6 眠り姫
僕に最初に話しかけた第一村人のおじさんの名前は、「ランス・クランヴィル」。
村長ポジのおじさんだ。
このおじさんは、元々上流階級の出だが、当時の社会性に疑問を持っていたが、妻の死。その時に取られた態度がトドメとなり、娘を引き連れてその家を出て行き、この村に辿り着いたとのこと。
現代でも上流と下流の軋轢はひどいが、それでも優しく迎え入れて貰った恩義からこの村に尽くすと決意。
王宮で出される野菜はこの村が原産らしい。
何という優しい世界。
政治の事は良く分からないけど、とりあえず仲が悪いというのは分かる。
このおじさんが村長ポジにいるのも、このおじさんも清い人だし、この村の人も世間に左右されない、優しい人達なのだろう。
旅が始まって数日。この村で過ごした。
この出会いに報いる為に…なんて綺麗な事はいくらでも言える。実態は断りきれないだけなんだけどね…。くそぅ…アイツにうざ絡みしてた経験はどこに行った。
でも、望まない旅に出るより、こんな所で時間を浪費してる方が楽しいんだよね。
そんなある日、ランスにある事を頼まれる。
「旅に出るなら…我が娘をその旅に同行させてはもらえないだろうか?」
その娘の名前は「アンナ・クランヴィル」。
箱入り娘で、今ではほぼ一日中部屋で寝ているらしい。上流階級にいた時は、剣術、魔術を修め、同期の中ではトップクラスの実力の人らしい。
引きこもってる理由は、コッチに来てから、別に稽古をする必要が無くなり、小説にハマったかららしい。ごくたまに畑仕事を嫌々手伝うが、道具の使い方から、その腕は鈍っていないと言うけど…。
断りきれずにそのアンナの部屋にお邪魔する。
「も〜農作業はやらないって…」
ベッドでゴロゴロしてるアンナと目が合う。
アンナはドタバタしながら僕の目の前に走ってきて、何やら真面目な顔でこう言われた。
「結婚して」
僕は呆気に取られ、ランスは「おぉ」と驚いている。
僕は相変わらずしどろもどろ。ランスが僕の状況を察して、アンナを諭す。ついでに、僕が旅に出ていると話す。
アンナのプロポーズは僕がしどろもどろなのと、ランスが諭したおかげで有耶無耶になったが、アンナは僕の旅に同行する気満々らしい。
アンナの一方的な好意はちょっと怖いが、コレで他力本願に旅が出来る。
…やっぱりこの村にいたい…。




