年二回の大騒ぎⅫ
「みんな~もうそろそろお昼にしましょう~」
家中に響き渡る詠子の声。
時刻はお昼の十二時。
掃除をはじめ、すでに四時間も経過していた。
疲労もいい感じにたまり、休憩するにもピッタリな頃合だった。
「お腹すいた~」
「本当にそのとおりね。さっき予定外の仕事も増えたしね。ね、麻貴?」
「ふぁい……」
「あはは……」
絢と葵、そしてぼろぼろになった麻貴が居間に集まる。
「おにいさま。このあと、書庫の掃除のお手伝いを頼んでもよろしいですか?」
「いや、おにいちゃんは私と屋根裏部屋の掃除をするんだ。ね?」
「「むむむ」」
「ちょっと二人ともそんな腕を引っ張らないで」
「「どっち!!」」
「あはは」
遅れて女装をしている千尋を引っ張って、茉那と香奈が居間に入ってくる。
全員が居間に揃うと、そこは一気に賑わう。
「で、ご飯は~?」
「ないわよ?」
「「「「「「え?」」」」」」
麻貴の疑問に返された詠子の解答に詠子を除いた全員が驚きを示した。
「あたりまえじゃない。今のいままであなたたちと掃除してたのよ。用意でいるわけないじゃない」
それはいたって正論なのだが、納得のいかない子供たち。
「じゃあ、なんでここで座ってるの。用意してよ」
絢の反論に詠子は机に突っ伏しながら、気の抜けた声で答えた。
「いやよ~。ちょ~疲れたもん。作りたくなぁ~い」
「しっかりしてよお母さん」
「絢だって嫌でしょ」
「それはそうだけど…」
「説破!!」
「元気じゃない!!」
息を切らしながらつっこみをする絢を笑う詠子。
和やかな空気が流れる。
「で、実際、お昼どうすんの?出前でもとるの?」
「えぇ~。ちぃくんの料理がたべたぁ~い」
詠子の駄々に苦笑を浮かべる千尋。
「いいですよ」
「やった~」
詠子は嬉しそうに万歳した。
この時、詠子が含み笑いをうっすらとしていたことに気づいていなかった。
「そうそう、ちぃくん一人じゃ大変だし、誰かに手伝ってもらおうかな」
「「「「「えっ!?」」」」」
食と機会に飢えたハイエナたちは一気に目の色を変えた。




