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絶対妹大戦  作者: 長門葵
14章~水も恋も流れは廻るのだ~
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水も恋も流れは廻るのだ!Ⅷ

買い物から早数日。


炎天下が何日も続き、田畑では水がたりないといつもより少し干上がった川がなんどもニュースにあがっていた。


そんななか、水を豪勢に使い捨てしている場所に千尋は来ていた。


「「水だぁ!」」


「はぁー」


となりではしゃぐ知人についつい嘆息してしまう。


「なんでいんだよ、前園」


「そりゃ予定があいて、話題のレジャー施設のチケットが手にはいったからに決まってんだろ」


「まぁいい。なんで渚まで」


「僕はお前が来るから来いとそのバカに呼ばれてきた」


「はぁ」


千尋は眉間を押さえてため息を溢す。そっと敏樹の顔面に手をそえて、そのまま握りつぶさん勢いで指に力をいれる。


「やっぱ、してたんじゃねぇか」


「お、俺らだって一緒にあ、遊びたくて」


「嘘つけ。どうせ面白がってだろ」


「そ、そそ、そんな、痛いよ大将!」


「おちろ」


「きゃふん」


鋭い眼光を放ち、敏樹を顔面ごと持ち上げる。数秒後には敏樹は気味の悪い声をあげて、意識を手放した。


敏樹から手を離し、プール再度に転がすと千尋は再度ため息を吐く。


最近、ため息の回数増えたな、などと考えながら周りを見渡す。連日の暑さから見渡す限りの人、人、人。背景にどうかしてるのではないかと言うほどの肌色がそこらかしこに点在していた。


「想像はしていたが、すごい人だな」


「そ、そうだな」


一瞬、裏返った声が返答に混じる。


千尋は渚に視線を向ける。


上はビキニで、下はホットパンツというボーイッシュ感のある水着の渚は、内股になりながら指をつき合わせている。その頬は陽射しのせいか少し赤めがかっている気がした。


「ど、どうだ」


「ん?どうだとは」


「こ、この格好!」


鬼気迫る気迫で詰め寄ってくる渚に、冷たい汗が背筋をつーっと流れるのがわかった。


千尋は言葉を選びつつ、素直な感想をつげた。


「うん、なんかボーイッシュだけど、女の子っぽさもでてるし、すごく似合ってると思う」


「そ、そうか」


聞いといて、頬を赤らめ人目からみてもわかるほど恥ずかしがっているのがわかる。


千尋もそれを見て、急にこっぱずかしくなり、口許をおさえそっぽを向く。


青春の一ページ。


そう言わざるえない甘酸っぱい、気まずさを含んだ無言の空間。


しかし、それは意図も簡単に崩される。


「んなことより、大将大将!今日、妹ちゃんたちは?」


童貞の味方、前園敏樹。その人だ。


「ちっ」


「ちょっちょ!聞こえるように舌打ちするのはどうなのよ鬼姫ちゃん!」


「お前の存在が不快だ」


「ひどっ!」


わざとらしい嘘泣きで、大袈裟に悲しむ敏樹。話が進まないので千尋はこちらから話題をふるのとにした。


「今日は香奈と茉菜だけと来てるよ」


「あ、そうなん?きっとお前の事だからなんやかんやで全員つれてくると思ったが」


「お前は俺をなんだと思ってんだよ」


「シスコン」


「殴るぞ」


「・・・殴ってから言う台詞じゃねぇって大将」


殴られた箇所をさすりながら、敏樹はまわりをキョロキョロとする。


「で、その二人は?」


「もうそろそろ来ると思うが」


「あの二人の水着か~。未発達だからこその子供らしさと女らしさの中間地点。きっと眼福もんなんでしょうな。ぐへへ、おじさんたのしくなってきたぞーって、ぎゃー」


手をわきわきと動かしていた敏樹が悲鳴をあげてプールサイドを転がす。


「目、潰すぞ」


「だから・・・大将・・・やってから・・・言う・・・台詞じゃねぇ、がくっ」


がくっなんて口に出してる間は大丈夫だろう。千尋は転がる敏樹の上に座り、義妹たちをまつ。

下に敷かれた敏樹が「熱い、熱いよ!」と叫んでいるがもちろん無視だ。


「おまちー」


元気に声に引かれ、後ろを振り向くと、レースが元気に舞うワンピースタイプの水着を見せつけるようにぴょんぴょん跳ねる香奈の姿が。


その後ろには全身をタオルに隠す茉菜がちょぼちょぼとついてくる。


「どうだにぃちゃん!」


自信満々に控えな胸を張る香奈に、千尋はパチパチと賞賛の拍手を送る。


「似合ってる似合ってる」


「そうだろそうだろ!もっと誉めろにぃちゃん!」


くるくる回り嬉しそうに水着を披露する香奈。


そんな香奈の姿に内心ほっとした千尋。


なにせショッピングモールでは、あんな大胆な水着を持ってきたのだ。無難なのと注意を促したが、実際どんなものがでてくるかはラプラスの悪魔のようなものであった。それが想像以上に女の子してる水着に、いつも跳ね回っている香奈も女の子として成長しているのだと兄ながら感動を覚える千尋だった。


そして、千尋はもう一人のタオル魔神のほうへ視線を向ける。


「なにやってんの」


その塊を指さし、香奈に確認するもわからんといわんばかしに頭を横に振る。


「どうした茉菜。なんかハプニングか?」


動きがみられないのが心配になりタオルの隙間を覗きこむ千尋。


そのときだった。


「く、くく」


「九九?」


「くははは」


タオル魔神は豪快な高笑いを始めた。


「話が公明なる僕よ!時は満ちた!闇と光の調和を経て進化した、新たなる力を目に焼き付けよ!」


なんとも大袈裟な名乗り口上をあげた茉菜は、タオルを大きく広げ、その姿をあらわす。


それは真っ黒のドレスだった。


全身をこれでもかとフリルが飾り、小さな動きでもヒラヒラと踊って見せた。


うん、悪くはない。悪くはないが・・・


「どうですかお兄さま?」


「暑くない?それ」


千尋の第一声はそれだった。

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