料理が火を噴くバトルロワイヤルⅣ
「さ、どうぞ」
千尋がドアを開くと妹たちは一斉に部屋に飛び込む。
「お、おい…お前ら!!」
「ああ、これがちぃ君のベッドかぁ」
「匂いを嗅ぐな!!」
「ちぃ兄。エロ本どこ?」
「ないよ!!」
「にぃに、こんなのがタイプなの?」
「それはただのファッション雑誌だ!!」
「なぁなぁ、おにいちゃんどれで遊ぶ?マサオカートか?ドーナツンクか?」
「ちょっと…まてて」
「お兄さまのごみ箱からティッシュが」
「鼻をかんだだけだ!!」
部屋の中に妹たちの楽しそうな声と千尋の怒号が飛び交った。
一時間ぐらいでその騒ぎは千尋の拳により鎮圧された。
「いい加減にしろ…お前ら」
「「「「「すいません」」」」」
「動くなよ」
千尋は全員を正座させ、牽制しつつ本棚にを探る。
「えぇっと…確かここいらだったと思うんだけど………あった!」
そう言って千尋は分厚い一冊の本を取り出した。
それを妹たちの前に投げる。
「これはアルバム?」
「そう、小さい頃のね。お前らがまだ家に来る前だよ」
「「「「「へぇ~」」」」」
感嘆の声をもらしながらもアルバムのページを次々とめくる妹たち。
「おぉ、お兄ちゃんが小さいぞ」
「ホントだぁ。ちぃ兄、かわいい」
「うふふ、お兄さま・・・かわいいですね」
「思った以上に恥ずかしいな。あ、もう少し先に・・・」
千尋は恥ずかしさに顔を赤く染めながらアルバムのページをめくっていく。
「あったあった・・・・・・これこれ」
千尋は写真をアルバムから取り出し、絢たちに差し出す。
「・・・これは?」
葵が怪訝そうに顔を歪める。
「これは小さい頃の凰華会長と俺だよ。・・・まだ4歳くらいだったかな」
千尋は写真を懐かしそうに見つめながらイスに座る。
その瞳は寂しい光が鈍く輝いていた。
「俺の母さんが死んだときの話だよ。あの時、俺はその死を受け入れることを出来なかった。
「母さんの葬儀の時、悲しみで何も見えない俺に1人の女の子が話しかけてきた
「それが凰華会長だった。
「彼女は俺に言った
「なんて、悲しい顔をしているんだい?
「もっと笑いたまえ、って
「彼女は俺の頬を引っ張ったんだ。
「全く、何を考えてるのか
「当時の俺も意味がわからなくてさ、馬鹿みたいに大口開けてさ
「頬に伝わる痛みでやっと我に還ってさ。
「そっから、実はその子が親父の知り合いの家の娘さんだって知って。
「しかも、彼女は近くに引っ越してきてさ
「すぐ、仲良くなれたよ
「で、ある日、言われたんだ。
「私はあなたを導いてあげる。その代り、私を守る騎士として一生、隣にいてって
「俺は信じてその言葉にうなづいた
「でも、彼女は俺の目の前から消えた
「俺は相当ショックだったね
「だって母さんの次に信頼していた人が消えたんだから
「でも、すぐにそのショックは吹き飛んだよ
「俺の元に自分以上に弱弱しい表情を浮かべた新しい家族が来たんだから
「弱音を言ってる場合じゃないって
「それが、お前らで、そのおかげで俺は今みたいに普通の生活が出来てる
「もし、お前らが来てくれなきゃ、俺は今も家に閉じこもってたかもしれない
「本当にありがとうな」
千尋が話を終え、妹たちの方を見ると、全員が涙目になっていた。
「うぅ~」
「ぐすん…」
「お、おい、泣くなよ」
「だ、だってぇ~」
「過去の話だからさ。今じゃただの笑い話だよ。だから、ほら涙拭いて」
千尋は近くにあったティッシュボックスから二枚ずつちり紙をとって手渡す。
ずびーーーーー
同時に鼻をかんで、妹たちは涙目ながらも笑った。
落ち着きを取り戻した絢が不安そうに千尋を見つめた。
「ねぇ……ちぃくん」
「ん?」
「まだ、凰華さんのこと…好き?」
千尋はその質問に一瞬きょとんとしたが、すぐに大声をあげて笑った。
「ち、ちぃくん!!」
「だ、だって、あはは、お前らはそんなことを心配してたのか。あははは」
絢をはじめ、妹たちは不機嫌そうな表情になる。
「バカだろ?」
「「「「「は?」」」」」
「だって、お前らさ、考えてみろ」
「「「「「??」」」」」
「俺はこんな可愛い女の子に、しかも五人同時に告白されてるのにそんな余裕はないよ」
そのセリフに妹たちは顔を赤くする。
「で、でも、にぃには……私の約束よりあの人を選んだじゃん」
「へ?」
「遊園地!!連れてってくれるって言ってくれたじゃん!!」
「「「「え?」」」」
葵が大声で叫んだその一言がさらなる波乱を呼ぶこととなるのだった。




