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年二回の大騒ぎⅩⅣ
「おい、早くしてくれよ」
台所から聞こえる救難信号。
じゃんけんによってその権利を手に入れた葵がそそくさと暖簾をくぐる。
「せ、世界は不条理だ」
絢が地面を親の仇のように殴る。
「あきらめなよ絢姉」
「そうだぞ!お姉ちゃんは女々しいぞ」
「ふふ、残念なのはわかりますが少しばかりおしとやかさが足りませんわ」
「みんな……セリフと行動があってないよ」
絢が顔を上げると、麻貴は台拭きを千切れんとばかりに絞り、香菜はクッションを下に地団太を踏み、茉那は近場の柱に藁人形を投げては取ってを繰り返していた。
その中を詠子だけが静かに茶を啜っていた。
「みんなごはん前よ。静かに座って待ってなさい」
「でも、お母さん!」
「絢?あなたは一番上のお姉ちゃんでしょ。手本を見せなきゃ」
「うっ……はい」
母親に言いくるめられてしまった長女はテーブルに戻って定位置に座る。
それを見てた妹たちも次々と戻る。
「うぅ~、アオちゃん何話してんだろうな」
絢は涙目で暖簾の先の暗闇をにらんだ。




