料理が火を噴くバトルロワイヤルⅩ
かたんっ
葵の手から離れた銀色のお盆。
今、その場にいる全員の視線がそれに集まる。
「目を見開いてご覧ください。これが私の料理です」
葵はそう言って蓋をゆっくりとあげる。
「じゃん!!」
その声と一緒に登場した料理は予想に反するものだった。
高らかにそびえたつ白い塔。
それを着飾るように並べられた色とりどりの粒たち。
それらに負けないほどの主張をするカラフルな半球体。
そう…それは―――
――――――パッフェ!!
よく、女の子たちがキャハハ、ウフフと言いながらつつくといわれている男子には完璧に夢なスウィーツ。
それがパフェ。
「どうよ。結構、美味く出来たと思うんだ」
自信満々に言う葵。
「確かにすごいものだが…これが朝ごはんなのか?」
「う~ん。私もどうかと思ったけど…にぃに、今、おなかいっぱいでしょ?」
「まぁ、確かに」
「だから、普通のご飯を作るより食べやすいデザートの方がいいかなぁと思ったんですよ」
「え?」
「にぃにのことだからきっと笑顔で食べてくれると思うんだけど…それじゃ、にぃにを思っての朝ごはんじゃないからね」
「あお……」
千尋は涙目になっていた。
ほかの妹たちも感心してそれを聞いていた。
だが、そこで負けを認めるほどの妹たちでもなかった。
「で、でも…まだ、ちぃ君は食べてない」
「そ、そうだよ。ちぃ兄が食べてから勝敗が決まるんだよ」
「そうだ!」
「…………」
茉奈を除いて、妹たちは声をあげる。
「では、いただきます」
千尋がその声に答えるように口に運ぶ。
「………」
千尋の反応は?




