水も恋も流れは廻るのだ!Ⅳ
お昼時だということもあり、飲食店のならぶ五階は大変賑わっていた。
「どこにしようか」
千尋は物珍しそうに色々な店に目を配らせながら、双子の歩調に合わせ進む。その後ろを歩く二人というと
「おなかすいたぁ~」
「人が多すぎて気持ち悪…うぷっ」
と水着を選んでた時とはくらべものにならないぐらいグロッキーになっていた。
「少し休むか?」
より酷い状態なゴスロリ娘茉奈の顔を覗き込むと、口を押さえながらなんとも無理やりな笑みを返した。
「大丈夫ですわ…うっ」
全然、大丈夫ではなさそうだ。
何故かキョンシースタイルで進む隣の義妹にも同じ質問を投げた。
「休む暇があれば肉をくれ!」
と目を見開いて、意味のわからないことを発言した。
人が多く無く、肉が食える。
そんなものは考えればすぐに答えは行きつくのだが、千尋は少しだけ躊躇した。
問題は二点ある。
一つは自分の今月の楽しみを犠牲にしなければいけないということ。
もう一つは問題というほど問題ではないが、のちのち面倒なことになりそうでほっとけない。
「なあ、二人とも・・・これから行くお店はお兄ちゃんと二人だけの秘密だぞ」
「わたくしは…かまい…ませんわ…っう」
「私もかまわないぞ!」
二人に再度確認し、千尋は二人に耳打ちする。
「マジか!」
「それは…いい…考えですね」
いつのまにか状態異常から復帰している香菜といまにも星になりそうな茉奈を引き連れまた地図のあるエスカレーター前に移動する。
「とりあえず、ここに向かいます。そのためにも一回、ここを通り、ここを周って、ここで秘密道具を使います。質問はありますか?」
「はい!」
「はい、香菜さん。どうぞ」
「秘密道具ってなんですか!」
「秘密です!」
「ぶーぶー」
「まあ、行けば分かるよ。茉奈、もう大丈夫そう?」
「はい。だいぶ、よくなりましたわ」
それを聞き、千尋は二人の頭を軽くなでる。
「じゃあ、作戦開始と行きましょうか」




