表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対妹大戦  作者: 長門葵
8章~夕日で模られたガラスの瞳 ~
37/162

夕日で模られたガラスの瞳Ⅳ

「ねぇ、にぃに!投球練習しなくていいの?」


ベンチの方から葵が大声で叫んでいる。


千尋はそちらを見て「大丈夫だよ」とかえした。


「ちぃ(にぃ)。準備はいい?」


「ちょっとまて」


麻貴の質問に千尋以外の声が答える。


そちらを向くと球余がプロテクターをつけ、バッターボックスの後ろに立っていた。


「な、なな、部長!?」


「何を驚いている?」


「いや、だって…」


「私にできない守備位地なんてないぞ。それにお前の兄からの御達しだ。答えなければ申し訳が立たんだろ。それにお前の兄だ。どんな球を投げるか興味もあるからな」


「そ、そうですか」


「麻貴、準備はいいのか?」


いたずらっぽい笑みをうかべて千尋がグローブを叩く。


麻貴は風船のように顔を膨らませ千尋を睨む。


『プレイボール』


審判の声で試合は始まった。


「いきます」


千尋は大きく息を吸い込み、力強く腕を振る。


パァーン!!


千尋の投げたボールは盛大な音を立ててキャッチャーミットの中に収まった。


『おぉ!!』


周りから驚きの声が上がる。


「ボール」


審判の声に麻貴は胸を下ろす。


「ち、ちぃ兄?女の子に向けてこのボールは男らしくないんじゃないかな?」


「俺の自由と尊厳がかかってるからな。それに俺の自慢の妹が相手なんだ。手加減なんてしたら失礼だろ?」


子供がいたずらをしている時のような幼い笑みをつくり、ボールを受け取る。


麻貴はその言葉にうれしそうな笑みを浮かべる。


「さぁ、来い!!」


麻貴は自分に気合を入れるように大声でボールを呼ぶ。


千尋はそれにこたえるように真剣な表情でふりかぶる。


そ力強く投げられたボールはまっすぐキャッチャーミットに吸い込まれるように走った。


「さすがに直球を二本は外さないよ」


麻貴は力いっぱいバットを振りぬく。


ボールにバットが当たろうとした瞬間、ボールが軌道を変えた。


「なぁ!!」


カァーン


鈍い音を立ててボールはファールゾーンにはじかれる。


「これぐらい当たり前だろ?」


「さすが…私たちのお兄ちゃんだ。まさかカーブを投げられるなんてね」


二人とも楽しそうに笑った。


「次、行くぞ」


「…………」


千尋が投げたボールは先ほどとは違い早いといえるほどの球速ではなかった。


麻貴が力をためタイミングを合わせて思いっきり振り抜く。


だが、バットにボールが当たることはなかった。


ボールはバットを避けるように落ちて、地面に転がった。


「おいおい、あいつは本当に初心者か?」


球余がボールを握りながら、信じられないといった表情をつくっていた。


「そのはずなんですけどねぇ…」


麻貴も苦笑する。


「さて、次で最後か?」


「まだ、負けないよ?甘く見ないでね」


麻貴は大きく息を吐き、頬を叩く。


千尋は小さく笑い、振りかぶる。










パァーン!!








「スリーアウッ!!」


ボールはバットに触れることなく、キャッチャーミットに収まった。


そして、勝負は終了した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ