いた」


「ほんと…いい加減にしてほしいですよ」


「でも、かわいいじゃないか」


「……怒りますよ」


金造は困ったようで苦笑した。


「まぁ、今回のお礼も込みで何かお返しをさせていただくよ」


そう言いながら金造が指を鳴らす。


何かの合図だったのか、一瞬にして千尋たちは燕尾服の男たちに囲まれた。


「そちらは私の御客人だ。丁重に扱え」


「ちょ、まっ、ああぁぁあぁあぁぁ!」


千尋たちは燕尾服の男たちの波にのまれ、車まで運ばれた。


「ふっ。感謝ばかりだよ。間宮」


千尋の長い長いダンスパーティーはそうやって終わりを告げた。


怜央の純白のドレスがそのホールにオーロラのように舞い、その終わりを綺麗に飾りつけたのだった。

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