ユニークな写真立ての大乱闘!?Ⅴ
『いよいよ最終対決となりました。最後の司会ならびに実況をさせていただきます。三途の川を華麗なる泳ぎで堪能してきた前園敏樹です。』
真面目な顔でニュースキャスターのような自己紹介をする敏樹。
内容はかなりふざけだものだが、会場の盛り上がりは最高潮に近く、敏樹の一言にかなりの好反応を示す。
『さて、では最後の対決は解説者の詠子さんに決め手もらいましょう』
そう言って敏樹は司会者席から一つの箱を取り出した。
『この中には競技名が書かれた紙が十枚入ってます。それを詠子さんに引いていただきます。では、早速お願いします』
『了解しました~』
詠子が箱の中に手を入れ、かき回すように腕を動かしてから一枚の紙を取り出した。
ゆっくりと中身を確認する詠子。
そして、詠子はカメラに向かってその紙をつきだす。
『勝負名はこちら、クイズ十本対決!!』
会場がその声に合わせ、さらに盛りあがる。
『ではでは、早速説明に入ります。この勝負はいたって簡単!!クイズを十問出しますのでそれに応えていただきます。一問答えることに一ポイント入り。それが今までの勝利ポイントに加算されます。しかし、間違えると3ポイント引かしていただきますのでご注意を!』
『今のポイントは英司さんが4ポイント、ちぃくんが5ポイントね。なかなか接戦ね』
『はい、なのでこのクイズで間違えるとお互いに痛いところでしょう。では、二人の準備が終了したようなので行きたいと思います!!』
スポットライトがさまざまな色の光を放ち、その光は英司と千尋の二人を照らす。
二人の後ろには大きな電子掲示板があり、問題と正解数を表示するらしい。
『さて、第一問。日本で一番高いのは富士山。ではに…』
ピンポンッ
英司の掲示板が光っている。
『英司選手、はやい!!では、お答をどうぞ』
「北岳っ!!」
マイクに鼻息が聞こえるぐらい意気込んで答える英司。
静かな時間が会場を満たす。
『正解‼』
英司は大きくガッツポーズをする。
「ふふ、これが父親の強さだ」
「くっ、まだまだ。ここからだ」
『続いての問題!!』
敏子の声に合わせ画面も切り替わる。
『ドライア……』
ピンポンっ
今度は千尋の掲示板が光る。
『早い‼ではお答は?』
「二酸化炭素」
『正解!!』
その声に会場はわっと盛り上がった。
『しかし、千尋選手早かった。この調子でどんどん行きましょう。第三問』
千尋と英司はボタンに手を置き、耳をすませる。
『ドラ……』
ピンポンッ!!
二人がほぼ同時にボタンを押した。
先に反応したのは英司の方だった。
「2112年9月3日」
『正解!!』
会場がざわめきだす。
『しかし、いくらなんでも早すぎませんか?英司選手』
「いや、ドラえもんの誕生日なんて横道すぎるだろう。なぁ、千尋」
「くっ、あと少し早ければ…」
『あんたらがおかしいのは良く分かった。では第四問!!』
『「マイルドセブ…』
ピンポンっ!!
今度は千尋だけしか反応せず、英司は悩んで頭を抱えている。
『さすがに四度目はないと願いたいが…お答は?』
「ココア」
『…………』
敏樹が問題の紙を凝視していた。
「きっと問題は『マイルドセブン』の隠し味は何か、だろ?簡単すぎて小学生でもわかる」
『問題も合わせ……正解だ』
おおぉ―――!!
会場から感嘆の声が上がる。
「まさかと思うが……親父、分からなかったのか?」
「ぐぐぐ……」
『にらみ合ってるところ悪いが第五問目行くぜ!!流石に今度のは難しいだろう』
敏樹は自信満々な顔で問題を読み上げる。
『ドボル……』
ピンポーン
二人の手が認知できない速度でボタンを押す。
英司の掲示板が光、ため息をつきながら答えた。
「アメリカだろ?まったく大人をなめすぎだろ」
『なんなんだ!!正解だ、こん畜生!!』
次々と二人は問題を解き進め、ポイントが8対10で十問目に突入しようとしていた。
『さて、いよいよ最終問題です。これに正解できた人は5ポイント獲得できます。しかし、間違えれば10ポイントを失います』
その声に観客たちのテンションもさらに上がる。
『…………』
敏樹はしばらく問題の紙を凝視していた。
それは何かを睨むようであり、また眉間に寄ったしわが何かを悩んでいるかのように見えた。
「…どうしたんだ、あいつ」
千尋はその少しの変化に変な違和感を感じた。
敏樹はすぐにいつものようなへらへらとした面に変わり、問題を読み上げた。
『間宮家長女…絢ちゃんのスリーサイズは?』
「「なっ!!」」
千尋と英司の声が重なる。
観客席に眼をやると絢が顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいた。
二人はしばらく沈黙を貫いた。
ピンポン
沈黙を破ったのは英司の手だった。
ボタンを押した英司の手は震えていた。
先ほどの詠子のアイアンクローを思い出しているのだろう。
「千尋………」
「…………なんだ、変態」
「久しぶりにお前とこんなに長く遊べたのは久しぶりだ」
「…………………」
「楽しかったぜ」
「………………親父」
英司は息を思いっきり吸い込み、マイクに全力で叫んだ。
「バスト80、ウエスト69、ヒップ73」
それを恥ずかし気もなく叫ぶ英司はあまりにも男らしく、煌々としていた。
だが、それは長く続かなかった。
『残念!!それは今年に入る前のスリーサイズです』
「なぁにぃ~…やっちまったなぁ!!」
鉢巻きを巻いて餅をついてそうなイメージをさせる形相になる英司。
千尋はゆっくりと息を吸い込み、同じくらいゆっくり息を吐き出した。
そして、口元をゆがませ聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で呟いた。
「俺もなんだかんやで楽しかったよ。ありがとう」
「へ?」
そのまま千尋は大声で叫んだ。
「絢のスリーサイズはバスト90、ウエスト71、ヒップ75だ!」
会場をまた無言が制圧した。
『せいかいだぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあああぁ!!』
敏樹は声で会場が最高潮まで盛り上がる。
この声とともに終わりを告げる花火が上がる。
「おお、きれいだ」
「ああ、きれいだな」
千尋と英司は回答席から静かにその花火の趣を楽しんでいた。
「……たのしかったな」
「……確かにおもしろくはあったよ」
「そっけないな」
「しょうがないだろ。なかなか帰ってこない親父に愛想よくしろって方が無理がある」
「まぁ、その通りだな」
「だけど」
「だけど?」
「今回は感謝している面もあるよ」
「そりゃ、うれしい」
「またいつかこんなことを今度は家族全員でしたいな」
「そうだな。今度の休みになにかやるか」
「それもいいな」
二人は向き合い、こぶしを合わせる。
「「生きて帰れたらな!!」」
二人の声が重なると同時に二人は地面から浮きあがった。
そこには怒りのオーラをまとった詠子と絢が立っていた。
二人はそのまま女性陣の批判の声と顔面を襲う激痛の中で意識を失っていった。




