懸けた想いと消えた声Ⅷ
「くそっ」
千尋たちが学園で探索隊を結成していたときと同時刻。
渚は人通りの少ない裏通りを歩いていた。
はじまりはたった1枚の封筒からだ。
その内容を思い出すだけで、怒りと自分の無力さが頭の中を埋める。
「くそっ!!」
もう一度、悪態をつくと渚の足どりは一段と速くなる。
そして、渚は大きな空き地に出た。
「ひゃ、本当に来たぜ」
そこには大勢のがらのわるそうな男たちがたむろしていた。
「あいつはどこだっ!」
渚の怒号に怯むことなく、逆に男たちは大声で笑いはじめた。
「おうおう、さすがの鬼姫さまは恐いな」
「そんなに男が大事か?」
『ヒャッハハハ』
「うるせぇっ!」
男たちは渚を嘲笑っていたが、一つの怒号に全員が口を閉じた。
「よお…鬼姫」
その声に答えるように、男たちが左右に分かれ、一筋の道が出来た。
その道の先には、学ランを肩にかけた男が堂々たる雰囲気を醸し出しながら悠々とした表情で椅子に鎮座していた。
「懐かしいな」
「お前なんか知らない」
「ふん、冷たいやつだな。あんなにあの男には一途なのになぁ?」
男のいやらしい笑みに渚は顔を赤くする。
「あ、あいつをどこにやった!!」
「ん、まぁすぐに教えてやるよ。俺のサンドバッグになってくれればな」
男たちが一斉に動いた。




