闇夜を飾る純愛のオーロラⅩ
「おお、前園さん家の。お久しぶりだ。そのお連れさんは?」
「初めまして。敏樹さんにお誘いいただきました。千夏と申します」
「前園さん、いつもご贔屓に。今日はお綺麗なお嬢さんをお連れで」
「勿体無きお言葉、ありがとうございます。ですが、私なんかよりも、よっぽど貴方さまの方が綺麗です。私、目をとられてしまいましたもの」
「こんばんは、前園の坊ちゃん。今日はご招待感謝してるよ。今日はかわいいお連れさんもいるようで楽しんでいるのかな?」
「はい、それはもう。敏樹さんのおかげで素晴らしい時間を過ごさせて頂いております。社長さまもどうか今夜のパーティーをお楽しみください。それが私めの最高の楽しみなのですから」
・・・・・・
千尋と敏樹が挨拶まわりにでてから約一時間。
そこには完璧に挨拶をこなす千尋の姿が。
「ち、ちぃくん・・・恐ろしい子」
絢が某女性向け漫画にでてくる貴婦人のように雷にでもうたれたかのような表情をしている。
「にしても、ちぃにい・・・完璧すぎるよね」
麻貴も苦笑せずにはいられなかった。
なんせ、目の前で完璧な仕草を見せるのは自分たちの兄であり、いっかいの高校生なのだから。
にもかかわらず千尋はまるで生まれた頃から英才教育を受けたかのような完璧な受け答えをし、千尋と話をした金持ちは必ず気分が良さそうな笑みを浮かべていた。
「二人ともいつまでそんな覗きみたいな事してんのさ」
葵がシャンパンの入ったグラスを片手に二人に呆れた声で話しかけた。
「で、でも、アオは気にならないの?」
「そうだよ。アオちゃんだってちぃにいの事心配でしょ」
「いや、全然。まったくこれっっっっっっぽっちも思ってない」
葵はワイングラスを傾けながら、絢と麻貴、それぞれを一回ずつ見る。
「・・・二人とも今までにぃにの何をみてたの?にぃにがそんな人じゃないのは知ってるでしょ」
「まぁ、そうだけど・・・」
絢が申し訳なさそうに俯く。
「でも、何があるかわからないじゃん」
「それに・・・お兄ちゃん、いくらアタックしても反応しないし」
「ま、信じるも八卦、信じぬも八卦。だから、好きにして。バイバ~イ」
葵はそう言って、手を振りながら去って行った。
絢と麻貴は互いの顔を見合った。
「「はぁ~」」
二人はため息を吐いて、会場のざわめきの中に消えて行った。




