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要らないって言うから、捨てただけ。でも……  作者: 月白ヤトヒコ


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3/3

自分で自分のことを助けてやれ。そのためのことは、教えてやれる。

 視点変更。


 お母さんが好きだった。


 いつもあたしに構ってくれなかったけど……


 機嫌が悪いと、あたしのこといきなり怒鳴ったり、叩いたりされたけど。


 でも、お母さんが好きだった。お父さんがいなくて、二人だけの家族だったから。


 働いてるお母さんに迷惑掛けないようにって、いい子にしてた。お母さんの助けになれたらと、頑張って家事もするようにした。


 いい子にしてれば、お母さんはいつかあたしを愛してくれるって、抱き締めてくれるって……信じていた。ずっとそう願って、必死に縋っていた。


 あたしが家事できるの見たらお母さん、あんまり家に帰って来なくなったけど。


 あたし、頭はそれなりに良かったみたいで。家で勉強しなくても塾に行かなくても、学校のテストではいい点数が取れてたし。


 成績優秀で、いい子だって言われてた。そういう評価をもらうようにしてた。


 お母さんが大好きだったから。


 でも、でも……お母さん、あたしのこと嫌いだったみたい。


 ある日のことだった。


 お母さんが久し振りに帰って来て、


「アンタなんて産まなければよかった! そうすれば、わたしは自由だったのにっ!? アンタのせいでわたしは幸せになれないっ!?」


 いきなりそう言って、血走った目で包丁持って、あたしのこと殺そうとした。


 あたし、お母さんのこと好きだったから。


 あたし、馬鹿だったから。大好きなお母さんのこと、人殺しにしちゃいけないって思って、包丁持って向かって来るお母さんから逃げた。そして……


「そっか、ごめんね? お母さん。あたし、死ぬから自由になってね?」


 そう言って、窓から飛び降りた。


 ドンっ!! って、強い衝撃が頭にあって。ガッシャーンっ!! って、なにか硬い物が割れるような音と一緒に、なにかが潰れるような感覚があって――――


 これで、お母さんが人殺しにならずに済むって安心したら……意識が飛んだ。


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


 ――――で、こっからがなんとも言えないんだけどさ?


 あたし、幽霊んなったみたいなんだよねー?


 ぼんやりとしてたら、いつの間にか知らない人達があたしの家で暮らしてて。


 偶~にあたしのこと視えてる子とかいて……なんか、あたし今血塗れみたいで怖がらせちゃってさ? びっくりしてギャン泣きさせて、気味悪いって引っ越しした家族もいた。


 脅かして申し訳ないなぁって。で、そう言えば、今着てるパーカーにフードあったわって思い出して。フード被ることにしたワケよ。


 黒のパーカー。お母さんが珍しく機嫌が良かったときに、「これ可愛いでしょ?」って。あたしに買ってくれたの。フード被ると頭に猫耳付いてるやつ。お気に入りなんだ。


 これ被ってると、顔隠れるから。偶~にあたしのこと視える子がいても、あんまり怖がられなくなったワケ。猫耳可愛いってさ。


 まあ、フード取ろうとする悪ガキには、ちょっと困るんだけどね?


 で、幽霊って初めてなったし。どんなことできんだろ? って。家から出られるか試して、出られることに気付いて。あちこちふらふらしてさ?


 また気付いた。なんか、あたしのこと視える人と視えない人がいる。


 子供は赤ちゃんとか、物心付く前の子が視えてたりするっぽい。あたしのフード視て、にゃんにゃんって言って笑ったり、手ぇ振ったりするし。


 大抵の大人には視えてないんだけどさ? 霊能力ってやつ? そういうのあるっぽい人は、あたし以外の幽霊も視えるっぽい。


 あと、なんて言えばいいかな? 普段は視えてない普通の人でも、酔っぱらってたり、変なクスリで頭トんでる人とか? タガが外れて激昂してる人とか? 死にたがってる人とか? 怪我や病気で弱ってる人とか? そういう人にも、視えることがある。


 でも、そうじゃない子は……


 共通点を、見付けてしまった。


 あたしのことがハッキリ視える子は、親に虐待を受けていて……なのに、自分を虐待している親のことが大好きな子が多い。または、虐待を受けていて、虐待をする親のことは大嫌い。だけど、身体や心が弱っているような子。


 そういう子が、比較的あたしのことが視えて、声もちゃんと聴こえるっぽい。


 すっごく嫌なことに気付いたぜ……なんて思ってふらふらしていたら――――


 ニュースを、見てしまった。


 とある女が、子供を虐待死させたというニュースだった。男の子と女の子の二人。


 容疑者の女は、再婚。以前にも子供がいて、その子は自殺だったが虐待死の可能性もあり――――という声が流れて行った。


 ニュースの、アナウンサーの言っている意味がわからなかった。


 いや、わかって……しまった。


 お母さん、だ。あたしの、お母さん……だった、人のことを言って……いた。


 お母さんが、再婚して……多分、あたしには弟と妹が生まれていて?


 お母さんが、男の子と女の子を虐待して殺した。そういう、残酷なニュース。


 ああ、あたしは、間違っていた。


 間違えた。


 あたしは、お母さんを殺人犯にしたくなかったから、飛び降りたのに。


 死んだ、のに……?


 間違ってた、間違ってた、間違えた、間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた……あたしは、間違えたっ!!


 お母さんは、人殺しになった。


 あたしにしてたことを、また繰り返して……もっと、もっと酷いことをした……?


 あのとき、あたしを殺して……ううん、殺さなくても、大怪我とかさせたお母さんが、警察に捕まってればよかった。


 そしたら、あたしの弟妹は生まれて来なかったかもだけど、でも、お母さんに虐待されて殺されることはなかった。


 あたしは、間違えた。


 赦せなかった。赦せなかった。赦せない、赦せない……お母さんを、お母さんのことを大好きで……お母さんを、犯罪者にしたくなかったという甘い考えをしていた自分が。


 あたしは間違えた。


 間違えたから、だから……


 顔も知らない、生まれたことすら知らなかった、お母さんに殺された弟妹みたいな子が、少しでも減るように……と。


 今日もあたしは、あたしのことが視える子に話し掛ける。


「あ~あ、全く。ビービービービー泣いてりゃどうにかなると思ってるガキって、ホント大っ嫌い。バーカ、早く泣きやめ」


 虐待されてるクセに、その親のことが大好きな子に言う。馬鹿だった自分を重ねた、苦い思いで。


「あんなクソ親、早く嫌いになればいいのに。ホント、お前って馬鹿だよなぁ。あたしはな、そんな馬鹿ガキが大っ嫌いなんだよ」


 早く、あたしのことが視えなくなればいい。


 あたしは、あたしのことが視えてしまう子が嫌いだ。


 あたしは幽霊だから、泣いてる子になにもできない。なにもしてあげられない。殴られてるのを止められない。触れない。怪我の手当てもしてやれない。頭を撫でてあげることもできない。あたしの声が聴こえる子に、声を掛けることしかできない。


 だから、自分で動け。


 自分で自分のことを助けてやれ。そのためのことは、教えてやれる。


 ごはんがもらえる場所。とりあえず、子供食堂なんかで直近の飢えは凌げる。まあ、ごはん食べて少し元気になると、あたしのこと視えなくなったりするけど。


 あと、あたしにできるのは……性質の悪い奴(・・・・・・)に引っ張られそうになったら横から介入してやるくらい? いるんだよな、自分が寂しいとか、生きてる奴が羨ましかったり、とにかく世の中を恨んでて、誰彼構わずこっち側(・・・・)に引き込もうとするクソ共がさ?


 これくらいしか、してやれない。


 自分で動いて、自分を助けてやれる子は……連れ出してやれる。


「あたしやお前の親に復讐したいなら、幸せになれ。で、人に迷惑掛けたと思ったら、それに感謝して他の誰かに優しくしてやれ。お前の親が、できなかったことだ。親にできなかったことを、お前が他の人にやってやれ」


 じゃあな、って。クソ親みたいになるな、って。こんな風にしか伝えられない。


「あたし、お前みたいな馬鹿でグズなガキ大っ嫌いだから。もう二度と会いたくない。でも、元気で暮らせよ」


 二度と、こっち側(・・・・)に来るなよ? 長生きしろ、な~んて思いながらお別れしてやるんだ。


 クズ共と、そしてあたしみたいな悪~い幽霊との悪縁をスッパリ切って幸せになんな。


 親でも身内でも恋人でも、悪い縁なら、自分や自分の大切なものを害して、傷付けるようなことしかしない相手からは逃げていい。


 自分を愛してくれない人を、血縁だからって無理に愛そうと思わなくていい。


 自分が壊れるまで我慢なんてしなくていい。罪悪感だって、持つ必要は無い。そういう悪縁は、捨てていいんだ。


 あたしは馬鹿だったから、幽霊(こんな)なってようやく気付いたけどさ?


 アンタ達は、あたしが視えない状態が正しい。元気になれば、命の危機が遠のけば、あたしのことを認識できなくなる。


 そしたら、あたしも安心できるし……顔も知らないで見殺しにしちゃった弟妹のことが、少しは浮かばれるような気がするんだ。


 だから、これから楽しいことをいっぱい経験して、誰かにたくさん愛されて、誰かを心から愛して幸せになんな……と、心から祈ってる。


 ――おしまい――


 読んでくださり、ありがとうございました。


 おねーちゃん『うん? あたしの言葉がキツい? もっと優しい言葉掛けてやれって? ヤーだね』(*`艸´)


 『なんでって? そりゃ下手に懐かれても困るからだよ。あたし幽霊だし、ずっと一緒になんていられないじゃん。挙げ句、幽霊(あたしみたい)になる! とか言われたらもう最悪だし?』┐( ̄ヘ ̄)┌


 『だから、あたしが視えて声が聴こえるような子達には、ああしてわざと嫌われるようなこと言ってんの。改めるつもりなんてないね』(`・∀・´)

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― 新着の感想 ―
お姉ちゃん、いつか天国へ逝けますように。 悲しいけど、あのくそ親は前話で寂しい女の子がつきまとってザマアだし、男の子は最初で保護されてるから良かったです。
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