年二回の大騒ぎⅩⅦ
お昼も食べ終え、各自自分の持ち場に戻り、せっせと掃除を再会する。
一等の商品が商品なだけに皆が皆、全力を尽くしこれでもかと汚れを退治していく。
物事に集中して取り組むと時間が進むのは早いもので、気づけば空は夕日によってオレンジ色に染められていた。
「いや〜、早いね。もうこんな時間か」
草むしりに精を出していた千尋は汗を拭いながら、背中をそらした。
見上げるときれいに拭かれた縁側が夕日をきらきらと反射させ、少しだけ気分が高揚した。
「きれいになったわね」
「詠子さん」
「お・か・あ・さ・ん」
「す、すみません。母さん」
「うむ。よろしい」
詠子は首にかけた手ぬぐいで汗を拭いながら千尋の隣にたち家を見上げる。
「あなた・・・見えているかしら。息子たちはこんなに立派に成長したわよ」
「いやいやいや!父さんはまだぴんぴんとしてるから」
詠子の冗談に苦笑を浮かべる千尋。
それに対し、にかっと子供のような笑みを浮かべる詠子はかぶっていた麦わら帽子を千尋の頭に強引に押し付ける。
「ねえ、ちーくん。ちーくんは一位になったら遊園地に誰を誘うの?」
「まぁ、そこは誰かにあげると思いますよ」
「ふふ。ちーくんらしいね」
詠子はきれいにした芝生の上にすとんと腰を下ろした。
「ほれ。ちーくんも」
芝生を叩き千尋にも座るように促す詠子に従い、千尋も芝生の上にあぐらをかく。
「前にも言ったかもしれないけど、もう少しだけちーくんはわがままになってもいいと思うのよ」
「・・・」
「あなたは優しい。でも、それは他人に向けてであって自分にはないもの。それは自分に嘘をつき続けるってことよ。」
「・・・はい」
「わかればよろしい」
詠子は少し高い声を口から漏らしながら、腕を上げ背を伸ばす。
「じゃあ、もう一踏ん張りがんばりますか」
「はい」
家の中に戻っていく詠子を眺めながら、千尋はなんともいえないもやを抱え静かにため息を吐くのだった。




