色彩ぼやけた視線の先Ⅳ
なんとか部活集団から抜け出し、千尋はどうにか玄関につくことができた。
敏樹は途中で涙を流しながら、「お前なんて、爆発しちまえばいいんだぁ~~」と叫びながら走り去ってしまった。
「さてと。とりあえず職員室にいかないと」
すこし不安定な足取りで職員室に向かう千尋。
先ほどの部活集団につかまったのが早起きしたことに少し手助けをしてちょっとばかし疲れを強調させているものだと思った。
なので教室に行ったら少し休もうと思いながら廊下を歩いている千尋の後ろから轟音を立てながら五つの影が迫って来る。
「おうっ!!」
次の瞬間に背中に激痛が走る。
そのまま、廊下の埃を拭き取りながらきれいに吹き飛んだ。掃除をする手間も省け、掃除当番も万々歳だと消えそうな意識の中で思う千尋だった。
「ご、ごめん。お兄ちゃん」
「だ、大丈夫?にぃに」
先ほど千尋にヘディングをきめた麻貴が頭をさすりながら近寄ってくる。遅れて葵も近づいてくる。
「お、おう。間にあったな。きちんと約束を守る子は嫌いじゃ・・・がくっ」
「にぃに!!」
「お兄ちゃん、何しているの」
「まったく、麻貴はもう少し落ち着きを持つべきよ」
「はぁはぁ、みんな・・・はやぁ・・・ぐふっ」
「茉奈も倒れた!!」
なんかコメディチックな事が玄関で行われていた。
周りのクスクスと聞こえてくる声にさすがに羞恥心が限界に達した千尋は制服についた埃を払いながら立ちあがった。
「にしても、俺だからいいものの・・・他の人だったらどうするんだ」
「す、すいません」
「まったく・・・ほら、麻貴。後ろ向いて」
「へ?」
千尋はポケットから櫛を取り出し、乱れた麻貴の髪の毛をなでた。
「女の子なんだから身だしなみにも気を使いなさい」
「う、うん」
うつむきながら顔を赤く染める麻貴。千尋はそのまま丁寧に麻貴の髪の毛を整える。
「ず、ずるい。あたしもやって」
香菜が千尋に抱きつきながらおねだりをするように顔を千尋の制服にこすりつけた。
「私もして欲しいであります!!」
葵もそれに乗じて敬礼のポーズをとり祈願した。
「わ、私も・・・」
「ふぅーふぅー(わたしも)」
絢と茉奈も負けじと声を上げる。(茉奈は走った影響でいまだに呼吸が不安定になっていた。)
「まったく、時間内から簡単にならやってあげるよ。あ、絢は教室ででもいい」
「「「「やった!!」」」」
そこから義妹たちの髪を梳かし、急いで職員室に向かった。
朝早く出たのがよかったのか、千尋はなんとか職員室前に朝のHR前にたどり着くことができた。




