料理が火を噴くバトルロワイヤルⅢ
ここは間宮家のリビング。
そこには真っ白に燃えあがった四人の妹の姿があった。
「まったく、お前らは人様にあんなことしちゃだめだぞ」
千尋は呆れながらそんな妹達を見ながらため息をつく。
『……すいません』
他の四人は兄に怒られた事が相当ショックだったらしく顔をに悲しい表情を浮かべうつむいていたが、葵だけは不安そうな顔を千尋に向けていた。
「にぃに」
「何?」
「話がずれてる」
「な、なんで葵さんはそんな怒ってるんですか?」
いつのまにか説教する立場から追いつめられる立場に変わっていることに困惑する。
「早く、あの人との、関係を、話して」
「どうしたんだ?本当に今日は何か変だぞ、葵」
「……良いから早く」
「はい」
怒気の込められた低い声に兄は頷くしか出来なかった。
千尋はとりあえず自室に着替えに戻った。
「………………にぃにの嘘つき」
葵が零した静かな言の葉を千尋が拾う事はなかった。
「さて、着替えて来たことだし、さっそく話をしよう。その前にちょっと見て欲しい物があるから俺の部屋まで来てくれ」
そう言って千尋は歩き始めた。
その後ろを妹達はついて行った。
妹たちの目的は凰華との関係を聞き出すことだったが、個々の脳内はではすでに千尋の部屋に入れることでの嬉しさで満ち溢れていた。
(どうしよう。ちぃくんの部屋なんて5年ぶり。ど、どうしよう。あ、そうだ。と、とりあえずえっちぃ本を探そう。そう、兄を健全にするために。べ、別にどんな子に興味があるか知りたいわけじゃないんだから。そう、これは妹としての義務なんだから)
(わーい、ちぃ|兄≪にぃ≫の部屋だ。うれしいな。いろいろ家捜しとかしよ。あ、でもHな本があったどうしよう。まぁ男のだし仕方ないよね。とりあえず、ヤサガシしよう)
(…………にぃにのバカ。約束を忘れてるくせに…いきなり部屋なんて)
(わーい。お兄ちゃんの部屋に入れるぞ。この前、入ろうとしたら注意されたからな。久々にお兄ちゃんとゲームするぞ!!)
(お兄さまの部屋……きっと、入ったら―――――――――――とか、――――――――とかしちゃうのかしら。ついには――――――――――とか!!お兄さま…えっちですわ。くふふ)
「にやけ顔はどうかと思うぞ。あとよだれも」
千尋は苦笑いをうかべる。
全員がはっとして口元を拭くような仕種をとる。
「別にちぃくんのえっちぃ本なんかに興味はないんだからね」
「ちぃ兄のHな本を探そうなんて思ってないぞ」
「べ、べつにそんなえっちことなんて想像してないよ」
「お、おにいさまとそんなことやこんなことをしてるトコなんて考えてませんわ」
「……………………………………………」
千尋は冷めた目線を向けるだけで何も言わなかった。
そして、佳奈の肩を軽くつかみ悲しそうに言った。
「お前のお姉さんは何を言ってるんだろうな?」
「?わかんないぞ。それより、お兄ちゃん。久々に部屋に入れるんだ。なんか、ゲームしようぜ」
「ああ、そうだな。頭の中がピンクな連中は外でピンクな書物を探しに出てる間は楽しくゲームでもしようか」
「やったー!!」
ばん!!
物音のした方を向くと妹たちが土下座をしていた。
「「「「………もう許して下さい」」」」
その声は涙声だった。
千尋はわざと聞こえるようにおおきなため息を吐いた。
「絶対に家探ししないと誓えるか」
「「「「誓います」」」」
「じゃあ、入ってよし」
その言葉に土下座をしていたメンバーは顔をパーっと輝かせる。
「だが、もしそれに近い動作をしたら……」
「「「「…したら?」」」」
「詠子さんに通報します」
「「「「……かんべんしてください」」」」
「よし。じゃ、いいぞ」
この時、千尋の考えはまだ甘かった。
妹たちはの目はまだ死んではいなかった。




