プロローグ
この神話は、500年近く昔の出来事から始まる。
遠い遠い世界、天使と悪魔という大きくふたつの種族に分かれて生きる、とある世界。天使には白、悪魔には黒の羽が生えたそのふたつの種族は、ひとつの世界で暮らしていた。
天使は光、悪魔は闇――――光のあるところには必ず影ができる。そう、例えて言うならコインの裏表のように。光と影がふたつでひとつなのと同じように、天使と悪魔もふたつでひとつ。
天使と悪魔は共存し、まったく正反対の存在であるにも関わらず仲良く暮らしていた。そう、あの運命の日が来るまでは。
今から500年ほど前のこの時代…この世界は、“邪鬼”に支配されつつあった。
* * *
まわりは、草むら。静かに流れる風を、目で追うことができる。しかし、空は真っ黒な厚い雲で覆われ、空気も悪い。何となく、どよんでいる。
「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
突如、割れるような悲鳴が当たりに響き渡り、その瞬間、闇の塊かと思うほど真っ黒なものが猛スピードで横切った。
「待ちなさい、邪鬼!」
鈴のような、透き通るきれいな声が響く。流れるような黄金色の髪と白いロングスカートのすそを風になびかせ、背中に天使の羽が生えた美女である。
「流星群!」
金髪美女が唱えた呪文に応え、邪鬼と呼ばれた黒いもの目掛けて光の閃光が走る。
邪鬼はひるんだ。金髪美女がその瞬間を見逃すはずはなく、
「STAR MYTH 封印術!」
右手を空に向けて新たな呪文を唱えると、どす黒く曇っていた空が急に光を帯びた。その光は彼女の右手に集結し、邪鬼に向けては放つ。よけきれずまともに光をくらった邪鬼は嫌な悲鳴を残し、消え始めた。
「…お…おのれ…覚えていろよ…星天使…留々…っ!」
そして邪鬼は耳をつんざくような絶叫をあたりに轟かせながら、留々と呼ばれた金髪美女の用意したつぼの中へと消えていった。
留々は邪鬼の封印されたつぼを手に取った。そして――――
…あたしはそこで目を覚ました。