年二回の大騒ぎⅣ
お洗濯の悲劇によって繰り広げられた長女による千尋の着せ替え人形から約3分。
やつれきった顔で、千尋はトボトボと廊下をさまよっていた。
勿論、女物の可愛いお洋服で。
「あら、ちーくん。またかわいらしい格好で」
大きなごみ袋を持って居間から出てきた詠子と出会した。
「あぁ、お母さん。これは色々ありまして…」
「やっぱり似合うわねぇ~。今日のために用意しといて良かったわ」
「あんたの指金かぁっ!!」
千尋の怒号がここぞと云わんばかりに響いた。
それを向けられた詠子はさして気にするようすもなく「うんうん」と独りでに満足したような笑みを浮かべ頷いていた。
「くそぉ。計画をもっと早くに気づけていればこんなことには」
「いいじゃない。かわいいんだから」
「全然嬉しくありません!!」
そこから約小一時間ほどの説教をしたのだが、詠子の顔に反省の色が現れることは無かった。
*****
「あ、お兄さま」
ぶつぶつと現状への不満を呪いのように吐き出していた千尋の後ろから、トテトテとかわいらしい音と共に来訪者が背中にダイブしてきた。
「おっと…」
その衝撃に少しよろけながらもなんとかもちこし、その来訪者へと目を向けた。
「やあ、茉那」
茉那は今日もゴスロリ服に身を包み、大掃除仕様で頭に三角巾を巻いていた。
「お兄さまぁ~」
洋服(夏物のかわいらしいカーディガン)に顔を擦りつける茉那。
「どうしたの?」
なんとか茉那を背中にから剥ぎ取ると、茉那は目に涙を浮かべていた。
「どうしたの!?怪我でもした?何でそんな涙目!!」
「で、でましたの!!」
茉那の声に間宮家に雷電がはしる。
次回
暗黒よりいでし漆黒の侵略者。
乞うご期待!!




