ユニークな写真立ての大乱闘!?Ⅳ
『さて、残すところあと二回の対決で終了です』
『そうね。なんか残念ね』
『まぁ、その気持ちはわかりますが、先に進みましょう』
敏樹がボタンを押すと大画面に大きく『借り物競争』と映し出された。
『ルールは簡単!!まず2人にはあの「指令box24」の中に紙をとってもらいます。そこにかかれたモノをとってきてもらいます。その紙は一度だけ交換可能です。そして、それを持って来てステージの上にあるマイクに向かって叫んでください。先に紙に書かれたモノを持って来た人の勝利です』
ルール説明も終わり千尋と英司はスタート位置についた。
ぱぁっん!!
ピストルの音と共に2人は同時にスタートをきった。
先にboxにたどり着いたのは千尋だった。
boxの中に手をつこっみ、一枚の掴み取った。
それを恐る恐る開く。
次の瞬間、千尋は驚愕した。
そこに書かれていたのは・・・
『家族のブラジャー』
千尋はため息をつきながら静かに紙をboxの中に戻した。
もう一度、紙を取り出す。
その中身をみると
『女子クラスメートのファーストキス』
「どおしろとぉぉぉぉぉおぉおぉおぉぉおおぉぉぉぉ」
千尋の心からの叫びだった。
膝から崩れ落ちた千尋。
その隣でやっと順番が回ってきた英司がboxに手を入れ、紙を取り出す。
中身を確認して、英司はにこやかに笑いそのまま倒れた。
千尋がそちらの方に目を向けると英司の手にある紙に書かれたものが自分がはじめに引いた紙と同じことが分かった。
つまり、そこに書かれているのは『家族のブラジャー』。
家族の大黒柱がそんなものを借りに行けるわけがない。
そして、二人がその場に固まってから10分ほど経過した時だった。
「なぁ、千尋よ」
英司が顔をあげ、静かに語りかけた。
「なんだ、クソ親父」
「男には決心しなきゃいけない時があると思うんだ」
「……………………」
英司はゆっくりと立ち上がった。
「どんなに苦しくても、それが吐くほど嫌なことでも、自分の命にかかわっても決断しないといけない時がある」
「……親父」
「俺は思った。それは……」
「それは?」
顔をあげ、清々しいさわやかな笑顔で握りこぶしを作り叫んだ。
「それは今だ‼‼」
絶対、ちげぇぇぇぇええぇぇぇぇえぇぇぇ!!
会場にいる全員が心からツッコミを入れた。
会場の心が一つになった、ある意味奇跡的な瞬間だった。
英司はさわやかな笑顔のままで観客席にいる家族のもとへ猛ダッシュ。
「香菜!!俺と来てくれ」
「へ?」
英司は香菜の返事も聞かず、香菜を抱えあげマイクのあるステージに向かって走った。
ステージに着くと、呼吸を整えてめいいっぱい息を吸い込んだ。
「俺の借りてきたものはこれだぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁ!!」
英司は叫びながら香菜の上着をめくり上げた。
…そこには小さな二つの丘が並び、そこには純白のカーテンがひかれていた。
「これが俺への指令。『家族のブラジャー』だぁ!!」
会場が無言となった。
最初は状況を理解できずに口を開けていた香菜だが、その顔は少しずつ赤くなっていく。
「しねぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇえぇぇえええぇぇぇ」
英司の股間に見事に蹴りがはいった。
その場に崩れ倒れる英司。
だが、英司の手はピースの形をつくっていた。
『な、なんてことだぁ!!英司選手は父親という地位を捨て勝ちを取りに来たぁ!!あんたは勇者だぁ!!だが、解説の詠子さん。奥さんとしてこれはどう…………あれ、詠子さん?』
敏樹が隣を見るとそこから詠子の姿が消えていた。
「ぐがぁぁぁああぁぁあぁぁあ」
悲鳴が会場に響いた。
そちらを見ると英司の顔面に詠子の手が食いこんでいた。
「ねぇ、英司さん?……やっていいことと悪いことがあるの。ねぇ?」
「す、すみ…まぜ…」
「許しません」
「ぐがぁぁああぁぁぁあぁぁぁあぁあぁ」
英司の手は逃れようと空を切るがすぐにその手は力をなくし下ろされた。
『な、なな、なんてことだぁぁあぁぁあ‼英司選手は詠子さんのアイアンクローで落とされたぁ!だが、英司選手のおかげで俺らは夢をみせてくれたぁ!ありがとう、英…………』
敏樹の声が途中で止んだ。
司会席を見るとそこには千尋が立っており、その手の中に敏樹の顔面があった。
「なぁ、前園」
「な、なな、なんでございましょうか。千尋さん」
「あれ、お前が書いたんだよな」
「な、何のことでしょうか…」
「し……」
「ちょ、まっ」
「ねぇっ!!」
「ぎゃぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁ」
敏樹の断末魔が会場の隅から隅まで響きあった。
そして、敏樹は解放され地面を転がった。
その後、英司と敏樹が三途の川より帰還するまでに30分かかった。




