ダウトな出会いがジョーカーとの再会
「ねぇ、千尋」
「なに、―――ねえちゃん?」
「約束して」
「うん、わかった!!」
「ふふ、まだ何も言ってないわよ」
「うん!でも、―――ねえちゃんとの約束だもん」
「ありがとう。千尋はやさしいのね」
「へへ」
照れたように頭をかく千尋。
「千尋、私の――――――でいてね。約束よ」
「うん。僕はずっと―――姉ちゃんの――――――でいるよ。約束する」
二人は夕日で照らされる幻想的な公園で指切りをした。
その二人の笑顔は幸せそうで、まるで夢の国にいる王子とお姫様のようだった。
そう、まさに夢のようだった。
親子の十本対決があった次の日。
千尋は最悪ともいえる目覚めだった。
思い出したくもない思い出を夢で見てしまった。
千尋が一番、つらいときの記憶。
「なんで今更…」
千尋はその記憶をふりきるように布団にもぐりこんだ。
「おにい。千尋おにい?おきなくちゃ遅刻するよ」
「……………」
千尋が無言を決め込むとドアがゆっくりと開く音がした。
「まったく、千尋おにいはダメだな」
声から麻貴が起こしに来たらしい。
いつものように格闘技が飛んでくるんじゃないかと体を丸くして防御態勢をとる千尋だったが、麻貴はその予想の斜め上を飛んできた。
「千尋おにいがいけないんだよ」
なんと布団にもぐりこんできたのだ。
千尋は驚いて飛び起きた。
「な、なにしてんだ麻貴!!」
「もう、タヌキ寝入りなんかしてる千尋おにいがいけないんだよ」
「だ、だからって…」
ちゅっ
千尋の頬になにか柔らかいものがあたった。
「な、なな、なななななんてことすんだ」
「えへへ」
千尋は顔を真っ赤にして頬をさすり、麻貴は照れたように笑う。
そんなときに部屋のドアがいきなり開いた。
「もう、麻貴も起こしに来て何分かか………なぁ!!」
「「………………………」」
時間が止まったように感じた。
千尋は尋常ない冷や汗を体中に感じていた。
「な、何してるの二人とも!!」
「ち、違うんだ。落ちつこう。言ったん落ちつこう絢」
「え~、別に否定することもないじゃん、千尋おにい。二人だけの秘密ができたんだし…それに今だって、キャッ」
麻貴が恥ずかしそうに顔を手で隠す。
まさに火に油だ。
「お…にいちゃん?」
「ご、誤解だ!今だって、ただ麻貴がキスしてきただけで俺は何も……あ」
言ってから自分が墓穴を掘っていることに気づく千尋。
麻貴の方を見ると顔を隠しながら肩がふるえていた。
この状況を楽しんでいるんだろうとすぐに千尋は理解した。
そして、自分の状況が最悪なことも。
「お、おお、おにいちゃんの………」
「ま、まって!!話せばわか……」
「バカぁぁぁああぁぁぁあぁあ」
パァーーーン!!
月曜日のさわやかな朝に似合わない破裂音が家中に響いた。




