懸けた想いと消えた声ⅩⅢ
それは獣のように次々と獲物を狩っていった。
獲物は本能に従い逃げるべきだった。
だが、彼らにもプライドがあった。
それ以上に、彼らの後ろには彼等を従える力をもつ王がいた。
佐熊の存在に歯向かうことが恐ろしいことを彼らは知っている。
既存の恐怖より未知の恐怖に立ち向かったわけだ。
だが、その決断は間違いだ。
何せ、その実力は文字通り桁違いだった。
「どけぇぇぇえぇぇえ!!」
千尋の咆哮に男たちの足がすくんだ。
だが、力知らずの男たちがまた挑みかかった。
残念なことにそいつらはすぐに空中散歩へと強制送還された。
「あ、あいつはなんなんだ!」
恐怖に支配された男たちの脳内の選択肢は二つ。
未知の恐怖に立ち向かい、今を投げ捨てるか。
未知の恐怖から逃げ出し、既存の恐怖に未来を委ねるか。
「ひぃっ!!」
先程まで木片を構えていた男が恐怖にかられ、その場から逃げ出した。
選択肢を彼は未来とかけたのだ。
誰しもがそれに続こうと思った。
だがー
「ぎゃっ!!」
ー彼らの選択肢は意図も簡単に潰された。
「お前さん達は馬鹿か?逃げようなんてちゃんちゃら甘いね。3丁目のパフェより甘い」
佐熊、千尋を除いたほか全員がその声に目を向けた。
そこにはいつも通り大袈裟なジェスチャーをする敏樹と地面に崩れた逃げたした男だった。
残す選択肢はただひとつ。
やるしかないのだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
恐怖にかられた男たちが思い思いの武器を振り上げる。
その瞬間、頭から血を流しながらも消えることのない千尋の眼光に全員が時が止まったように感じた。
次の瞬間には、男たちは気を失っていた。




