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年二回の大騒ぎⅩⅣ
「やっと手伝いがきてくれた」
千尋は少しほっとした顔つきで目の前の大きな桶に風を送る。
「アオ。ちょっとそこのマグロとアジを刺身にしてくれる」
「了解」
葵は目の前に転がる数体の魚の中から的確に目的のものをとりだす。
まず、マグロがかぶとやヒレがついた生きたままの姿で台所にそのまま放り投げられていることがおかしいことなのだが、そこは間宮家だ。スルーして欲しい。
次々と葵は魚をさばき、千尋はご巨大な桶の中の大量なご飯を団扇で扇ぎながら、巨大な杓文字でかき混ぜる。
「アオ。酢飯はできたから、揚げ物作っちゃうけど、その前に手伝うものある?」
「こっちももうすぐ終わるよ。逆にまだ手伝うことあったら手伝うよ」
にっこり笑顔で返す葵。
その手には包丁。
血飛沫によって真っ赤に染まった肌。
ホラー映画ものだ。
「とりあえずアオ。飯の前にお風呂に入ってきなさい」
「え?」
千尋は血に染まったエプロンを無言のまま指差す。
その指先にそって視線をうごかし、千尋の意図をくみとった葵。
「あはは・・・お風呂行ってきます」
苦笑を浮かべ、そのままゆっくりと廊下に消える葵だった。




