水も恋も流れは廻るのだ!Ⅹ
「君たち!ふん!何回!ふん!注意すれば!ふん!わかるんだ!ふんぬぅ!」
何故だろう。いい話をしていたはずなのに。
敏樹は脳内でため息をついていた。
自分との葛藤と甘えを自覚した。それを自覚した上で彼女たちと今日は楽しもう。
そう決意したはずの千尋は垂れた髪の毛から水滴をぽたぽたとこぼしていた。
「聞いて!ふん!いるのかい!ふん!」
筋骨粒々な監視員が喋りながら、合間にポージングを決めている。そんな監視員の前に二人は正座をさせられていた。
注意されてる自分たちに注目があつまる。
呆れればいいのか。恥ずかしさに顔をふせればいいのか。
((最悪だ))
二人の心はシンクロした。
さて、なぜ二人はこんなことになってしまったのだろうか。
それは数分前に戻る。
◆◇◆
してやったり顔でにっこりと微笑む敏樹。
千尋は呆然と目を丸くするが、すぐに馬鹿らしくなったのか、目を細めて口角を上げる。
「なぁ、前園」
「なんだよ 相棒。感謝なら女の子紹介してくれるぐらいでいいぜ」
「知ってるか。人にやるには自分もやられるつもりでいないとな」
手をわきわきとさせながら、近づいてくる千尋に威圧され、額に冷たい汗が浮かぶのを感じる敏樹。
「サラダバー!」
「遅い!鼻つまんどけ!」
逃げ出そうとする敏樹の足をつかみ、飛び出そうとした勢いを殺す。
その勢いは消えることはない。
そして、敏樹は前に転びそうになる。そうなれば人間の行動なんて簡単な答えにたどり着く。
後ろに下がる。
本能にも近い人間の学習により導きだした解答にしたがい、敏樹は倒れそうに傾いた上半身を無理やり後ろに反らす。
しかし、後ろに待ち構えるは千尋と共に嘲笑を浮かべるプールの水だ。
悪魔に手招きされ、敏樹はそのままスローモーションに流れる風景と共に体を水面に打ち付ける。
「がはっ!」
「バカめ」
パニックに陥る敏樹を腹を抱えながら嘲笑う千尋。
『いい加減にしたまえ!ふんぬぅ!』
そして、羞恥の使いが教えを問いに現れたのだ。




