闇夜を飾る純愛のオーロラⅢ
「てなことで、今度前園のでっかいダンスパーティーやらに行く事になりました」
千尋が敏樹を連れ学校から帰ると、学校であったことを妹たちに途中途中はしょりながら話した。
反応はまちまちだったが、隣に座っていた敏樹が小さい声で耳打ちをした途端、妹たちは納得していた。
「でも、ちぃ兄だけずるくない?」
「うぅ〜私もお兄ちゃんと美味しいご飯食べたいぞ!!」
「仕方ないだろ。赤の他人がそんなぞろぞろと言ったら迷惑だろ」
千尋は頬を膨らませる妹たちをなだめる。
「ふふ〜ん。実は迷惑じゃなかったりするんだな」
絢が胸を張って一枚の紙を突き出す。
そこには『ダンスパーティー招待状』とかかれていた。
「なにコレ?」
「お父さん宛てに届いた招待状。家族みんなで来てくださいだって」
「え!?俺、聞いてないよ?」
「うん。だって、今、はじめて言ったもん」
なにを当たり前なみたいな顔で千尋を見る絢。それに少しイラついたのか眉がひくついていた。
「だけど、それなら話が早いな。前園、どうやら今日の騒ぎは必要無かったらしいぞ」
「いや〜。そんなことないよ。ね?妹ちゃんず」
そう敏樹が言うと妹たちはいたずらじみた笑みを浮かべた。
「何を隠そうとしている」
千尋がそう敏樹に迫ると敏樹は笑いながら人差し指を立て、左右にふる。
「当日のひ・み・つ」
バシッ!
千尋が頭にチョップを叩き込んでいた。
「痛いじゃないか、親友」
「お前が意味の分からないことをするからだ」
「そう起こるなよ。もう用事もすんだし帰るかな」
敏樹はそそくさと立ち上がり、玄関に向かった。千尋もその後に続いた。
敏樹は靴に履き替えると何かを思い出したような仕草をとり、振り返った。
「当日は迎えに来るよ。こんな大人数だと大変でしょ」
「そうか。助かるよ」
「まぁ気にすんなよ、親友」
「そうか?じゃ気にしないぞ」
「いいって。当日、俺の相手・・・頼んだよ」
敏樹はそういい残し間宮家をあとにした。
千尋は敏樹の言葉がどうしても引っかかり、不安だれけだったが、久々に家族で出かけられる嬉しさに少し浮かれていた。
そう、あんな事になるなんて想像さえして無かったのだ。




